自分が十代半ばから二十代半ばにかけ、緊張のためステージ上で音が出せなくなった苦々しい経験がある。

 小中学生時に緊張したかは忘れてしまったが、高2の「ドボ8」冒頭、アンコンの「ガブリエリ・4声のカンツォーン」最後の方のG、高3の「ブラ1」A、威風堂々のH、社会人でのモツレクなど。今でも冷や汗が出て夢にも出る。

 自分に限らず先輩でも後輩でも、練習ではうまくいったのに本番で震える(文字通り手足や唇がガタガタ震える)人をいっぱい知っている。

 プロでも余計な緊張する場面はある。某アメリカのオケのトロンボーン首席があがり症だったのは有名。またある作曲家のエッセイによれば、ピアニストの例で鍵盤から手が離れていったり、椅子のないところに座ろうとして両足が天に向けてそそり立ったり(こんな表現だった)。

 さあ、あなたはどうする。

 「日頃から練習すれば大丈夫」「出す音に不安を感じたらその音は出すべきでない」なんて模範的な答えはさておいて。せっぱつまった本番のステージでどう対処するか。

 よく言われるメンタルトレーニング。「本番も平常心」「客席の人をカボチャと思え」「自分を一番うまい帝王と思え」等々。まあメンタルの強い人はそれでよし。年を取ると自然にあがらなくなる気もする。でも若くてメンタルがあまり強くない人は?。彼ら・彼女らを演奏者から切り捨てますか?。ああもったいない。

 精神安定剤服用も一つの手か。自分も十代で飲んだことがあった。当時は医者の処方箋が不要だったと記憶している。でも飲んだら手の甲にじんましんが出て、口が乾く半面(これが問題)、メンタル的に変化は良く分からなかった。中年になって別の病気で医師から処方箋をもらって違う薬を服用したこともあった。これは日々の生活がずいぶん楽になり大いに助かったが、楽器演奏上の効果は今も良く分からない。国際コンクールの楽屋や舞台袖に薬を飲んだ痕跡があるなんて話を聞いたが本当か?

 で、アルコールに手を出す人もいる。未成年はだめよ。少量のお酒を飲むのは比較的効果があると思う。でもビールとかの炭酸系はブレスに悪影響が出そう。ウイスキーやウオツカなど度数が強いお酒は眠くなったり休みを数え間違ったりする恐れが。アルコールによっては血管が開き、アンブシュアの微妙なバランスが崩壊する恐れも。

 さあ、あなたはどうする。