AMトランスミッタとは,,,

これです

「AUX入力を中波の電波経由でAMラジオに送信して鳴らす」というギミックです

その昔コンソール式ラジオがオーディオの主力機器だった頃「ポータブルレコードプレーヤーのチャッチイ音をラジオのいい音で聞きたいけれどAUX入力がない!」ってときに使っていたらしい(大きなコンソール式ラジオを改造して使えるよう,中に入れるキットもあったとか)けれど,大抵のラジオにプレーヤー入力がつくようになったのでとうの昔になくなっていたものです.駄菓子菓子,「現代のソフトをアンティークラジオで鳴らしたい!」というオタクいリクエストに答えるためキットとして販売されたのです(オタクいアメチャンのためにU.S.A.で10年ほど前まで売っていたと記憶しています)

回路的には,周波数変換用の7極管12SA7とスーパーヘテロダインラジオに使う局発コイルでAM放送周波数を発信し,それに12SA7のもう一つのコントロールグリッドを使ってAM変調をかけるといった至ってシンプルな方法を使っています

真空管(12SA7)の手前に見えているのがその局発コイルで,下の板に開いた穴に接着剤でとめてあるのですが,ちょうどその板のところで折れてしまいました

多分,このユニットが何かにぶつかって壊れたと思います

なので前に書いたようにコイルを交換しようと思ったのですが,同じコイルはもう作ってなくNOSのものはラジオの修理用に需要があるのかプレミアムがついて「いちまんえん」越えになっています!「フィルムケースで作る局発コイル」の記事をネットで見つけたので,その指示通り作るはずでした

But,日本で真空管ラジオ用の局発コイルを作っているところを,これもネットで見つけ,Thereminを作る予定もあることから6個注文しました.でも交換は部品の再配置などでチョット面倒なため,とりあえず折れたままで動くかどうか試してみたところ,,,問題なく動いたのです!!! いやはや,,,で,接着剤で固定しました

ただ,このいい加減修理の結果フェライトコアを動かすことができないため発信周波数を変えられません.「ラジオ局の周波数とバッティングした場合は小さいコンデンサをパラえばいいか」とトリマコンデンサも買ったのですが,必要ありませんでした(昔こっちで使っていたため,ここら辺で聞こえるラジオ局の無いところに周波数をセットしてあり,壊れた衝撃では動いていないようでした)

ただ,これは大型ラジオに組み込むことが前提だった昔のキットのレプリカとして まんまコピーされていたのかAC入力のスイッチやフューズが付いていませんでした.また,U.S.A.の製品のためACは117V仕様になっていて高圧電源はともかく,ヒーターの電圧が低すぎると思われました.電源トランスの交換やACラインの昇圧トランスを考えたのですがどちらも結構なお値段がします.と,ここでとりあえず100V AC につないでヒーター電圧を測ったところ,12Vでした!基準電圧マイナス5%ということで寿命も考えると「かえってよいかも」です!日本の電源は「どこでも最低100Vを確保する」ため工業地帯以外ではやや高めになってしまう上,アチラでは電源事情が様々なようで少々低くても大丈夫なようにトランスの設計がなされているようです.といったわけでトランスはそのまま使うことにしましたが,フューズなしは流石に安全上問題ありますのでジャンク箱から2.5Aのブレーカーを発掘してつけました.写真左端の黒い筒です.例によって手抜きのためタイラップで縛り付けてあります.スイッチは,,,,まあ,いいかな,,,

せっかくなので電源整流ダイオードも,これもジャンク箱にあった1S2711に変えました

これは高耐圧ファストリカバリーダイオードの先駆者として当時(もう50年ほど前でしょうか?)救世主としてもてはやされていたものです

1S2711が登場するすぐ前頃は,整流効率からシリコンダイオードがもてはやされていた時代でした.それに対し一部の先輩方は「整流管の方が音がいい」とおっしゃていましたが,レトロ趣味のタワゴトだと一般には思われていました.整流管の擁護としても「シリコンの方がいいに決まっているけれど整流管がないとアンプの見ためとしてツマラナイ」といったことぐらいしかありませんでした.ところが「シリコンダイオードは内部抵抗は低いけれどもスイッチングパルスが強く出てそれが電源を汚し音が濁る」という意見がトランジスタアンプ派のなかからちらほら出てきていて.スイッチングパルスが出にくいダイオード:ファストリカバリダイオードが少しづつ注目されてきていました.ただ,その頃は真空管アンプで使えるような逆対圧の高いものがなく,真空管アンプでの検証は進んでいませんでした.そのため整流管の方が音が良いというののは「単なる気のせい,思い込み」だとか「内部抵抗の高い真空管に対しては内部抵抗の高い電源:整流管電源 の方が粗が目立たないからだ」などと憶測混じりの意見が喧々轟々でしたね.整流管vsダイオードの聴き比べをする場合,単純に差し替えるだけではダイオードの方が電圧が高く出るしレギュレーションも良いためどうしてもアンプの出力が大きくなりますし,出力管の動作点も微妙に違ってしまいます.いいにつけ悪いにつけその結果が整流素子の違いなのか,その他の原因によるものなのかが曖昧で議論がさらに紛糾することになっていたのです.そこに登場したのが尖頭逆耐圧1500Vの1S2711でした.これでやっと従来のダイオードとファストリカバリダイオードの聴き比べをすることができるようになりました.従来のダイオードと1S2711との聴き比べは,,,もう満場一致で1S2711の圧勝でした.1S2711に比べると従来のダイオードは音が荒く騒がしくのっぺりと表情のない音がします.ただ,PAなどの場合そういった音質を意図的に作る必要がある場合もあるのですが,そういった場面では1S2711は「迫力がない」「おとなしすぎる」と評されることもありました(でも本質的な解決策は音の荒いダイオードを使うのではなくより大きな出力を余裕を持って出せるアンプを使用することであるはずです,勿論迫力のある音を安く手に入れるのにはこれもアリではありますが).それから半世紀,今ではいろんな高耐圧のファストリカバリダイオードが出てきています.低耐圧のものしか作れないと思われていたショットキーバリアダイオードも最近は結構耐圧の高いものもあり真空管でも使えそうなものがありますね.チョット前に仕事場の廃棄物の中に高圧電源のユニットがあったのですが,それに1S2711が大量に使われていました.高周波アンプの電源だったようですがここでもスイッチングパルスが問題視されていたのでしょうか??

私的な経験としては,,,父親に頼まれて作った6550ppのアンプはB電源はGZ37を使った真空管整流だったのですが,バイアス用のマイナス電源はダイオード整流でした.そのダイオードには特に何も考えず普通の整流ダイオードを使っていました.初めは気がつかなかったのですが,そのうちクラシックの合唱曲が「なんかヘンだな〜」と思えてきたのです.合唱がベタっと塗りつぶされているというか,沢山の人が歌っている感じが出ないのです.1人の人の声をトランペットスピーカーで大きくしているような感じとでもいいますか,,,さらに,よく聴いてみると弦楽合奏もベットリしていて沢山の楽器が鳴っているような ちょっとざわつく感じが全然しないのです.そうこうするうち他のところも次々と気になりだしました.原因は何か???といろいろ考え,調べてみました.そのころはネットはなく,本や雑誌を片端から読んでみました.そして,電源ダイオードの音質について書かれていたのを見つけたのです.とりあえず1S2711を買ってきました.B電源は見栄えの良いGZ37なので良いとして,半波整流のバイアス電源に使ってみました.数十V&数mA程度の電源整流なので全くもったいない話なのですが,,,レコードを聴いて言葉がありませんでした.全く今まで何を聴いていたのでしょう!合唱はちゃんといっぱいの人が歌っています.楽器の合奏は沢山の楽器が鳴っているのがわかります.こんな当たり前のことがダイオードひとつで潰されていたなんて,,,!! また、レコードの録音の良し悪しもはっきりわかるようになりました

そんなこんなで,これ以降アンプの電源には整流管かファストリカバリダイオードを使うことにしています

電源ってアンプを動かすエネルギーみたいに思われますが違います

アンプの増幅作用とは『電源から流れてくる大きな電流を小さな入力でコントロールする』ことに尽きるわけで,アンプの出力とは電源電流そのものなワケです.だから,その電源電流が濁ってたり変な色やニオイや味がすると,アンプの出力=音が汚くなる

電源ってもの凄〜〜く大事でアンプの命・キモになるものなのです

だから,整流素子だけでなくフィルターチョークやコンデンサー, 抵抗なども吟味する事が際限なくなってしまうのでしょう

さらに,父親のアンプの場合バイアス電源だったので,入力信号に汚れたノイズがのってしまったのでしょう,,最悪ですね

なので,最近では固定バイアスはできるだけ使わないことにしています(確かに自己バイアスは効率が悪いのですが,,,).バイアス電源はこれほどまでに音に影響があることを知ったからです.使う場合にはダイオードだけでなく他の部品にも神経質なほど気を使っています

 

ダイオードの話が長くなってしまいましたが,そういったわけでこのトランスミッタの整流ダイオードも1S2711にしてみました(思ったほど劇的には変わりませんでしたが,,)

 

世間的にはAMラジオ放送はなんだか終わりそうな気配になってきましたが,そうなった時にはこのトランスミッタを使ってラジオを聴くことのできる選択肢があるのも楽しいかと思います

 

トランスミッタの回路はここにインストラクションとともにあります

(ただ,このAMトランスミッタの回路ではコイルやパラレルの同調コンデンサには高電圧がかかっているのでくれぐれも注意してくださいね)

 

真空管やその他のパーツはネットで探せばいろんなところで売ってます

 

局発コイルの入手はかなり困難ですが

私は

 

で買いましたが,ここはもう部品の頒布はしていないようです

今ではここで購入できそうです

コイルのインダクタンスは115μH±30μHとのことなので,付属の430pFのコンデンサをパラレルにすると830kHz〜640kHzぐらいを発信できると思われます.これでは低すぎるばあいはコンデンサを150pFにすれば1410kHz〜1080kHz位になると思われます.

 

また,フィルムケースで作る局発コイルはここに載ってます.ここは真空管で作るテルミンのページですがその初めから5番目のパラグラフあたりから ""...Take a plastic film can--this will become your coil form." とあり,そのあとにフィルムケースで局発コイル:OSCコイルを作るやり方が書いてあります.「フィルムケースなんかないよ〜」とお嘆きの貴兄は直径3cmほどのプラスチックの筒か紙筒を使えばOKです.同調用のコンデンサは80pF位を使えばほぼ1300kHzぐらいのAMラジオ周波数を発信できると思われます.周波数を可変にするには60pFぐらいのトリマコンデンサをパラレルにして調節すれば,1000kHzぐらいまで発信周波数を下げることができるはずです.私はやっていないので実際に出来るかは不明ですが,やってみるだけの価値はあると思われます

THEREMINを作るときにでも検証してみたいと思います

 

AMラジオの音質は決して良くはありませんが,ぼ〜〜〜〜っと聴いているのには耳にざわりではなく、まったりとします

音楽や落語のコンテンツを聴くのにうってつけと思うのですが,,,ラジカセ(死語)や古いAMラジオがあったら試してみてください

きっとハマりますよ