つづきです,,,

では,なぜ森さんがオイロダインを手放したのでしょうか??
前の回で私は,,,
私は,森さんが『苦心惨憺して・・・鳴らしている』音は,彼の思い描く音ではなかったからではないかと思うのです.そして,それに気がつくきっかけが,この五味康祐氏の「オーディオ巡礼」なのではないか,,,と思うのです
と書きました.以下,考察していきましょう

森さんがオイロダインに出会ったのは確かドイツの劇場だったと書いてあるのを読んだ気がします.劇場でそれは骨太ながっしりとした音を響かせていたに違いありません.惚れ込んだ森さんがオイロダインを抱えて帰ってきて裸で鳴らした時,それは物凄い音で鳴ったに違いありません.ちょっと長くなりますが,ステレオサウンド37号「からみあうつもりで,からまれて,,,,,,,幻聴再生への誘い.ー入手したスピーカーの調教ー」より引用します
『電気再生のスピーカーからアコースティックの響き,まさに手巻き蓄音機の音色が出てきて,びっくりした.が,手巻き蓄音機とはヴォリュームとプロポーションが数段ちがう.杞憂であったし,なんという全体の腰の強さとみちあふれんばかりのエネルギーだったことか.あたかも聴覚への強烈な張り手で,もしもここに他人が居たならば,すさまじい刺激音におどろいてしまうことだろう.神経をさかなでにするようなむきだしの吠え声だったし,いまだに耳の中に焼き付いているほどに鮮烈で強大で,現代的とはあきらかに異なる音のたちかただったが,序奏の終わるころには,表面的な音などはどうでもよくなっていた.
フルートで第1主題が示され,ホルンが全奏になると,私は大声をあげて笑いだした.他人が見たならば,愕くほどの,喜びの呵笑なのだ.なんという素晴らしいまだ聴こえぬ部分だろうか.なんという骨格,密度,次元だろうか.文句なしに凄い,とおもい,信じられないほどの素性と質だった.聴こえてくる音はぎすぎすの,すさまじい刺激にもかかわらず,その裏面を私は感知した.第一楽章のうちに,どうなってゆくか,どうしたらいいかの鳥瞰図がごく自然に出来上がっていた.御託をならべる思いも,個人の感情論もさっぱりと消え,可能性とおおらかさを感じていた.
ドイツの劇場よりはうまくゆく,映画の再生用にもかかわらず,私個人が自分の小部屋で音楽を聴くことの方が,うまくゆくだろう,とおもったが,矢張りたじろぐほどの第一声であったことにはちがいない』
『第1声の強烈な,そして鮮烈な,苔むした奴が,たちどころにエイジングされてしまうとは思えない.また,なじんだうえで,音楽が聴けるようになるまでには時間もかかることだろう.筋金入りすぎるほどに思える.やわらかなところは一片もない.これを十二分に,やわらかく,軽く,そして重厚にしなければならない』
そうして,彼はこの強烈な機械を調教してゆくわけですが,彼のめざした「音」というか「響き」はどんなだったでしょうか?後半に引用したところに彼の言葉で書いてありますが,私の言葉にすれば,,「骨太で,がっしりとした,そして透明でしなやかな」となります
「天井桟敷の音」は透明でしなやかではあっても,骨太でがっしりしたところは(芯のところにはあるにしても)あまり感じられないのではないでしょうか?森さんは「オイロダインはどう料理したって『筋金入り』の強烈さは薄れはしない」とおもい,ひたすらに透明でしなやかになるよう意を尽くしたのでしょう.そうしてたどり着いた音・響きが,極上のものであっても「天井桟敷」の音であることに五味康祐氏に指摘されるまで気がつかなかったのだと思います.森さんは,基本的に「ドイツの劇場の響き」を求めていたのです.『自分の小部屋で音楽を聴く』ために透明でしなやかな響きが必要だとしても,やっぱり「骨太でがっしりした」ドイツの劇場の響きがなければ意味がないと思ったはずです.それでオイロダインを手放したのであれば,納得がいきます
オイロダイン・平面バッフル・マランツ7&9・小部屋の組み合わせは透明でしなやかに鳴るための音量があまりにも小さく,骨太でがっしりした響きにならなかったのでしょう
8畳間にALTECの515+JBL4560 , 290ダブル+1005B , JBL075 を持ち込み,時として家族からクレームがつくほどの音で鳴らしている私としては,「もったいない,もう少し頑張れば解決策が見つかったかもしれないのに,,,」と思わざるを得ません
アンプを替えてみるだけでも随分違ってくるはずです.小さい部屋で高能率のスピーカーを鳴らすのであれば大出力より,自分の好みの響きを1W~2Wぐらいで出してくれるアンプがぴったりです.もちろんそんなアンプが500W出力でもいいわけですが,,マランツのアンプ群は微小出力は繊細に鳴っても2Wぐらい(小部屋のオイロダインでは大迫力です)のところで分離が悪く「やかましい」感じになってしまうのではなかったでしょうか?9はパラレルプッシュプルのため,全出力域で完全にバランスをとることは非常に難しいと思われます.特にビンテージ管を使う場合は,動特性の揃った4本のセットを用意するなどほぼ不可能,いえ絶対に不可能です.バイアスを調整し,ある1点でバランスを取っても,その他の領域では微妙にバランスが狂ってきます.そのことが,出力によって音質が変化する原因となっています.妥協策として「どこでバランスをとるか」ということになりますが,普通は微小出力域が一番耳につきやすいためそこのところを重点にバランスをとります
オイロダインの場合も能率が高いので,ごくごく微小出力のところでバランスをとるのが重要ですが,この手のシアター系スピーカーは大音響のとき(2Wぐらいでしょうか)に分離が悪いアンプで鳴らすと音が飽和してヤカマシク響いてしまうことが私の経験でわかっています.そこんところがクリアなアンプで鳴らすと聞いてる本人は大きな音で聴いてるつもりはないのですが,離れたところ:別の階や部屋から「うるさい!」と文句を言われてしまいます.実際そこに行ってみるとビンビン響いていて「ごめんなさい」と言うほかないのです,,,
つまり,アンプの調整のツメや,アンプの交換で随分良くなると思うだけに「もったいない」と思ってしまうのです
もちろん,「森さんがオイロダインを手放した」というのがデマだったらこんな考察・老婆心は無用なことですが,,,

ちなみに,私だったらどうするか,,といえば,,,
メインアンプはA級動作の真空管にしてみたいと思います.A級であればシングルでもプッシュプルでもあまり違いはなく,必要な出力(どの程度の音量で聞くか)を睨みつつ自分好みのタマを使うことの方が気分的に楽しいと思います.(私のALTECはオルソンアンプ:6F6 3極管接続パラレルプッシュプル出力6Wで鳴らしてます)
ピックアップはオルトフォンのモノラルが好きなのですが,オイロダインだとちょっとキツすぎるかとも思いますのでSPUの方が合うでしょうね
プリアンプも真空管でいきたいと思うところですが,回路・タマともに悩みます.いろいろ試してみたいですね.ヨーロッパ管を使ったLCRタイプも面白いかと,,

などと言っても,私にはオイロダインとの出会いはまずないと思いますが,,,

宝くじ当たれ~~~~