お役所の役人が書いたとは思えない力の入った文章から引用する。

2ページより

能登はただの一地方ではありません。

能登に生きたすべての人にとって特別な地であり、いま能登を想うすべての人にとって特別な地です。そして、これから能登に関わるすべての人にとって特別な地であり続けます。

 

能登がこれからも能登らしくあり続けるために、いま、私たちは、創造的復興を成し遂げなければなりません

 

12-13ページより

あらゆるものを破壊した震災を経て、いま私たちは、能登のあり方を一から考える必要があります。能登に関わる全ての人が、これからの能登に想いをせています。これから何十年、何百年と持続していく能登の社会を作り出せるかどうか。能登の未来の分岐点は、震災からの創造的復興をどのように成し遂げられるかにあります。そのために本県は、覚悟をもって全力で、創造的復興に取り組みます。

 

そしてそれは、能登の未来を変えるだけではありません。千年に一度とも言われる震災を経験した能登が、半島という地理的特性もある中で、人口減少社会に適応しながら持続可能な地域のあり方を実現することは、人口減少に悩む他の多くの地方にとって、希望の光となります。

能登の創造的復興は、日本全体の未来を変えていきます。

 

<下線は原文通り。文字色と大きさは筆者>

 

 「日本全体の未来を変え」るとは、よくぞ言い切ったものだ。

 主語。出だしで「私たちは」と格好良く宣言したのだが、途中でお役所らしく「本県は」になってしまった。

「馳」を強調したのは、知事の名なので、単なる洒落です。文章を書いた人が意図してこの語を選んだとは思えない。

 実際に被害を被った方々にとっては、途切れた道路をどうつなげるとか、壊れた施設をどう建て直すとか、事業継続のためにどんな支援をしてくれるんだとか、そうした具体的な施策の方が重要に決まっている。それらは、108ページに及ぶ本編の55ページ以降ほぼ全てを使って延々と書き連ねられている。

「ここが壊れたから直します」

「こんなものをつくります」

「こんなことを実行します」

「こんな支援を行います」

 さすがに、私はこの部分には目を通しただけであるが、漏れがないことを祈るのみである。

 概要篇は、前回紹介した13の「リーディングプロジェクト」の紹介だけで終っている。

 まあ、施策を全部書いていたら概要にならんからね。でも、この13のプロジェクトは、大量に記された個々の施策をまとめたものとは言えないのである。

 ボトムアップで上がってきた個々の施策。

 これに対して13の「リーディングプロジェクト」は、考え方や理念からトップダウンで降りてきた、復興の全体像をイメージしてもらうための、言わばキャッチフレーズなのである。

 この両者は、まったく違うところで作成されてきた。それを無理矢理一つの文書に収めた。それが、この復興プランだ。

 さて、このプランを決めるのは誰なのだろう。県知事? 県議会に諮ってなんかいられないよね。

 

 しばらくしたら、進捗具合をチェックしなければならない。それが計画(プラン)というものだ。