社内若手向けに書き始めた当コラムも、第7回となりました。

 

現在は、3.アジアの現状について

アジアで医薬品製造や開発を行う国々を、ランダムに調べてまとめています。

 

―――――――目次―――――――

1. 日本の薬事と製薬業界

2. 世界の医薬品開発市場と日本の位置付け

3. アジアの現状

4.今後をどう読むか

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前回まで、中国、台湾、インド、を取り上げました。

さて、今回は、

 

3.アジアの現状

4)韓国について

 

という事で韓国を取り上げます。

 

政府間関係は冷えきった状況ではありますが、製薬業界は歴史的には関わりが深い様で、おそらく粛々とビジネスは続いているのかな?

 

私なんかよりも詳しい方々が大勢おられるのではないでしょうか?

という事で、もし違っている情報や追加情報がありましたら教えて下さい。

 

さて、

韓国の人口は、日本の約半分ですね。

世界で12番目の医薬品市場であり、市場規模は約4兆円、世界市場の3%を占めています。

 

平均寿命は81歳。

死亡原因は1位がん、2位循環器系、3位その他非感染症、となっており、日本と似ています。

 

韓国には、最新鋭の設備を備えた巨大総合病院がいくつもあります。

サムソンも病院を経営していたりします。

 

COVID-19の第一波では数万人に対応するPCR検査体制を素早く整えた事が話題になりましたね。

韓国の医療・検査関係は、部分的には日本よりも整っていると言えるかもしれません。

 

保険制度については、日本同様に国民健康保険があります。

国民健康保険公団による、単一団体・単一支払い制度が採用されていて、

保険財源は、国民から徴収する保険料と税金です。

日本と異なるのは、徴収額が少なく、保険償還率が少ない事です。

 

保険徴収額は、日本では会社員の場合、月給の概ね4~5%ですが、韓国では2.9%。

日本では医療費の自己負担額が平均16.3%ですが、韓国では33.8%と高く、病気をすると医療費が家計を大きく圧迫する様です。

 

 

医薬品に話題を戻します。

 

韓国の薬事業務は、食品医薬品安全処(Ministry of Food and Drug Safety: MFDS)が所管しています。

韓国に医薬品の輸入を行う場合は、MFDSへの輸入業の届出が必要です。品目毎に安全性や有効性その他が審査されます。

 

米国FDAが承認した医薬品は概ね無条件に承認されている様です。

 

なお、韓国の保険制度もやはり財政的にひっ迫している様で、承認された医薬品が国民健康保険に組み込まれるには非常に高いハードルがある様です。

 

例えば、韓国ではPhaseⅢまで行われた物でなければ保険適用外。早期承認された希少疾患治療薬等は外れます。

抗がん剤なども確実に延命に寄与する物でなければ適用を認められない様です。

 

保険対象への収載とその場合の薬価は、国が関与して決めています。

 

具体的には、国民健康保険法人の専門諮問委員会が検討して提案、

厚生省が、製薬会社と折衝して決定するそうです。

費用対効果が最も重視され、中には、国民健康保険に組み込まれ、日本の薬価の半額くらいになる物もあるのだとか。。

 

 

昨年一年間の、日本から韓国への医薬品の輸出高を調べてみました。

 

切り口によって数値が変わるので何とも言えませんが、総務省輸出統計で2019年の医薬品及び医療品でソートをかけてみたところ、合計605億円となりました。

意外に少ない印象です。

 

というのも、

韓国には約630もの製薬会社がある様です。(そのほとんどは零細ですが)

医薬品製造は古くから行われており、ジェネリックの製造が盛んです。

 

過去から日本の製薬業界からの技術移管・技術供与、資本投入、導出等が行われてきた様で、

姉妹会社の様な製薬会社もある様です。

日本の製薬会社の製造受託を行う会社も多数あります。

 

最近は、GMP基準をFDAのデーターインテグリティに合わせるべく取り組みも行われており、品質向上に努めている様子も伺えます。

 

※データーインテグリティー:

医薬品に関わるGxPのFDA基準「ALKOA原則」に則った基準。

気になる方はお調べになってみて下さい。

 

さて、

韓国にある多数の製薬会社のうち、売上1000億円を超えている製薬会社は(2018年時点で)以下の5社です。

 

柳韓洋行(ユハンヤンヘン)

韓国コルマー

GC緑十字(ノクシプチャ)

韓美薬品(ハンミ)

広東製薬(カントン)

 

続いて、セルトリオンと大熊製薬が1000億円近いところまで来ている様子。

1000億円超えの会社は年々増えている様です。

あと、サムスングループも製薬業をやっていますが、医薬品の売上規模は不明です。

 

韓国の新薬開発の歴史は比較的浅く、90年代から2000年代初期は、ジェネリックやバイオシミラーの開発がメインでした。

 

そうしたなか2012年に韓国政府は、自国の製薬産業を世界7大強国の水準まで引き上げると宣言。

当時2,300億円だった医薬品の海外輸出を、2020年までに1兆1千億円まで引き上げる事を目標に掲げました。

 

併せて、2020年までに海外に進出できる新薬を10件以上出す事を目標にかかげました。

2013年当時、それまでに韓国で生まれた新薬は14品目。

海外に進出していたものはほとんど知られていませんでした。

 

そうした中で政府は5年間で1兆円の国家予算を投じて新薬開発の積極支援を開始、

企業に対する手厚い開発費支援など、積極政策を打ち出したのです。

 

併せて500億円規模のグローバル製薬産業育成ファンドを設立し、大学の薬学教育にも力を入れ始めました。

 

都市部近郊にバイオクラスターが複数建造され、企業誘致も進み、多くの製薬会社や研究機関などが集まりました。

 

その結果、2018年時点で、韓国の製薬会社が開発した新薬は累計30品目

うち15品目が海外に進出した様です。

※日本薬学性連盟による韓国薬学生連盟とのコラボ企画に基づく

 

上記の薬学生連盟の情報に基づけば、

2012年に政府が掲げた目標は既に達成されている事になりますね。

 

2017年に、サムスンの子会社であるサムスンバイオエピスと武田薬品が研究開発で提携した、とのニュースがありました。

調べ切れていませんが、その他にもおそらく韓国の製薬会社と共同で取り組む日本の製薬会社はあるのではないでしょうか?

 

将来、日本にとって脅威となるのか、

あるいは良きパートナーとなるのか....

 

政府間に関係なく、民間は仲良くやっていきたいものですね。(と私は思っています)

 

ちなみに自分は、韓国バラエティー番組の

「三食ごはん」

が好きです。