調度品をむやみに崖で買い込んで | 喜劇 眼の前旅館

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短歌のブログ

調度品をむやみに崖で買い込んで三叉路からは勘であるいた  我妻俊樹


題詠blog2009、お題「調」より。
わたしが短歌にもちこむことの多い言葉に、最近くわわったのが「崖」だと思う。
線路や道路など「道」的なもののアナロジーで短歌をとらえ、それらの語を歌にもちこむことも以前は多くて、いまも多いんだけど(掲出歌にも「三叉路」が出てきてる)、そこに「崖」的な把握が最近になって追加されたらしいということです。

短歌において崖を意識し、崖でものを考えるように短歌を考えるということ。それは定型と、定型の外との落差のようなものを地形に置き換えた把握ということになるでしょうか。
そこには質的な差はなく、ただ高低差だけがある。われわれが日常につかう言葉と同じ材質で、同じ規則をもった言葉でありながらそこに見おろす/見あげるような高低差を見いだせる、そういう短歌がつくれないだろうかと考えているうちに「崖」があらわれるようになったのだと思う。

コスプレ感というか、そこでいったん着替えて頭を切りかえてその垂直さを受け入れる、という(私にとっては)めんどうな手続きをとらなくていい垂直性、というものを短歌にどうやって獲得するか。
短歌をつくるためにそういうことを考えるというより、そういうことを考えるのが好きで私は短歌をつくるのだと思います。そういう考えごとの場に最近「崖」が登場したということです。