あなたには正装した子供に見える | 喜劇 眼の前旅館

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短歌のブログ

あなたには正装した子供に見えるサボテンが点々と門まで  我妻俊樹


植物は人間に似ている。たとえば犬猫のように身近な動物や、猿のように人類と近縁の動物と比べても、植物のたたずまいにはたやすく擬人化の視線を受け入れるようなところがあります。
犬猫や猿には言動がある。しかし植物にはありません。だからわれわれが勝手に動かし、しゃべらせるための空白をわれわれとのあいだに持っている。しかもかれらの姿。かれらの多くは重力に屈せず直立しています。その姿勢のよさと、両手(のように見える枝葉)を地面につく気のないところは、動物界では人類だけの特権と看做されているものです。
われわれが自分の家の植物に服を着せる習慣をもたないのは(嫌がる犬に着せるよりずっとたやすいはずなのに)、何かそのあたりに原因のあることではないでしょうか。着せたら何かが決定的になってしまう。われわれはそのことを不安に感じているのです。