短歌は恋愛を題材というかテーマに扱うことが多いけど、それは少ない字数の中で(一首が終ってしまう前に)すばやく読者の関心を惹かなければならないから、あらかじめ読者の関心が高いものが選ばれているということなのでしょう。一年中、そして場合によっては一生発情し続けている動物である人間は、恋愛の話が始まるとたちまち身を乗り出してくるものだ、という人間観にもとづいて短歌には恋愛の歌があふれるのだと思う。作者の側にじっさい恋愛の歌の数の多さほど恋愛への関心が高いわけではなく、恋愛を詠うのがたぶん作品を流通させるための保険なんですね。短歌のかたちの、短い割には長すぎるような独特な短さは、そういう保険を必要だと多くの人(作者でさえ)が感じるくらいにはやはり難解なものなのだと思う。