2003年に海外で多発性骨髄腫治療薬として承認されたベルケイドは、その後、日本でも少し遅れて承認され、特効薬の一つとして使われ今日に至る。


日本における多発性骨髄腫治療の歴史は、このベルケイドとレブラミドの2大スター誕生の前と後で一変したと言っても過言では無いだろう。


ここ数年で新薬が急増し、治療オプションが多様になった多発性骨髄腫であるが、結局のところ、ベルケイドとレブラミド、あるいはその後継者に、マブい系(エロツヅマブ、ダラツブマブ等の抗体薬)を組み合わせた治療と移植(自家・同種)をどう組み合わせるか、に尽きるわけであり、このニ剤なくして、今日の治療法はあり得なかった…って、別にヤンセンファーマやブリストルマイヤーズの回し者では無いけどね(^_^;)。


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ベルケイドに関する国内での歴史を、ざっくりまとめるとこんな感じだろうか。


2006年 多発性骨髄腫承認(難治性・再発)

2010年 多発性骨髄腫承認(初発)

2012年 皮下注射での投与が保険適用に

2015年 マントル細胞リンパ腫でも承認

2017年 原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫について保険適用(公知申請)


実際には、さらに「あの薬との併用が保険適用になった」とかもあるけど、さすがにそれは省略(^_^;)。


なお、2012年の皮下注射の保険適用を取り上げたが、今日では、その意義はあまり知られていないように思われる。


それまで、ベルケイドは、静脈点滴注射で使うことになっていたが、足の痺れや激痛など、末梢神経への副作用が問題になっていた。


ところが海外での研究によると「皮下注射」で投与すると、比較的、抹消神経へのダメージが少ないとわかり、2012年に日本でも保険適用となったことで、以後は皮下注射がメインとなり、かなり副作用が軽減されたそうである。


ちなみに、私がベルケイドを初めに打ったのが2013年5月。ちょうど、皮下注射が認められ、実際に病院でもやり始めた頃にあたる。


先日、主治医せんせーと当時の話をした。

「皮下注射が当たり前だと思ってたけど、認められてすぐのことだったんですね」

「当時は、ほんと、効くのかな?って疑問だったんだよね。点滴でなく、皮下注射でじんわりいくだけで効くとは思えなかったんだけど、かずちゃんさん見てると効いてたから、ああ効くんだなって…

…まさか、そんな目で見られていたとは(笑)。


それでも、合計3クールやってると、あ、これ、副作用の神経障害ね、というのはあった。左足親指の付け根あたり、なんか、もわーんとした感じと、体重かけると走る軽い痛み。


経験者なら分かると思うけど「痛風の発作のはじまる直前の雰囲気(ほとんどのひと分からんと思うけど)」。幸い、ほぼ終わり頃だったので、ギリギリセーフだったけど。


※ちなみに、皮下注射は、おなかの皮を掴んで、ぶちゅっと刺すんだけど、結構痛いし、後が少し黒くなる(そのうち消えるけど)。怖さと痛さはマルクの比では無いが、その次ぐらいに嫌な注射。




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ベルケイドは、プロテアソーム(酵素複合体)をターゲットとして阻害する分子標的薬である。


細胞内部では、不要なタンパク質はマーキングされ(ユビチキン化)、プロテアソームの働きで分解される。


腫瘍細胞は、細胞増殖を促進したり、細胞の自死を阻止するためのタンパク質を異常に生産しまくる性質があるので、プロテアソームに頑張ってもらって、余計なタンパク質は処理したいところである。にもかかわらず、ベルケイドを投与すると、プロテアソームの働きが邪魔されるため、不要タンパク質が溜まりまくり、腫瘍細胞は死に追いやられてしまう…というのが作用機序である(たぶん)。


なお、ベルケイドと同様のプロテアソーム阻害剤は、その後ニ剤承認されている(カイプロリス、ニンラーロ)。こちらはまだ使ったことが無いけど、いずれ使うとすれば内服のニンラーロかな。いずれ再発すれば、これらも研究しなくちゃですね。抹消神経障害が比較的出にくいという話、あれほんとかな。




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…というわけで、唐突だけど、ふと思い立って、ベルケイドについての、よしなしごとを綴ってみた。


わたしは、というか私のがん細胞は、たまたま、ベルケイド(+アドリアマイシン)がうまく奏効したため、3クールを終えて、自家移植に入る直前の段階でIgDは正常値に戻っていた(もちろんまだ残存がん細胞はあったと思うが)。


ただ、もちろん、ベルケイドが必ず奏効するとは限らないし、抹消神経障害等から断念せざるを得ないケースもあるかと思う。後継のカイプロリスやニンラーロにも、それぞれ一長一短あるようで、なかなかパーフェクトな薬って難しいもんだな…とは思う。


それでも。

20世紀が終わる頃まで、ほとんど武器の無かった多発性骨髄腫が、今や8年生き延びたくらいでは珍しくもなくなったことを思えば、贅沢なお話なのかも知れませんね。


ベルケイドについては、近年、年表にもあるように、多発性骨髄腫以外の病気における承認や公知申請による保険適用(ドラッグラグ解消のため効果が海外では公知されている薬を保険適用することがある)も進みつつあるようです。


まだまだ承認されていない病気でも、効果が見つかるといいですね(^。^)。



当時、外野はタダで出入り自由でした(笑)。