田中宇氏の記事が出ました。

 

 

トランプへの銃撃

2024年7月16日   田中 宇


7月13日のトランプへの銃撃は、米民主党側(共和党側の反トランプなエスタブ筋を含む)が、実行犯を支援してやらせた黒幕だろう。
実行犯のトーマス・マシュー・クルックスは、トランプが演説していた演台から130メートルしか離れていない建物の屋根の上からライフルで銃撃した。銃撃のプロは1キロ以上離れた場所からでも標的に命中させるので、演台の周囲1キロの屋上など狙撃可能なすべての場所には、警察官やUSSSなど当局の要員が配備され、ドローンを飛ばして監視し、不審な動きを察知・抑止する態勢が組まれるのが通常だ。
クルックスが登った屋上は演台に近く、プロの射撃手なら確実にトランプを殺せた。厳重に警備すべき地点だったが、当局要員が誰も配備されていなかった。
How Secret Service Failed Trump and Why Responsibility Could Lie With Top Dems
Trump Shot, Survives Assassination Attempt; Shooter Dead; Secret Service Reportedly Ignored Warning

クルックスがライフルを持って屋上によじ登るところを、近くにいた聴衆たちが見つけ、発砲する前に、電話や直接の声掛けで警備当局に通報した。だが当局は、すぐに反応しなかった。
演説会場には、警察や警護官など、当局の警備のプロたちが配備されており、彼らは一般市民である聴衆より先にクルックスの動きに気づいたはずだが、何もせず放置した。別の屋上などにいた警備員たちは、クルックスが発砲するまで待ち、その後でクルックスを狙撃して射殺した。
クルックスは屋上に登って3分後に9発を発砲した。そのうち1発がトランプの耳をかすり、3発が2人の聴衆に当たり、1人が死んだ。
Watch: New Video Shows Trump Shooter Climbing To Roof - People Warning Police

クルックスは、父親のライフルを持ってトランプの公演会場に来た。当局による所持品検査にも引っかからず、銃撃を挙行できた。当局の上の方がクルックスの銃撃計画にひそかに加担し、警備の穴が設けられていた可能性が高い。
クルックスからトランプまでの距離130メートル(140ヤード)は、素人でも標的に命中できる距離だ。トランプは、銃撃される直前に資料を見るために頭を動かしたので、弾が頭蓋に命中せず耳をかすった。クルックスの弾は、ほとんど命中していた。
銃撃後、周りにいた警護官たちがトランプの周りを囲んで守りに入るまで、何秒かの無為の空白があった。このような空白の時間があるのもおかしいと、トランプ派の分析者が指摘している。
The Dark Questions We Don’t Want to Ask, But Have to Ask, About the Secret Service
"Malice Or Massive Incompetence": Erik Prince Gives Detailed Assessment Of Secret Service Failure

クルックスは単独犯と報じられているが、裏で警備に詳しい誰かがクルックスに入れ知恵しなければ、発砲まで至らなかった。誰が背後にいたのか、クルックスのスマホの履歴を見ればわかるかもしれない。だがFBIは、押収したクルックスのスマホのセキュリティを解除できず苦戦しているという。
FBIは以前から、当局が非難されそうな事件になると、関係者のスマホのセキュリティ解除に四苦八苦して開けられず、真相究明できませんでしたという話になりがちだ。
FBI Claims Purportedly Struggling To Crack Trump Shooter's Phone

「あれは当局の謀略でなく、トランプ側が人気高揚を狙ってやった狂言だ」という説がある。それは間違いだ。USSSなど警護官たちは、民主党政権下の本土安保省に属しており、トランプ陣営が自作自演の銃撃狂言をやろうとしたら、計画段階で当局側にバレてしまう。
トランプは、狂言できる状況にない。逆にトランプ敵視の側は、民主党であれ、すでに弱体化している共和党エスタブ側であれ、古くから諜報界や軍産複合体と一体で、ケネディ殺害や911、OKC(1995)以来の伝統で、自作自演のテロや銃撃はお手のものだ。
トランプの人気は巨大だが、謀略を回す政治マシンとしては、不人気な民主党や共和党エスタブ側の方が巨大だ。これらの政治マシンは、トランプが大統領に返り咲くと、再び破壊される対象になる。
オクラホマ爆破事件と911

7月13日のトランプ銃撃は、民主党側がやらせた可能性が強いが、九死に一生を得たトランプは、黒幕の意図と裏腹に、人気が急騰している。むしろ、民主党政権下の政府当局の方が、トランプの警備を(意図的に)薄くした未必の故意的な重過失を非難され、捜査されていく。
民主党側がやらせたのなら、銃撃の謀略は大失敗になっている。謀略するなら、クルックスのような射撃の素人を使わず、確実にトランプを銃殺できるプロにやらせるか、安倍晋三を殺した時のように、素人のクルックスを犯人に仕立て、実際にトランプを射殺するのは当局側のプロという、二重銃撃の構図にすべきだった。
安倍元首相殺害の深層

共和党側には、神様を本気で信じるキリスト教徒の支持者が多い。トランプは、銃弾がわずかにそれるという「奇跡」によって生き延び、2日後の共和党大会で大統領候補になる。これは神様のおぼしめしだ。トランプ支持者の何割かは、そう感じている。
銃撃されても奇跡的に生き延びたトランプは、神様の使徒かも。そんな風に感じる支持者たちが、強固にトランプを支援するようになる。
リベラルな民主党の支持者たちは、そんなトランプ支持者を迷信者として馬鹿にするが、どんどん負けていく。バイデンは認知症がバレたのに候補に固執し、民主党を自滅させている。
合理論者を気取るリベラルは実のところ、無根拠な温暖化人為説や、有害無益なmRNAワクチン、善悪逆転のロシア敵視論、世の中を混乱させるだけの歪曲ジェンダー論などを軽信する、不合理な全体主義者であることが露呈している。(全体主義=悪でもないけど)
Climate "Reparations" Numbers Are Rigged

リベラル勢力(人士、市民運動、マスコミ、政党、組合など)は、自分たちの欧米リベラル文明を自滅させる策を連発しているのに、それに気づいていない。リベラル策を過激に稚拙にやって自滅させる米諜報界系の(隠れ多極主義的な)策略が大成功し、米国側が衰退崩壊し、中露非米側が世界の中心になっていく。
世界の非米化により(世界を不安定にしてきた英米が衰退して)国際政治が安定し、経済発展の主導役が、米国の金融バブルから非米側の実体経済へと転換する。この転換が、隠れ多極派の目的だろう。
(米国側の人々の多くは、歪曲された歴史観・世界観を信じ込み、英米が世界を不安定化してきた歴史を見ないし、中露は世界を不安定化すると思い込み、金融バブルにも気づいてない。そういう人に説明しても無駄かも。勝手に自滅しなって感じ)
There’s another culprit in the Trump murder attempt

民主党に入り込んだ諜報界の隠れ多極派は、今年の大統領選で次々と自滅策をやっている。バイデンが認知症を露呈してしまった先日のトランプとの討論会がそうだったし、今回のトランプ銃撃もそうだ。銃撃後、トランプの当選確率は65%から73%に上がった。
銃弾が当たったらトランプは死んでいた。隠れ多極派は、トランプを当選させるために民主党に自滅策をやらせていたのでないかのか??。それなのに、トランプが死ぬ確率も高かった銃撃を画策したのか??
米民主党内乱、トランプ勝算の急増

一つの考え方として、トランプが死んでいたら、共和党大会で誰が大統領候補になっていただろうか。マイク・ペンスとか、反トランプなエスタブ系が盛り返したか??。そんなことはない。
トランプ支持者たちは、指導者を失って内紛して自滅していったか??。その可能性はあるが、むしろトランプに替わる主導役を決めて立て直し、秋の選挙で政権を取り戻す可能性の方が高い。民主党に入り込んだ隠れ多極派は、そこまで考えてクルックスに銃撃をやらせたのかもしれない。
2024 Republican National Convention kicks off: What you need to know

この半月での討論会と銃撃で、トランプ再選の可能性が劇的に強まり、民主党側は劇的に弱体化した。討論会も銃撃も、私から見ると、トランプを勝たせてリベラル・エスタブ支配の米覇権を自滅させる隠れ多極派の謀略だ。銃撃には偶然にも、神業的な耳かすりの奇跡までついている。
米国の政治は、トランプも、隠れ多極派も、バイデンの認知症がバレたことも、ダイナミックですごいと思う。偶発した神業的な奇跡までが、トランプ支持を急騰させる政治ダイナミズムになっている。もしトランプが銃撃で死んでいたとしても、それも多分、共和党やMAGAの結束につながる。
Democrats Muzzled: Trump Assassination Attempt Curbs Opponents' Rhetoric

日本は、安倍晋三の殺害によって、親米を維持しつつ非米側とも対話する「エルドアン方式」の道が断絶され、自滅につながるだけの中露敵視論しか存在しない国に成り下がったままで、政治ダイナミズムがまったくない。
米国のリベラル勢力は、少なくとも、自分たちで自滅策をやり始める独創力がある。日本のリベラルは米国のコピーばかり。対米自立は口だけで、実は自滅策でも対米従属と教条主義の小役人根性。
安倍殺害後、マスコミは、殺されたのは安倍や自民党自身が悪いんだという論調一色に。米国でも今回、民主党側から、銃撃されたのはトランプ自身が悪いんだという論調が出かかったが、すぐに、バイデンからマスコミまでの民主党側が、トランプは最大の脅威だ(だから消すべき)と言っていたことの方が大きな問題になり、民主党側が負けている。米国政治は、腐っても鯛のダイナミズムがあって面白い。
Was Trump 'Put in a Bullseye'?

トランプは、副大統領候補にJDバンスを選んだ。バンスの外交論を見ると、きたるべきトランプ政権がどんな外交姿勢をとるかを予測する際の手がかりとなる。世界に対する軍事・経済支援からの撤退、親イスラエル(アラブとの和解の再仲裁)、反ロシアだが反ウクライナ、中国敵視・米中分離など。この話はあらためて書く。
Meet J.D. Vance, Trump’s VP pick: Hawk on Israel, critic of foreign aid
 

 

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最後の章の副大統領候補の記事

バンス氏は39歳という若さ。

 

トランプ大統領の副大統領候補、JD・ヴァンス氏を紹介:イスラエルに対して強硬派、対外援助に批判的

ヴァンス氏は「アメリカ第一主義」の扇動者であり、2003年のイラク侵攻やウクライナへの軍事資金提供に反対したが、イスラエルの強力な支持者であり、アラブ諸国との正常化協定を支持している。

 

 

元米国大統領で共和党候補のドナルド・トランプ氏は月曜日、オハイオ州の上院議員J・D・ヴァンス氏を副大統領候補に選んだと発表した。共和党支持層と「アメリカ第一主義」外交政策の支持者、そして親イスラエル派の有権者を活気づけることができる候補者を選んだことになる。

トランプ氏は、共和党の指名候補がペンシルバニア州の集会で暗殺未遂に遭い、生き延びてからわずか2日後の、ミルウォーキーでの共和党全国大会初日に、Truth Socialへの投稿でこの発表を行った。

 

39歳のヴァンス氏は、2022年に上院議員選挙に立候補し、2023年1月に就任した。銀行、商業、経済、高齢化に関連する委員会に所属している。同上院議員は、以前はテクノロジー業界のベンチャーキャピタリストや企業弁護士として働いていた。2016年に出版された回想録「ヒルビリー・エレジー」で有名になった。この本は、彼の生まれ故郷であるアパラチア地方の社会的、社会経済的問題を描いている。ヴァンス氏は、2003年から4年間、米海兵隊に勤務した。軍務に就いた期間には、その年の米軍侵攻後のイラクでの広報活動も含まれている。

 

 

「アメリカ第一」

よりタカ派的な意見や共和党のネオコン派とは対照的に、ヴァンス氏は中東における外国援助や米軍の軍事活動を批判してきた。5月にクインシー研究所で行った演説では、ウクライナに対する米国の軍事支援に疑問を呈した。

「私はロシアと戦っているウクライナ人を確かに尊敬しているが、事実上終わることのないウクライナ戦争に資金を提供し続けることがアメリカの利益になるとは思わない」と彼は演説で述べた。

ヴァンス氏はクインシー研究所での演説全体を通じて米国の外交政策決定を批判し、米国は2003年のイラク侵攻などを通じて「中東にイランの代理国を作った」と述べた。

 

上院が4月下旬にウクライナへの610億ドルの新たな軍事援助を承認した後、ヴァンス氏はイラクでの経験を踏まえて同僚らを叱責した。

「私は名誉ある国への奉仕をしたが、イラクに行ったとき、嘘をつかれていたことが分かった」とヴァンス氏は上院議場で述べ、「この国の外交政策体制の約束は完全な冗談だった」と付け加えた。

同じ上院演説で、ヴァンス氏はイラクからのキリスト教徒の脱出は米国の侵攻によるものだと主張した。

「イラク侵攻前、イラクには150万人のキリスト教徒がいた。その多くは古代のコミュニティ、カルデア人であり、彼らの血統と祖先をたどると、イエス・キリストの使徒を文字通り知っていた人々だ」と彼は語った。「今、それらの歴史的なキリスト教コミュニティのほぼすべてが消滅した。これはイラクにおけるアメリカの努力の成果だ。イランの地域同盟国であり、世界最古のキリスト教コミュニティの一つを根絶し、壊滅させたのだ」

イラクのカルデア系カトリック教徒とその他のキリスト教コミュニティは、2003年の戦争前には約150万人いたが、その後約15万人に減少した。イラクのキリスト教徒は、2014年のイスラム国による暴力を含め、戦争以来かなりの暴力に直面している。

ポリティコは4月の記事で、ヴァンス氏は「『アメリカ第一主義』の世界観」を持っていると述べ、2016年の大統領選挙運動中にトランプ氏が再び人気を博したスローガンに言及した。

 

親イスラエル

ヴァンス氏の米国政策批判には、米国のイスラエル支援に対する疑問は含まれていない。クインシー研究所での演説で同氏は、米国の援助に関してイスラエルとウクライナは異なると主張した。

「この町ではイスラエルとウクライナが全く同じだと思い込んでいるのはちょっと変だ。もちろんそうではないので、別々に分析することが重要だと思う」と同氏は研究所で語り、政治家はイスラエルへの支援がいかにアメリカの「最善の利益」になるかをもっと明確に表現する必要があると付け加えた。

ヴァンス氏はイスラエルについて「世界で最もダイナミックで技術的に進んだ国の一つ」と語り、イスラエルのアイアンビーム防空システムの開発を称賛し、「イスラエルは我々にミサイル防衛の均衡をもたらすために最も重要な仕事をしている」と述べた。

バンス氏は、多くの米国人が親イスラエル派である理由として宗教を挙げ、米国は「依然として世界最大のキリスト教徒が多数を占める国」であり、イエス・キリストが現代のイスラエルとヨルダン川西岸で生き、死に、そして復活したというキリスト教の信仰に言及した。

「アメリカの外交政策が世界のその一角をあまり気にかけないという考えは、アメリカ人がどんな人間であるかを考えれば、まったくばかげている」と彼は語った。

ユダヤ人インサイダーは、ヴァンス氏がこの演説を通じて「アメリカ第一主義の世界観に親イスラエル的な解釈を加えた」と評した。

同月、CNNとのインタビューで、ヴァンス氏はイスラエルがガザ戦争を継続することへの支持を表明し、同国に対する米国の圧力を拒否し、パレスチナ人の死傷者の責任はハマスにあると非難した。

「ハマスが戦争を始めたが、今はパレスチナの民間人の陰に隠れている。だから、過去40年間の教訓を学びたいなら、最も重要なことは、ハマスを軍事組織として打ち負かすことだ」と彼は語った。「ハマスのイデオロギーを打ち負かすことは決してできないが、あの指揮官たち、最​​後の軍事訓練を受けた大隊を根絶することはできる。イスラエルにそれを実行させる権限を与えるべきだと私は思う」

バイデン政権は戦争におけるイスラエルの行動に対してますます批判的になっているが、これまでのところ同国に対する米国の軍事支援を継続している。

ヴァンス氏によると、米国はこの地域での戦争を「細かく管理」することに成功しておらず、戦争をどのように遂行するかはイスラエル自身に決めさせるべきだという。

「イスラエルに対する我々の態度は、我々は中東戦争を細かく管理するのが得意ではない、イスラエルは我々の同盟国だ、彼らが適切だと思う方法でこの戦争を遂行させればいい、というものになると思う」と彼は語った。

ヴァンス氏はCNNのインタビューで、イスラエルとサウジアラビアの正常化合意に向けた米国の取り組みに言及し、「新たな中東」を訴えた

「中東における我々の目標は、イスラエルがサウジアラビアや他の湾岸アラブ諸国と良好な関係を築けるようにすることだ」と彼は語った。「イスラエルがハマスとの仕事を終わらせない限り、我々がそれを実現する方法はない」

イランとの紛争

4月のイランによるイスラエルへの攻撃を受けて、ヴァンス氏は、この地域では「紛争激化の真の恐れ」があり、米国は紛争の封じ込めに取り組むべきだと警告した。

「米国にとって最も重要なことは、第一に、われわれはすでに手薄になっているため、これがより広範な地域紛争に発展するのを防ぐこと、第二に、イスラエルの同盟国を支援することだと私は思う」と同氏はCNNとの別のインタビューで語った。

ヴァンス氏は、エスカレーションへの不安が存在するのは「世界が米国の戦力があまりにも薄くなっていると見ている」ためだと述べ、製造能力の再構築を含め米国に「抑止力を再確立する」よう求めた。



 

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2021年2月23日   田中 宇