共同代表の平田です。


読売新聞の「人生案内」が、ツイッター上で話題になっていたので(末尾に転載)、私だったらどう回答するか考えてみました。

(私なら、そもそも精神科医として、新聞の「人生案内」欄の回答者にはならないだろうと思いますが。(野村先生には失礼ながら。))


回答している野村先生にとっては、たかが「新聞の人生相談」という位置づけなのでしょうか?

同性愛や同性愛者の実情についてよく知らぬままに回答してしまえることが、私にとっては驚きです。


かなり字数オーバーでしょうが。

「新聞に載るならば」という仮定で、質問者への回答だけでなく、ほかの読者達への心理教育的な意味合いもこめて、書いてみました。


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息子さんから、同性愛であることを告げられて、ショックを感じておられるのですね。
おそらく予想もしなかった告白に驚かれ、今はなかなか受け入れられないことと思います。
受け入れられないのも無理もないことと思います。

世の中の大多数の親御さんがそうであるのですが、世の中に同性愛についての正しい情報が流されておらず、同性愛に対して否定的なイメージしか持てないがために、同性愛であることを子どもから打ち明けられた当初は、なかなか受け入れられないのも無理のないことです。
ですので、貴方が今、混乱していたり、悲観的な思いにとらわれていたとしても、それは無理のないことです。


でも、息子さんの本当の幸せは、貴方が「ありのままの」息子さんを受け止め、受け入れることによって、はじめて可能になります。


世の中の40人に一人は同性愛者だと言われています。


長年、同性のパートナーと連れ添い、幸せな「家庭」を築いている同性愛の方々も沢山おられます。
女性と結婚して「平凡な家庭」を築くことが、息子さんの幸せに、はたして本当につながるでしょうか。
息子さんの幸せを本当に望むのでしたら、そこのところを(苦しいことですが)貴方自身がしっかりと考えてみることが必要なのではないでしょうか。


最近は、同性愛についてわかりやすく説明してくれる書物も出ています。
可能なら、貴方自身が、同性愛について学んでみられるとよいと思います。
同性愛の当事者が、子どもの頃からどれほどつらい想いをしているか、
自分の本当の気持ちを抑え込んだり、嘘をついて異性と付き合うことによって、
どれほど自分や他者を傷つける結果になっていることか、
貴方の知らなかった、当事者の体験を、色々と知ることができると思います。
そして、そのことはきっと、貴方と息子さんが、将来、心を開いて対話するための、大きな助けになることでしょう。


同性愛についてよりよく知ることは、貴方自身がご自分の混乱を整理したり、悲観的な気持を癒すことにもつながり得ると思います。


(一点、お伝えしておきますが、同性愛は、「親の間違った育て方」などによって生じることはありません。生得的なものだという説明が一般的です。ですので、間違っても「私の育て方がわるかったんだ」などと御自身を責めることのないように。)


くり返しますが、息子さんの幸せは、貴方が「ありのままの」息子さんを認め、受け入れることによって、はじめて可能になります。


貴方が、息子さんとともに幸せになれることを祈念しています。



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こういうのにはanno先生も反応するだろうと思って、ブログをみてみたら、やはりさっそくannoバージョンの回答を書いておられました。

http://d.hatena.ne.jp/annojo/20111024#p1




(以下が元記事)


http://www.yomiuri.co.jp/jinsei/kazoku/20111024-OYT8T00129.htm

>30代息子が同性愛告白

 60代主婦。独り暮らしの30代半ばの息子に、そろそろ本腰を入れて結婚を考えてもらいたいと思い、話を持ちかけました。すると息子は、しばらくためらった後に「実は同性愛だ」と告げました。

 息子の話では、自分が女性に関心があるのかを確かめたくて、結婚相談所に申し込んだこともあるそうです。でもそこで多くの女性から話をいただき、逆に閉口して付き合うまでには至らなかったとのこと。その後、結婚を真剣に考えた女性と出会ったが、結局は破綻したと言いました。

 息子は真面目な性格で、「親不孝者だ」と述懐しました。でも、こんな話を聞くとは思いもよらず、どう接したらよいかわかりません。いろいろ話してみても、息子はなかなか心を開いてくれていない気がします。息子に平凡でも幸せな家庭を築いてほしいというのが、親としての切実な気持ちです。心の持ちようをご教示ください。(東京・J子)

 このご相談に対して「息子さんの人生は息子さん自身が決めることで、親が介入すべきでない」という回答もありえるでしょうが、親心としてなかなかそうも簡単に割り切れません。

 私にはむしろ、息子さんが心を開いてくれないもどかしさがあなたの悩みの中心にあるように思えます。確かに、息子さんの真意は不透明な面が多い。結婚を真剣に思った女性が居たり、結婚相談所に申し込んだり、などと聞くと、本当に同性愛で結婚する気がゼロなのか、という疑問も湧きます。

 そもそも同性愛というのは100%そうか、100%違うかどちらか、と割り切れるものでもなく、多少その傾向がある人でも結婚して子供の居る人も多いのです。こう考えれば、息子さんの場合にもまだ可能性はあるような気もします。

 ただ、この段階で説得しようとするのも逆効果でしょう。結婚がいかに大事なことか、同性愛がいかに間違っているか、などと浴びせられると、息子さんは親とのずれをさらに感じるでしょう。結婚問題はいったん棚上げにした親子の日常的な対話を築くことこそが、心を開き、真意を聞ける近道かもしれません。

 (野村 総一郎・精神科医)

(2011年10月24日 読売新聞)



 AGP 2011年度 第2回定例会開催のお知らせ

「中学生・高校生のセクシュアル・マイノリティの子どもたちへの支援を考える
 ~『保健室の先生』編~」


 セクシュアル・マイノリティ当事者にとって、自分のセクシュアリティのあり方・性別のあり方を殊更に意識するようになる、中学生・高校生の時期は、とても大切な時期です。この時期に、どれぐらい肯定的な環境にいて、どれぐらい肯定的な情報を得られるかがその後の当事者の一生のあり方を決めるといっても過言ではありません。
 AGPでは、これまでもこれからも、「中学生・高校生のセクシュアル・マイノリティの子どもたちへの支援を考える」というテーマを一貫して考えていきたいと思っています。
 中学生・高校生への支援を考えるにあたって欠かせない存在が「保健室の先生」です。
 今回の定例会では、神奈川県の養護教諭お二人が、スピーカーとして来てくださいます。

 お一人は中学校の養護教諭、お一人は高校の養護教諭。

 お二人とも、セクマイについては以前より関心を 持っており、授業の中で、セクマイについて生徒達にちゃんと伝える工夫をしたり、実際にセクマイの子どもにも関わった経験があります。

 当日は、実際に授業中にどのようにセクマイについて生徒達に伝える工夫をしているか、授業の実践の様子と、実際にセクマイの子どもに関わった(相談にのった) 体験について、お話いただける予定です。
 また、当日は、単に、スピーカーの話をきくだけでなく、参加者たちが、自らの中高生時代をふり返って、 自分達が中高生だったときに、どのような環境があったら、 セクマイにとってもっと過ごしやすかったかを(自らの経験をもとに)考えるようなグループ・ディスカッションの時間を設けます。 グループ・ディスカッション後は、養護教諭達を交えて、全体での共有(シェアリング)を行ないます。
 ⇒今現在&今後の時代を生きる、 中高生のセクマイ当事者にとって、望ましい環境をつくるきっかけづくり(意識化づくり)の場にしたいと考えています。

  関心のある方どなたでも参加できますので、どうぞふるってご参加ください!


<ゲストスピーカー>

 福島静恵さん(神奈川県内の高校にお勤めの養護教諭)

 関本富美子さん(神奈川県内の中学校にお勤めの養護教諭)

 

■日時:10月9日(日) 14:30(14:15開場)~16:50

■会場:新宿区内の公共会議室(詳細はお申し込みいただいた方にお知らせします)
■資料代など:AGP会員700円 会員外1200円
 ※事前申し込み制です。
  参加申し込み・問い合わせは以下のアドレスへどうぞ。
  
2011sokai@agp-online.jp


<当日の進行>
 14:30~15:30
  ゲスト・スピーカー養護教諭お二人のお話&質疑応答
 15:30~15:40
  休憩
 15:40~16:40
  小グループに分かれてのディスカッション&全体でのシェアリング
  ※中学生・高校生のセクマイの子どもたちにとって、どのような環境が望ましいのか、 

    (参加者自身の中高生時代をふり変えつつ)小グループにて話し合います。
 16:40~16:50
  アンケート記入