文責:林義拓


 日本医学哲学・倫理学会という、医療に関する倫理的諸問題を扱う学会があります。哲学・倫理学者、医療専門職、法律家が主なメンバーで、ぼくも少し前から参加しています。
 この学会では学会誌として、日本語版と英語版(国際誌)とを各年一回発行しています。後者の第五号がこの夏に発刊され、そこにぼくが投稿した論文が掲載されましたのでご報告いたします(戸籍名で投稿)。


Tomoya KATAYAMA, 2011, "Cultural Bias in the Medical-Ethical Discussion on Health Care Proxy: What Difficulties do Gays and Lesbians Confront in Japan?," Journal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicine, No.5, Japanese Association for Philosophical and Ethical Researches in Medicine.


 英語圏の文献を渉猟していても、ゲイ・レズビアンの終末期医療を巡って為された研究はごく少数です。とりわけ日本の現状に関して言えば、ほぼ皆無です。
 一方で、血縁と婚姻を越えた関係に関する政策提言研究会の調査(2004)によれば、同性間パートナーシップの法的保障に関して、ゲイ・レズビアン本人たちのニーズが最も高いのは医療をめぐる諸権利であることが分かっています。そのニーズの高さと、研究における空白とのギャップが、ぼくはずっと気になっていました。

 この論文は、多くの方にはおそらく馴染みのない「ヘルスケア代理法」という観点から、日本のゲイ・レズビアンが終末期医療現場で直面する困難の法制度的要因を分析したものです。やや入手が難しい雑誌ではありますが、機会があれば読んで頂けたらと思います。


 尚、この論文と関連するものとして、日本生命倫理学会での口頭報告(2010年)や立命館先端総合学術研究科院生論集報告(2007年)があります。また、セクシュアルマイノリティウィーク全体シンポジウムにてお話ししたこととも関連があります。併せてご覧ください。


http://www.arsvi.com/2010/1011kt2.htm
http://www.arsvi.com/2000/0703kt.htm
http://ameblo.jp/agp-blog/entry-10900677935.html


 論文自体の著作権は学会に帰属するため、ここで掲載することはできませんが、参考のため抄録だけ以下転載します。


Abstract:
This paper highlights a cultural bias in the medical-ethical discussion in Japan of health care proxy. In particular, the paper looks at a discussion by expert committees that prepared and evaluated the Guidelines for Terminal Care issued by the Ministry of Health, Labour and Welfare in 2007. An absence of institutional guarantees of same-sex partnership and of relationships with gay and lesbian friends causes many difficulties in medical institutions for gays and lesbians in Japan. For example, due to the lack of such legal protections, a gay or lesbian patient and his or her partner are often hindered from seeing each other by social custom. To improve this situation, gays and lesbians campaigned for terminal care guidelines sensitive to their needs. In particular, they discussed whether same-sex partners were covered by the definition of family described in the guidelines and proposed the legal stipulation of a health care proxy. Despite these activities, there was almost no discussion about the two issues in the committees’ discussions. This significant omission by the committees reflects a general cultural bias against gays and lesbians. This cultural bias needs to be neutralized by ensuring special representation rights for minorities, including gays and lesbians.



 共同代表の平田です。

 去る7月16日(土)に日本コミュニティ心理学会第14回大会@上智大学にて、シンポジストの一人を務めてきましたので、報告いたします。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jscp2/taikai/jikitaikai.html



【日本コミュニティ心理学会第14回大会 大会企画シンポジウム】 
第1日目:7月16日(土)
 テーマ:「多様性を楽しむ社会の実現に向けて」
 演者:
  話題提供 
  →長瀬 修(東京大学大学院経済学研究科・特任准教授)
   「合理的配慮とアクセシビリティ 『わかりやすい障害者の権利条約』作成を例に」
  →平田俊明(しらかば診療所・精神科医/臨床心理士)
   「LGBTの心理的支援」
  →副島賢和(昭和大学病院内さいかち学級・教諭)
   「院内学級の子どもたちが教えてくれた大切なこと
    ~院内学級担任・ホスピタルクラウン活動を通して~」
 司会:加賀美常美代(お茶の水女子大学)


 当初、各シンポジストの演題の系統がばらばらなので、まとまらないシンポになるんじゃないかと思っていたのですが、思いのほかそうならず、ほかの演者の先生方の話も面白く、とても楽しめたシンポジウムでした。シンポ開始時に、大会長の久田満先生がLady Gagaの”Born This Way”をBGMとして流され、「流石!!」でした。セクマイについて、勿論そんなに詳しく知らない人々が多かったシンポだと思いますが、「知ろう」という姿勢に誠実さが感じられるように思いました。
 副島賢和先生は、NHKの「プロフェッショナル」という番組にも出たことがあり、『赤鼻のセンセイ』というドラマのモデルになった先生で、子ども目線に立とうとする姿勢が素晴らしかった!です(ご本人自身もchild-likeな先生)。
 司会の加賀美常美代先生は、異文化間教育、多文化間カウンセリングが専門の先生で、発言が適切で、「異文化」「多文化」を専門にしている先生には、セクマイの話も通じやすいかも、とあらためて思った次第です。
 ふだんあまり接することのない分野の人々と交流できて、私にとってもよい刺激となったシンポでした。
 日本コミュニティ心理学会の学会誌に、シンポジウムをテープ起こしした原稿が、そのうちに載るらしいので(どれぐらい先でしょう?)、興味のある方はどうぞどこかでゲットして読んでみて下さい。



QWRC連続講座
LGBTの医療・福祉II ―豊かなサバイバルを考えよう―
第3日目 2011年7月19日(月・祝)


 AGP関西代表 村田 淳


きっかけは、平田代表のお声掛けで手伝いに上がった2009年のQWRC連続講座でした。そのご縁で、今回、QWRCからご連絡を戴き、手伝う事となりました。今年初めのミーティングに参加後は諸事情でしばらくお邪魔する事が出来なかったのですが、開催が迫って来た5月頃から、再びミーティングに参加しました。


当日は、会場で手伝いつつ、井戸田副代表の講座を聞いていました。実際に各医療機関へ足を運んで得た生の医療者の声を届けて下さったので、とても説得力のある内容でした。また所々にユーモアが挟まれ、会場からは笑いがこぼれていました。


午後、僕を含めた3名のAGP関西のメンバーはファシリテーターを務め、5~6人単位に分かれたグループ毎にワークを行いました。時間が押している事、また、「語る会」の持つ時間の長さに慣れていた事からテンポの速い運びとなりましたが、それでも途中に設けた休憩時間中にグループ内で歓談したりと、感情的な良い交流も出来たと思います。


7月の3日間で今年の連続講座は終わりましたが、来月から、来年の活動に向けてミーティングを開くそうです。これからも、QWRC等、他の活動と関わる事でAGPの幅が増えて行けば良いなと考えています。


最後に、この場をお借りして、今回の活動を場を与えて下さったQWRCの皆様、お手伝いや講師として関わって下さった方々、そして参加者の皆様に厚くお礼申し上げます