前回の「弘法大師空海の「御遺告」(3)」では、室生寺(奈良県宇陀市)の大切さについて述べられておりましたが、今回は東寺(京都市南区)についてです。

(過去記事)
「令和」始まる~伊勢神宮と高野山の意外な関係
https://ameblo.jp/agnes99/entry-12458173372.html

~1200年続く奥之院での生身供(しょうしんぐ)~

 

高野山奥之院では弘法大師は今も生きて瞑想を続けているとされていて、日に2回(朝6時と10時半)食事を届ける「生身供」が行われています。入定後から現在まで1200年もの間、続けられている儀式のひとつです。

御供所にて調理された食事は嘗試(あじみ)地蔵での味見を経て、2人の僧が白木の箱に納めて御廟へと運んでいきます。先頭には案内人の維那(ゆいな)が歩き、御廟橋を渡って燈籠堂の中へ。食事をお供えした後、読経して再び御供所へと戻ってきます。

(参考)
高野山奥之院御廟〜1200年間続く弘法大師空海の食事〜
http://wakayama-rekishi100.jp/story/025.html

~東寺の朝参り~

 

同じ時、京都市南区にある東寺(教王護国寺)の大日堂でも毎朝、高野山奥之院と同じく生身供(しょうじんく)が行われています。私は、昨年9月、11月、12月と3回にわたって朝参りに参加しました。

(注)現在、御影堂が修復工事のため大日堂で行っています。

下図は東寺の朝参りの様子です。

午前6時、弘法大師の住房であった御影堂の唐門と壬生通り沿いの西門が、西院の鐘の音と同時に開きます。

「10回の鐘の音が鳴り終わるまで門に入らない」という、決まりを守る常連さんの後に続いて大日堂(修復工事後は御影堂)に上がります。座る場所も常連さんの指示に従います。

読経が始まり、一の膳、二の膳、お茶のお供えが始まります。弘法大師空海に捧げるお食事の内容は、高野山とは違って極めて質素です(下図の写真)。
 

お経が終わると、弘法大師が唐から持ち帰ったと言う‟仏舎利”を僧侶が頭と両手に当てて下さいます。赤い筒状の入れ物の中に仏舎利が入っています(下図の写真)。

これから朝参りに参加してみたい方は、前日に京都プラザホテル、SAKURAテラスなどの東寺付近のホテルに宿泊された方が何かと便利です。

(参考)
世界遺産~東寺(教王護国寺)境内のご案内
https://toji.or.jp/guide/
東寺/生身供(旅ぐるたび)
https://gurutabi.gnavi.co.jp/area/kyoto/kyotoshi/asakanko/chapter10.html
暮らすように楽しむ、京都の朝と夜
https://serai.jp/gourmet/377117
東寺 朝のお参り(SAKURAテラススタッフブログ)
https://www.sakuraterrace-gallery.jp/blog/detail.php?id=563

~(二十四)東寺の座主大阿闍梨耶が如意宝珠を護持すべき縁起~

 

(御遺告より)
そもそも思いめぐらしてみれば如意宝珠は、その始めもわからない太古より以来、龍王の肝、あるいは鳳凰の脳などにあるのではない。(宝珠の実体は)自然道理(あるがままの理法)の(釈迦牟尼)如来の分身である。

あるものは、ひたすら(如意宝珠は)鳳凰の肝、龍王の脳中にある云々という。これはまったくの虚言である。

その理由は何か。

宝珠は自然道理の如来の分身であるというのが、真実の如来宝珠である。自然道理の如来の分身と呼ぶのは、祖師(空海)大阿闍梨の口伝によって生成する玉なのである。

秘密の上の秘密、甚深の上の甚深なるものである。たやすく儀軌(ぎき)に注解していない。これは大日如来が説かれたことである。

生成の玉というのは、これは能作性(あらゆるものの主体となる性質)の如意宝珠である。九種の物を合わせてこれをつくることができる。

(注)
儀軌とは、密教で諸仏、諸菩薩、諸尊の造像、念誦(ねんじゅ)、供養等に関するすべての方法、規則。またはそれを記した典籍のこと。

~如意宝珠は賢者の石?~