おいしい旅 初めて編(2) (角川文庫) [ 近藤 史恵 ]

知らない景色と美味しい料理がここに。「初めて」に出会う旅×グルメ小説集

仕事に行き詰まり、勢いで列車に乗り終点まで……旅先では驚きの出会いが待っていた(「下田にいるか」)。福引きで旅行券を引き当て、台湾へひとり旅。現地で会った駐在員はどこか訳アリのようだが(「情熱のパイナップルケーキ」)。訪れたことのない場所、見たことのない景色、その土地ならではの絶品グルメ。さまざまな「初めて」の旅を描いた7編を収録。読めば必ず出かけたくなる、文庫オリジナルアンソロジー (出版社情報より引用)

 

「アミの会」編集のアンソロジーです。

「アミの会」とはよく知らないのですが、実力派女性作家集団だそうです。

これまでに幾つかのアンソロジーを出していて、本作が10冊目刊行とのこと。

どれも面白そうなタイトルが付いて、そそられますね。

「おいしい旅」シリーズも、本作「初めて編」の他、「思い出編」「しあわせ編」と3冊あり読んでみたいです。

 

本書は、成田空港の書店で旅のお供に買いました。旅のお供にはぴったりのタイトルではありませんか。短編集なのも軽く読めていいです。知らない作家さんもありましたが、大好きな近藤史恵さんの作品も載っていたので、決め手でした!

 

全7作の内、一番面白かったのはこちら。

「糸島の塩」松村比呂美

コロナ禍を背景に、苦境に陥った小さな旅行会社の社員の女性・幸(みゆき)が主人公。会社存続のために、危うい企画を立てて契約獲得を通じて金集めに奔走します。

ただ、この会社の社長は不倫相手で、前職の大手旅行代理店での同僚のやり手営業マンだった。コロナ前に独立して、ドリップドリーム社を立ち上げた愛人に従って一緒にやって来たものの、コロナ禍で会社は倒産寸前です。

 

詐欺まがいの格安海外ツアーの企画を立て、ネットで集めた名簿の旅行好きと思われる人々に売り込むのですが、ある時同い年の女性に昔のクラスメートを装って声をかけ、話を聞いてもらう事から、お話は思いがけない方向へ。

その女性・まさこは、幸が自分で試作していた九州・糸島のツアー紹介パンフレットに興味を示し、一緒に旅行に行かないかと誘ってきたのでした。

まさこの意図は、そして幸の旅行会社はどうなるのか、、、

 

コロナ禍では、様々な業種が大きな影響を受け、旅行がほとんど出来ない世の中では旅行代理店の苦しさは本当にきついものだったと思われます。そんなリアルさを感じる設定の中で、展開するストーリーに大変面白さを感じました。

 

青い海が美しい糸島の風景や、美味しいものが登場し、幸は本来の旅好きな心と、楽しい旅行を企画してお客さまに喜んで欲しいという原点を思い出していきます。

 

つい先日、TVの旅番組で「糸島」が登場していました。偶然に嬉しくなり、見入ってしまいましたが、ちょっと行ってみたくなってしまいましたね!

 

福岡県 糸島・二見ケ浦

(画像はフリー素材からお借りしました)

 

美味しい塩や、その塩を使ったおむすび、プリンに牡蠣小屋と美味しいものも魅力的に描写されてます。

旅心が刺激されましたし、未来に向けてちゃんと歩き始めようとする幸にも、安堵し心地よい読後感でした。

 

牡蠣小屋に行ってみたいです~デレデレ飛び出すハート