大坂天満の呉服商「五鈴屋」は、天災や大不況など度重なる危機を乗り越え、江戸進出に向けて慎重に準備を進めていた。その最中、六代目店主の智蔵が病に倒れてしまう。女房の幸は、智蔵との約束を果たすべく立ち上がった。「女名前禁止」の掟のもと、幸は如何にして五鈴屋の暖簾を守り抜くのか。果たして、商習慣もひとの気質もまるで違う江戸で「買うての幸い、売っての幸せ」を根付かせたい、との願いは叶えられるのか。新たな展開とともに商いの本流に迫る、大人気シリーズ待望の第六弾!

(BOOKデータベースより引用)

 

 

お友だちのFB記事で発売を知り、すわ出遅れた!とばかりに休日、行きつけの書店に立ち寄った。

平積みの本書を手に取り、ほっとしていると小走りに近寄って来るご婦人が一人。真っ直ぐこちらに来て、他には目もくれず本書を手に取ったので、思わず「ファンでいらっしゃるんですね!」と声を掛けると、

ビックリされながらも「ええ!高田さんの本は面白いですよね!」と、小さな高田郁ファン交流会(笑)

 

少女の時から始まった「あきない世傳」のヒロイン・幸も今や匂い立つような大人の美女になっている。大阪の呉服商の三兄弟に順々に嫁ぐことになった数奇な運命を生きて、本作は3人目の夫となった智蔵を病で失ったところから始まった。

 

愛する夫を失っても、あまりの衝撃の大きさと呉服商「五鈴屋」を背負っていかねばならない今後を思案すると、悲しみに浸る余裕もなく、涙も出ない自分をいぶかしく感じながら、葬儀や商いに忙しい幸だ。

最も考えねばならないのは、大阪では女性がお店の主にはなれない事。ここをクリアして店の存続に奔走し、さらに智蔵が願っていた江戸への出店計画。幸の頭脳はフル回転を始める。

 

という流れで、本書では江戸にお店を作り、開店日を迎えるまでが描かれている。因習や仕入れ・販売方法など色々と立ちはだかる山を乗り越えて、知恵と人柄で苦労を跳ね除けて進んで行く。ストーリーは大変面白いけれども、幸もスーパーヒロインというか出来すぎなキャラクターだなあ。もちろん、こういう女性でなくては、小説のヒロインを張れないとは思うし、世の中には現実にも破天荒なすごい人物が大きな仕事を成し遂げるという事はままある。でも、幸、何をやっても上手くいくし、江戸店もこの先色々と困難が待ち受けているだろうけど、それもきっと全部解決して成功するんだよね。

そこが面白い小説ではあるのだけど、美貌の上に智恵と努力の人、

幸がちょっと妬ましいと凡人の自分は思うわけだ(笑)

 

女衆のお竹どんの着物や帯の合わせ方や結び方などの才能を認めて、いわばお手伝いさんから役付きの社員に抜擢した幸の人事は今回とっても気に入ったところ。幸の妹も今勉強中だし、今後は花のお江戸で女性の活躍が益々期待される。