「この世にたやすい仕事はない」津村記久子 | 食べて飲んで観て読んだコト+レストラン・カザマ

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この世にたやすい仕事はない 津村記久子

「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね?」ストレスに耐えかね前職を去った私のふざけた質問に、職安の相談員は、ありますとメガネをキラリと光らせる。隠しカメラを使った小説家の監視、巡回バスのニッチなアナウンス原稿づくり、そして ……。社会という宇宙で心震わすマニアックな仕事を巡りつつ自分の居場所を探す、共感と感動のお仕事小説。芸術選奨新人賞受賞。(出版社情報より引用)

 

この社会で暮らす多数の方々はなんらかの仕事について日々の生活費を稼いで暮らしていることと思うが、自分の仕事に大満足(内容・収入ともに)して働いている人は少ないかも知れない。仕事は好きだけれど収入が伴わないとか、収入は良いけどきつくて燃え尽きそうとか、仕事は良いけど職場の人間関係に難ありとか、100%満足というのは難しいかも知れない。けれども、本書のタイトルのように、どんな仕事にも苦労はつきものだし、半端な気持ちではどんな仕事もこなせやしないと、自分をなだめながら一生懸命仕事に取り組んでいる人が大半ではあろう。

 

本書の主人公の女性(30代くらい)は、前職で燃え尽きたらしくその職を辞した後は、あんまり何も考えずに自分の時間を提供していれば過ぎていくような仕事を職安の職員・正門さんに依頼してみた。

で、紹介された最初の仕事が隠しカメラで小説家の山本山江を監視する仕事。録画された画面を見て何かあれば上司に報告するのだが、まあほとんど何も起こらない日常生活が続く。山本山江は小説家であるから、ほとんど自宅の仕事机のパソコンに向かっている日々。時々キッチンで食事を作ったり、仕事以外ではDVDで映画を観たり、という程度の動き。これを辛抱強く見張るというのも難儀な仕事だなあと思うが。主人公は前職を辞めた理由にもあるように、大変仕事熱心な人であるようで、山本山江の生活に同化していくように、同じものを食べてみたり、同じ道具が欲しくなったりしてしまう。そうしている内に山本山江の趣味嗜好、映画の好みなどを把握していき、結果、監視目的のある品物を発見する事につながっていく。

 

このような姿勢は職場でも評価され契約継続を打診されるのだが、自分でも仕事にのめり込む状況になりそうな事からは一歩引きたく、継続を断ってまた職安の正門さんに相談することになる。

 

正門さんもまた凄腕の職員さんで、各職場の人事担当者の信頼も厚く、正門さんの紹介なら、という事で主人公は幾つかの職場を紹介されていくのである。

巡回バスの各停留所近くで流される広告アナウンスの原稿作り。

老舗の菓子会社のおかきの袋につけるちょっとした文言、豆知識みたいな文章を書く仕事。

住宅地を回って各家々にポスターを張ってもらうことを依頼する仕事。

大きな公園の森の中にある小屋で簡単な事務仕事をする。

 

といったようなそれぞれの仕事において、主人公は仕事と自分の距離をとろうとして就職するものの、

結果いつも熱心に仕事をしてしまい一定の評価を得るほどの、読者の自分の目から見ても仕事への

取り組み方が真面目な大変優秀な人物である。

 

こんな仕事、本当にあるのかなと思うような仕事内容の描写も面白いし、主人公の(ここまでやるの?と思うくらいの)仕事ぶりも大変参考になるし、燃え尽き症候群になってはいけないが、仕事と自分自身の距離感の取り方、自分に向いたやりたい仕事にどう向き合っていくか、そういった辺りをちょっと変わった仕事を通じてとても面白く読ませてもらった。もし、今貴方が、仕事に熱心なあまり、押しつぶされそうになり悩んでいるとしたら、ちょっと本作を読んでみるのもいいかも知れない。(実際、ネットで見た評価にはそんな立場の人の感想があり、☆5の評価を付けていた。)

 

自分、若い頃の会社員時代と自営になってからも、かなり長い間社会の中で働かせて頂き、考えてみたら稀有ともいえるくらい幸いなことだ。たいした稼ぎでも無く、へなちょこな仕事ぶりだのに、ともあれ続けていられる事は大変有難いと思わざるを得ない。

脳力が限界を迎えるまでは働こうと思うが、いつまで持つか?!滝汗フアン~

 

 

捕鯨問題:道南の郷土料理、鯨汁のインスタント品をお土産に貰った。道南ではお正月などにも欠かせない料理だそうだが、未だに本物を食べたことが無い。

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