道東の別海町で羊飼いをしながら書いた本作がデビュー作の河崎明子さん、前々からとても読んでみたかった小説です。北海道の自然や動物と向き合いながらの暮らしから生まれた物語、興味が湧きます。

ちらちらと本のサワリが聞こえてきて、なんでも東北から入植した男・捨造からひ孫にいたるまでの家族の歴史だとか、男の母親は妊娠中に冬に遭難して一緒にいた馬を喰らい、その腹の中で生き延びて子どもを産んだとか、なんだかかなり重いお話のようだ。その重さが気になり、ちょっと本に伸ばした手が停まっていたのですが、ついに好奇心に負けて(ポイントも溜ったのが後押しして(笑))click! 

想像したよりおどろおどろしくは無く、読後感はかなり軽やかで爽やかなものでしたニヤニヤ

 

 

出自にまつわる息苦しい故郷を離れ、広い新天地・北海道に一頭の馬とともに渡った捨造。その馬は、母の命を守り、ひいては自身がこの世に生まれる事ができたアオの血を引く良馬だった。

根室で牧場主となった捨造、そして幼いころから馬の世話を手伝い手塩にかけて育てた馬のワカを愛する孫娘の和子。暴風雨の被害から、ワカを始め何頭もの馬を花島という無人島に置き去りにせざるを得なくなり、それが引き金となって牧場を閉鎖して十勝に移住した一家。

和子の孫娘のひかりは病で倒れた祖母の心のうちに今も住むワカの事を知り、花島での馬たちがどうなったのかを調べ、最後の一頭の馬が今も島で生きていると分かった。

 

 

 

厳しい道東の自然の中で、馬とともに生きた開拓農家の物語からは、風の音が聞こえ、森の匂いがし、暗い夜、陽の光、まつわるしっとりした霧、潮の香り、そういうものが感じられます。自然に恵まれて、作物や家畜が育まれ、そして人々も暮らしていますが、一たび荒れ狂った自然には為すすべもなく、ささやかな営みはもろく崩れてしまうこともあるオヨバヌこと。

「もう及ばねえ。」とつぶやいてワカを諦めた和子ですが、無人島で生き抜いている馬たちを想像すると、美しい風景が浮かびます。そこにある自然の中でしなやかに生きている馬たち。風に向かってたてがみをなびかせながらすくっと立っているのではないでしょうか。

 

この花島にはモデルがありまして、ユルリ島という無人島にコンブ漁に使役されていた馬たちの生き残りがいます。写真家の方が映像にされていて、馬たちの姿を見ることができます。雌馬しか残されなかったので、この馬たちももうすぐこの世からいなくなってしまいます。仲間が少なくなり、孤独を感じているかもしれませんが、それでも馬は置かれた場所で何かを思い煩う事も無く生き物としての生をまっとうするのでしょう。

 

ところで、捨造たちの会話文は、全く違和感の無い北海道弁でした。時々小説やドラマなどで北海道弁に接すると、誇張され過ぎていたり、なんか違うーと思う事もありますが、さすがに正しい北海道弁、大変心地よかったですニヤニヤ

 

 

要ダイエット:お正月太りから回復しない内に、ヴァレンタイン・デーが来て、毎年恒例のサロン・デュ・ショコラで自分用に高級ショコラを買ったり、珍しくダンナの所に色々来たチョコやお菓子(皆さま、美味しかったです!ご相伴に預かりました。ご馳走様ラブラブ)をバリバリ食べて、自分でも顔が一回り大きくなったと感じるこの頃滝汗