昨年、久しぶりに読んだ村上春樹作品の「1Q84」がとても面白かったので、本書が文庫版発売されたのを機会に早速読んでみました。
本書も、発行当時はものすごく話題となり、マスコミに大きく取り上げられていたことを思いだします。なので、本書の主人公の「多崎つくる」が学生時代の親友グループから絶交を言い渡され、その理由に心当たりが無かった、というお話だということは聞き知っておりました。まあ、そんな事があるだなんて、本人は気づかないうちにどんな事をしてしまったのでしょうねえ、、、と、いつか読んでその謎を知りたいと思いましたね。そして、いま、その謎は解き明かされました。

うーーん、まあ多崎くんにとってはひどく理不尽な理由でしたね。全く身に覚えのない、しかも道徳的にもいわば犯罪的にも悪い事をしたとされ、またその当時は理由を言って貰えなかったために弁明する事も、身の潔白を訴えることも出来なかったのですから。そのために、彼はもう一歩で死ぬところまで悩み、絶望したというのに。

そんな事があったために、多崎くんの人格は多少変わってしまい、育ちの良いおっとりしたハンサムな好青年は、やや鋭さと影のあるでもやっぱり感じの良い大人の男になったようです。「駅を造る」という自分に合った職業にも付き、複数の女性とも軽いお付き合いをしながら暮らしていた多崎くんは、やがて運命の女性と出会いました。

この多崎くんと沙羅さんという魅力的な女性とのカップルは、「1Q84」の天吾と青豆のカップルを連想させますね。職人気質な一つの物事を突き詰めて考えていくような男と、知識や経験が(良い意味でですよ?)豊富なクレバーな大人の女。「1Q84」は、ちょいと現実から離れた不思議空間の世界観がありましたが、そこにいたカップルを現実の日本に置いたらこんな感じ、というような。

そして多崎くんは沙羅さんの導きで、かつての親友たちに会いに行く旅に出て、自分の中に空いていた何かを埋める作業に着手するのでした。
いいお話しでしたね。「1Q84」のような不思議で訳のわからない謎もないし、分からなかった過去の出来事も説明があり、多崎くん本人が納得できるかどうかは別にしても、分かっただけでなんてスッキリできることか。前向きに歩いて行ける明るい未来のようなものを暗示してお話しは終わりますが、多崎くんの今後の幸せを確信して、一読者として気持ちよく本を閉じることが出来ました。

でも、「1Q84」の方が、自分としては好みですかねー(^-^;