今回もノーベル賞受賞ならず、落胆されたファンの方々も多かったのかも知れません。取れたら素晴らしい賞ですが、どちらにしてもファンにとって好きな作家さんの価値は変わらないですけどもね。
新刊が出るたびに話題をさらい、ノーベル賞候補常連、新刊「職業としての小説家」も出たばかりで早速良い感じの書評やレヴューも見ました。まあ、そういった事とは関係なく、たまたま書店の文庫平棚でこれというものが無かったので、「新潮文庫の100冊」というキャンペーン品(?)の中から、冊数が多く(文庫で全6冊です)読みごたえがありそうだったので、どれしばらく振りに村上春樹でも読んでみるかと(失礼な言い方ですみません(^-^;)手に取った次第です。自分、さらりと読める本も好きですが、長編で読むのに時間が掛かりそうな本も大好きです。「読書」自体が好きなので、長い時間楽しめるのが長編の良いところです。

村上春樹さんは初期のころから読んでいて、大好きでした。初めて出会った時の、あの文体に新鮮な衝撃を感じてはまりましたよ。20代の頃でしたかね。お洒落なライフスタイルの登場人物たちにも憧れてましたね。お洒落と言ってもシックな感じのね。新刊も出るたびに楽しみにしていたのですが、いつからか読まなくなってしまってました。「ノルウェイの森」は読みました。その後はどうなんだか良く覚えてないですが、「海辺のカフカ」は読んでないです。
なんだか興味が薄れたみたいな感じにだんだん遠のいたみたいです。

今回、人様のレヴューも参考にしようと思って幾つか読んでみましたが、意外とアンチな方々も多いのでビックリしました。評価が賛否両論あるんですねえ。ベストセラー作家ですし、海外でも人気が高いので、みんな村上作品が大好きなんだと思ってました。なのに、何を言ってるのだかわからないとか、気取った文体やセリフが鼻につく、とか、買って損した、とか、、、。損したと思ったとしても、まずは買ってるんですね(^-^; アンチでも読まずにはいられないのか。まあ、それ以上に熱心な大ファンが大勢いらっしゃるということなんでしょうが。

さて、自分ももし分けるならアンチに入るのかも知れません。だって、世間で新刊が出るごとに話題になっているのに読んで来ませんでしたから。
さあ、しばらく振りにお会いした村上さん、どうでしたでしょう。

面白くて、面白くて、面白くて、夢中になってヒマさえあれば読み続けました(笑)
主人公は青豆という珍しい名字を持った30歳くらいの女性と、天吾という小説家志望の同年の男性。
二人のそれぞれの視点から、別々のストーリーが語られています。そしてお話が進むと、二人には小学生の頃に接点があり、ほんの小さな出来事が二人の心に大きなものを残していたことが読者に分かって来ます。

物語りの背景には、私たちの現実社会に存在する色々な問題や出来事を思わせるものがあり、オウム真理教やエホバの証人、ヤマギシ会、NHK、ドメスティック・ヴァイオレンスなどです。また現実感の無い物事も沢山あります。この世界には2つの月があり、リトルピープルとか空気さなぎという良く分からないものも登場します。良く分からないものが出てくるお話というのは、好きな方なのでどんどんのめり込んで読書を楽しめましたが。登場人物のそれぞれのキャラクターも面白く、特に牛河という容貌が醜くて調査能力に優れている男と、タマルという屈強でお洒落なゲイの用心棒というか私設SPの対比。牛河の方は彼の内面や過去の出来事まで語られて青豆、天吾に次ぐ主要人物のように掘り下げられていることもあり、すごく気になる人物でしたのに彼には死が与えられました。大変残念に思っていたら、彼にはまだ重要な役割があったようで、、、でもそれでどうなるのかは謎のまま。

全てのエピソード、登場人物、背景世界の土地や建物や季節など、まるでその世界に自分も入り込んでいるように読書しましたが、最終話でそれがまるで夢から覚めたように、自分放り出されました。残ったのは青豆と天吾だけ。二人を取り巻く人々は、消え失せてしまったよう。
あれだけ沢山の出来事の色々は、二人の恋をより意味ある素敵なものに成就させるための、華やかな彩りに過ぎなかったのではないか。そんな風に思えて、やや気が抜けてしまいました(^-^; 

とても魅力的なキャラクターたちだった故に、彼らはどこへ行ったのか、彼らが生きていた世界は消え失せてしまったのか、それとも少し変化した別の人生を新しい世界で送っているのか、気になってしまいます。まあそんな風にあれこれ考えるのも、読書空間の楽しさではありますね。
さて、また次の村上春樹作品を読むのは、いつになることでしょうか。文庫化された次の作品が書店の平台に並んだら、手に取ってしまうかも知れませんねえ。


賄い:季節ものの松茸ご飯、旨し!
松茸ご飯
右端は、ダンナ謹製茶碗蒸し。上々でした(^-^)