食べて飲んで観て読んだコト-わたしを離さないで


寄宿学校「ヘールシャム」で学ぶキャシー、ルース、トミーの3人は、小さい頃からずっと一緒に暮らしている。外界と隔絶したこの学校では、保護官と呼ばれる先生の元で子供たちは絵や詩の創作をしていた。18歳になり寄宿学校を出て農場のコテージで共同生活を始めた彼ら。やがてルースとトミーが恋を育むようになり、キャシーは孤立していく。その後、コテージを出て離れ離れになった3人は、逃れられようのない運命に直面する事に…。

わたしを離さないで - goo 映画  より引用。


カズオ・イシグロ原作の話題となった小説の映画化ということで、とても楽しみにしていたので公開後すぐに観に行きました。

ストーリーを紹介するとネタバレにはなりますが、すでにかなり内容が知られていると思いますので、触れることにします。知りたくない方は、読まないで下さいませ。



食べて飲んで観て読んだコト



この寄宿学校で育つ子供たちは、クローン人間です。そして臓器提供のためだけに生まれてきた子供たち。寄宿学校では、健康な肉体を保つように育てられ、授業では自分たちの「崇高な使命」を叩き込まれて、臓器提供を拒否するような考えを持つ子供は一人もいません。時が来れば、通知が来て病院に出頭し、手術により臓器を摘出され、通常3~4回の摘出手術を受けると、体力も落ち終了となります。死亡とは言われません。


こんなお話は、現実にはありえませんね!いくらなんでも、クローン人間とはいえものを考えて生きる人たちから、強制的に臓器を取ってそれを移植しようだなんて、許されるはずがありません。とは、思いますが、ここでは、それが行われているという前提でのお話が語られます。


田舎の風景が美しい寄宿舎では、子供たちはスポーツをして身体を健康に保ち、絵画や工作品を制作して暮らします。作品の制作を奨励するのはなんのためでしょうか。それは、映画の終盤で明らかにされますが、この子供たちも魂を持っていると証明するため。クローンでも普通の人々と変わらない生きている人間なんだと言うために。けれども、そんな証明がなんになると言うのでしょうか。


世間と隔絶され、普通の社会や暮らしを知らずに、洗脳されている子供たちもやがて大人になり、学校を出て田舎のコテージで共同生活を何年か送り、外食やドライブを体験したり、そして恋をしたりします。そして、使命の時を迎え、従順に自分のするべきことを果たしてゆきます。

主人公の一人、キャシー(キャリー・マリガン)は、ラスト近くのシーンで幼なじみたちの終了を見届ける強いまなざしを持って立っています。こんな哀しい、そしていちずなまなざしは、見た事がないくらいでした。


あくまでも架空の設定ですし、こんなありえないお話、と思いつつも、やっぱり魂や命について考えこんでしまう静かな静かな映画でした。