山本 一力 欅しぐれ

深川の老舗大店・桔梗屋の太兵衛は、肚をわった付き合いをする堵場の貸元・霊厳寺の猪之吉に店の後見を託し、息を引き取った。桔梗屋乗っ取りを企む冶作の一味と猪之吉一党との、知力と死力を尽くした闘いの行方は?命がけの男気と凛とした女の強さが心を揺さぶる本格長編時代小説。(文庫版裏表紙の紹介より)


人間誰しも、吹けば飛ぶようなこっぱよりは、大物と言われるような人物になりたいだろう。社会的成功ももちろんだけど、それよりも肝の据わったというか何事にも動じない一本筋の通った、性根の部分で大きな人間。すぐに慌てふためく、十分に小物な自分としては、そんな人は憧れである。


冒頭、太兵衛と猪之吉が深い付き合いをするきっかけとなった出会いの描写は、大物同士の眼力のぶつかりあいでゾクゾクするような気分を味わった。大店の主と渡世人が、お互いに相手の力量を計り、信頼するに値があるか、向かい合って酒を飲みながら、しかし多くは語らずに、理解し合う。本物の男同士ならではの、友情である。


片や、騙り屋の頭、冶作。こちらも悪事のプロフェッショナル。精密な絵図を書き上げて、人をはめていく。ここで、自分としては、冶作のプロの騙りとそれに対抗する猪之吉の攻防を実力の拮抗した闘いとして期待したのだけど、話の流れは明らかに猪之吉が上だった。ちょっと残念。そりゃまあ、太兵衛・猪之吉タッグの方が主役だから勝つのはどちらかは、おのずと明白ではあるのだけど。


お話しは、どちらの側からも描かれてゆくので、両者の手口、作戦は読者には明白。その上でいずれかの仕掛けのほんの小さなほころびが出来た方が負けてゆくのだろうと、流れを楽しみにしていたのだけど、大物はどちらかがわりと早いうちに見えてくる。一つには、それぞれの部下たちの出来不出来と、その扱い方。確かに仕事は一人では出来ない。部下を上手く育て、使うのが主、親分、頭の力量というものだ。勝負はやはり、その力量の差でつくものらしい。


自分の期待とはちょっと違う展開とはなったけれども、実に読み応えのある時代ミステリーだ。頭の力量という点で、昨年世間を賑わせた経済界の風雲児たちの運命と重なって見えた部分もあり、とても面白く読めた一冊。



夕食:ビーフカツレツ。

ビーフカツレツ

雑誌:「旅」
雑誌 旅 パリ旅行予定の方とお話しして、羨ましい気持ちがつい買わせたこの雑誌(^_^; いやー、見ればやっぱりパリってステキじゃないのー(笑)思わず、3泊5日、いや2泊4日ならいつでも行けるなどと、頭の中でレストラン計画を巡らす。一夜明けて、「ホントに行くのか」と問うダンナに「あれはタワゴト」と、あっさり撤回(笑) だって、エアコン修理に非常灯新調、その他モロモロかかりが多くて~(T-T)