2024年6月19日(水) はれ 時々 くもり






前編からのつづきです。






蔵王山の刈田岳〜熊野岳〜地蔵山〜三宝荒神山と歩いてきました。

ここで折り返します。

復路は各ピークを経ずにショートカットしながら最短距離で戻ります。






往路では通らなかった熊野岳避難小屋を横切ります。

このあたりでコマクサが見られるそうですがお目にかかれず残念。






馬の背と呼ばれるのっぺりとした尾根を歩き。






御釜ふたたび。

なんというか、清らかでない、いろんなモノが混ざったような色です。

皆は美しいと感動するのだろうか。どう見ても妖しくて恐ろしい。

その昔、修験者たちはこの御釜で身を清めてから修行したとか。

ほんまかいな。






刈田駐車場が見えてきました。あっという間でしたね。






山行は往復3時間40分くらい。

コースは整備されていて難所もないので山装備でなくとも歩けます。

今回のコースが北蔵王と呼ばれるエリアです。

エコーラインの南側に南蔵王の峰々があります。

南のほうが観光地化されていなくて通好みな雰囲気がします。






エコーラインに復帰します。

このまま直進して宮城方面に下りていきます。






後半、宮城県側のダウンヒルセクション。

こちらのほうがコーナーがタイトでテクニカルです。

しかも景観もいい。

古の蔵王古道の道のりをなぞる形にもなっています。






ハイラインの入口を過ぎると大黒天駐車場。

ここも蔵王山登山口のひとつです。






大黒様と弘法大師の石像がひっそりと祀られています。

これは気づかない人多いんじゃないかな。

蔵王刈田嶺神社の里宮から刈田岳山頂の奥宮へ駆ける御山詣り。

この大黒天で標高1450m、奥宮のある刈田岳山頂が1758m。

昔は浄土口と呼ばれていたのでここから先が聖域なのかもしれません。






大黒天登山口から山頂方面を望む。

白く変質した溶岩に蔵王火山100万年の歴史が刻まれています。

左手奥に刈田岳、右手奥が五色岳でその背後に御釜という位置関係です。

ここから刈田岳山頂まではおよそ1時間コース。






エコーラインが有料だった頃の料金所跡地です。

やんちゃなブレーキ痕がいっぱいでほほえましいですね。

この先は勾配が少し緩くなって振り回すのにはちょうどよさそうです。






少し寄り道して滝を見ていきましょう。






あれが不動滝。

落差54mで蔵王山で一番大きな滝だそうです。

その名の通り不動明王に由来する滝で山伏の修行の場でもあったそうな。






山を下りやってきました蔵王刈田嶺(かったみね)神社里宮。

遠刈田(とおがった)温泉街にあります。

宮城側の蔵王の御山詣りの出発点がこちらです。






山頂の奥宮は観光客で混雑していましたが里宮は静かです。

セットでお詣りする人は何割いるだろうか。






刈田嶺神社の里宮から山頂の奥宮を目指して登る御山詣り。

そのルートは蔵王古道と呼ばれます。

ここからの御山詣りが盛んになったのは伊達政宗公の時代以降のこと。






参詣路の地形を三途の川や賽の河原に見立てて死と再生を擬似体験する。

ゴールの奥宮で祈祷を受けることで功徳が得られ願いが叶うという。

いわば生まれ変わりの旅。

出羽三山も飯豊山も然り。

こういう霊場参拝は全国で大流行しそのための講が盛んに作られました。

泰平の世になって庶民のレジャーとして定着した面もあるようです。






ここが神社になったのは明治の神仏分離令以後です。

それまでは嶽之坊と呼ばれるお寺でした。

寺が神社に変わろうとも蔵王の御山詣りの人気は戦後まで衰えず。






転機は昭和37年の蔵王エコーラインの開通。

山頂までクルマで行けるようになり、歩いて登る人はいなくなりました。

サンダル履きで御釜見物ができるようになったのです。






一旦忘れ去られた蔵王古道ですが地元有志により平成の世に復活。

昔の書物や地図を手がかりに参道を復元し歩けるように整備されました。

コースは登り片道で距離15km、標高差1450m、標準タイム6時間半。

往復するとなると大冒険ですね。






今回はイージーモードのモーターサイクル巡礼で勘弁してください。

いずれ自らの足で踏破する日が来るのか来ないのか。

旅はつづきます。






蔵王といえば個性的な温泉の数々。

ここはそのひとつ遠刈田温泉。

刈田嶺神社の隣にある共同浴場はその名も「神の湯」。

ひと風呂いただきました。

ぬるめの湯と熱めの湯、ぬるめでもなかなかの熱さです。






遠刈田温泉は安土桃山時代に金山開発の際に発見されたそうです。

400年の歴史を誇る名湯なんですね。

御山詣りの出発地点ということもあり往時の賑わいは推して知るべし。

蔵王という巨大なパズルのピースがまたひとつ埋まりました。







神の湯のすぐ近くに見つけたレストラン「えんそう」。

微妙な時間ですが開いててよかった。






丁寧に淹れたコーヒーとチーズケーキ。

いいお店を見つけてしまった。






生パスタも気になったのでここで早めの晩メシにしてしまおう。

店主着用の「蔵王古道」Tシャツを見逃すはずもなく。

蔵王古道を復活させた地元有志のひとりなのかもしれません。






結局わかったのは蔵王は一日にして解けず。

まぁそりゃそうだ。


というわけで、お家に帰ってパンツ脱ぐまでがツーリングですよと。

日が長いから明るいうちに帰れそう。






本日のルート。走行距離271km。






参考文献

深田久弥「日本百名山」新潮文庫