向井side
「ほら早くねろ」
翔太くんにしては珍しくテキパキ俺の看病をしてくれている。
「ごめん、まさか看病してもらうことになるとは思わんくて」
「風邪か?」
「いやぁ、風邪ひくようなことしとらんけど」
俺に冷えピタを貼って、布団をかけてくれた。
「疲れてんのかもな」
「んー…」
翔太くんが優しくおでこを撫でてくれるから、気持ちよくて眠ってしまいそうになる。
「康二?」
「ん、」
翔太くんの匂いや。
ずっと近くで感じてきた、翔太くんの匂い。
「寝な」
「うん」
好きやで、翔太くん。
ほんまはずっと、そう伝えたかった。
できない夢やけど。
渡辺side
「寝たか」
いつ見ても、子どもの頃と変わらない寝顔だ。
「かわいいな」
思わずそう言って、頬をなぞった。
「ん、」
プルルルル
「俺?」
自分のスマホからは音が鳴っていないので、康二のスマホを探すと、着信が来ていた。
「…ラウール?」
随分、洋な名前だな。
康二を起こしてまで教えることではないと判断して着信を切った。
「んー、」
俺の服の袖を掴んで離さない康二の眉間をギュッと押すと、苦しそうな表情が少し緩んだ。
プルルルル
再びかかってきた電話の主は、変わらず「ラウール」だった。
大切な用件なら康二が困るかもしれない、そう思って俺が代わりに電話に出た。
「あああ!康二くん!?出るの遅いんだけど!!」
俺が言葉を発する暇も与えられず、「ラウール」は話し出した。
「あの、」
「ていうか今日めめとデートしたんでしょ!?どうだった?やっぱり運命の番って感じするの?めめも全然教えてくれないし!」
デート。
運命の番。
「康二くん?聞いてる?」
俺にしがみついている康二を見た。
できればずっと、このままでいたいと思った。
康二を幸せにするのは俺がいいし、俺じゃなきゃいけないと思っていた。
「ねえ、康二くん?」
運命の番なんて、そんなものが本当にあるのか。
「すみません、俺康二じゃないです」
「え」
「康二の幼なじみで、渡辺翔太といいます」
「え、あの、翔太くん?」
「あの?」
「あ、そのー、よく康二くんからお話聞いてたので…すみません、康二くんの話勝手に…」
「詳しく教えてください」
ぎゅっと、康二が俺の袖を握る力が強くなった。
「…どこをですか?」
「運命の番のめめが康二とデートしたって、今言ったこと全部です」
電話の向こう側の「ラウール」は、大きくため息をついた。
「康二くんのプライベートなことです。康二くんが言ってないなら俺は言いませんよ」
ごもっともだ。
「じゃあ、運命の番って、その…」
おとぎ話の中の存在じゃないのか、そんなのは。
「…運命の番は、ありますよ実際に」
「俺も、俺の周りの人もそんなの体験したことある人いません」
「奇跡的なことなんです、運命の番に出会うなんて。本当ならありえないことなんです。渡辺さんや他の方が出会ってなくても、なんら不思議ではありません」
じゃあ、なんで、康二が。
「運命の番って一緒にいた方が、幸せなんじゃないでしたっけ」
昔、よく読み聞かせされた絵本にはそんな描写があった。
運命の番は、2人で支え合って生きていく。お互いの存在が安心材料となる、まさに運命的な相手。そしてそれが幸福である、と。
「…ホルモンなどのバランスから、運命の番同士がそばにいれば、幸福感や安心感に満ちるという報告は上がっています」
「じゃあ、康二は、その人と一緒にいた方が…」
「それは、康二くん次第です。運命の番と一緒にいること自体が幸せかどうかなんて、その人次第なんですから」
それでも、俺といるより…。
「今、康二くんはいないんですか?」
「康二は、今…具合悪くしてて。熱が出てて」
「熱?いつから康二くんと一緒にいますか?」
「…1時間ぐらい前です。誰と出かけてて、その後に」
沈黙が続いたあと「ラウール」は、焦ったように話し始めた。
「ヒートの準備してください。それ、普通の風邪とかじゃないんで、たぶん」
「え?」
「ていうか、甘い匂いします?いつもの康二くんのヒートみたいな」
康二がヒートのときは、もっと強く匂いがする。でも今は、強く他のアルファの匂いが残っていて、康二の匂いはあまりしない。
「他のアルファの匂いが強くて」
「お風呂にいれてあげてもいいです。慣れないフェロモンにあてられて、康二くんも不安になってるかもしれません」
ちらっと康二に目線を移すと、また苦しそうな表情を浮かべていた。
「分かりました」
「あと、申し遅れましたが、俺は康二くんの会社で働いている医者です。間違ったことは言いませんので、信用してください」
「ラウールさん」
「…はい」
「ありがとうございました」
そのまま電話を切り、スマホを離れた場所に置こうとしても、康二に強く握られた袖に引き止められてしまう。
「康二」
「ん、」
「お前には運命の相手がいるんだな」
「んぅ、しょたくん、」
うなされたように何度も俺の名前を呼び続ける康二の瞼からは涙が零れていた。
「う、うぅ、」
更に激しく泣き始めた康二を見ていられなくて、今度は俺が名前を呼んだ。
「康二!康二!」
康二が瞼を開くと、赤らんだ瞳が現れた。
「怖い夢でも見たか?」
ヒートが来た証拠だ。
「しょうたくん、いかないで」
「ずっといるよ側に」
「しょうたくん」
「ん?」
「ちかくにきて」
なにも考えられなくなったように俺に絡みつく。
「うん」
「ちゅー」
そうせがまれて、流れるように唇を重ねた。
「ん、」
「康二」
「あぅ」
康二の体に触れてきたのは、いつも俺だった。
「はぁっ、しょうたく、」
康二を1番愛しているのも、俺だと信じて疑わなかった。
「んん、あ、」
深いキスをしてから、康二の白い頬を手で包んだ。
「しょたくんの、においだいすき」
「康二だけの匂いだからな」
嬉しそうに微笑むと、俺に身を任せた。
康二の全身を優しく愛撫して、快感を逃がさないように与えた。
「あ、」
「きもちいい?」
こくこくと頷く康二の両手首を掴み、勢いよく腰を打ち付けた。
「ひゃぁあ、」
「康二」
そのまま手を繋ぎ、唇を重ねた。
「んは、!」
「康二、」
がくがくと震える康二を抱きしめながら腰を振ると、ゆっくりと背中に腕が回された。
「ん、あ!しょうたくぅん、!」
彼が果ててすぐに、うつ伏せにさせ、腰を上げさせた。
「ん、?しょたくん、」
「こんなんで足りた?」
「え?」
「俺でいっぱいになれた?」
もしかしたら、今日が最後かもしれない。
康二のことを、この腕の中に抱きしめておけるのは。
「…足りひん、!」
「どーする?」
康二の細い腰を掴み、滑らかに撫でる。
「んひ、」
「康二?」
「しょうたくんが足りん」
「うん」
「もっと、もっときて?」
声を震わせながらそう甘える康二の首筋をそっとなぞった。
「あやぁ、!首は、」
俺が、お前の番になれたなら。
「大丈夫、噛まねぇよっ、」
噛みたい。
噛みたくて噛みたくて仕方ない。
こいつのフェロモンに犯されて、ずっと前から頭はおかしくなっているのに。
「しょうたく、」
「でも、」
甘い匂いが俺を誘う。
いつもなら堪えられるのに、今日はもう我慢できそうになかった。
「ごめん」
康二の肩を強く噛んだ。
その肩には歯型が残り、わずかに血が流れていた。
「いた、ぁい」
「ごめん」
「うんん、ええんよ」
肌と肌がぶつかる音が部屋中に響く。
卑猥な水音が耳に届く度に、妖艶な空気がさらに色気づいていく。
「ん、ひっ、しょうたくん、!」
お前には、運命の王子様がいるんだな。
俺なんかじゃダメだったみたいだ。
「あ、はぁ、!しょうたくんぅ」
「好きだよ、康二」
康二の顎を俺の方に向かせ、キスをすると、康二はニコッと笑って瞳を閉じた。
「…俺の宝物」
幸せだったなあ、お前がいる毎日は。
そんな幸せをくれた康二を、俺が幸せにしたかった。でも、俺の役目じゃないみたいだ。
だいすきだよ、康二。
向井side
目を覚ますと、既に体が重かった。
「翔太くん?」
昨日はまた迷惑をかけてしまった。
めめと出かけたからやろうか。
「翔太くん!」
いつもはベッドで一緒に朝を迎えるのに、今日はそばにいない。
翔太くんがいないだけで、凄く不安になる。
「翔太く…あいって、!!」
ベッドから降りて探そうとすると、膝に力が入らんくて、そのまま落っこちてしまった。
「おい!大丈夫か?」
リビングの方から走ってきた翔太くんに起こしてもらって、ベッドに戻された。
「ごめん」
「いいよ、疲れたろ?」
なんで俺に触れないんやろう?
いつもなら頭を撫でてくれるのに。
「翔太くん、どうして」
言い終える前に、翔太くんは俺の言葉を遮った。
「もう会うのは辞めにするか」
聞き間違いだと思った。
「え?なんて?」
「…もう康二には会わない」
頭を鈍器で殴られたような衝撃、なんて人生で使う日が来るとは思わんかった。
「…なんで」
「康二も言ってくれたろ?オメガとは結婚できないんだよ、やっぱり俺は」
「…縁談受けるんや」
「受ける」
やっぱり、そのほうが翔太くんは幸せになれる。
俺が、そう言ったのに。
なんでこんなに悲しいんやろか。
「…そぉっかあ」
泣くな。
泣くな泣くな泣くな泣くな!
「オメガの子どもってことに苦しめられてきたのは翔太くんやもん!これ以上オメガと一緒におっても幸せにはなれんよ。正しい判断やと思う」
泣いたらあかん。
分かってるのに涙がこぼれて止まらん。
止めてや、誰でもええから。
「お前に会うのは今日で最後にする」
淡々と話す翔太くんの目を、今は見れん。
「分かった!」
明るく抑揚を付けることで精一杯や。
「じゃあ、帰るわ」
夏のセミが騒がしく鳴いていて、まるでそれが俺みたいに思えて、また涙が溢れる。
「翔太くん!」
背中を向ける翔太くんに抱きついた。
「康二」
抵抗することなく、俺を受け入れてくれる。
「好き」
そう呟いて、背中を押した。
「ばいばい、翔太くん」
翔太くんが振り返ることはなく、俺の家を出て行った。
「幸せやったなぁ、翔太くんに出会ってからの毎日は」
あんなにずっと一緒におったのに。
翔太くんのことならなんでもわかるのに。
俺が一番、翔太くんを好きなのに!
こんなに一瞬で、他人になってしまうなんて。
「翔太くんが幸せにしてくれたのに!今度は俺が、幸せにしてあげたかったのに、」
どうか、渡辺翔太が世界で一番の幸せ者になりますようにと、願うことしかできん。
だいすきだよ、翔太くん。
深澤side
今日の康二は明らかにおかしい。
誰がどう見ても、だ。
「康二」
「わぁ!ふっかさん、びっくりしたわ」
「昼、行くか?」
「うん、行く!」
態度はいつも通りに見えるように取り繕ってるんだろうけど、それ以前に目が真っ赤に腫れ上がっている。
どう考えても、前日に馬鹿みたいに泣いていないとありえない腫れだ。
「泣いたのか?」
「えぇ?泣いとらんよ〜」
何かを隠すように目を擦って見せた。
「じゃあなんでそんなに赤いの?花粉?」
「うん!花粉!」
「花粉の季節じゃないでしょー」
「季節に惑わされるなんてまだまだやな」
「偉そうだな」
ククッと笑った康二は、いつもより儚げに見えた。
「康二は嘘下手なんだから、無理して嘘つくな」
「…ふっかさん」
「ん?」
「ありがとうな」
いつもなら何があったのかペラペラ勝手に話し出すのに。
「そっか、言えないか」
ぽんぽんと頭を撫でると、康二は目を細めて微笑んだ。
「赤ちゃんみたいやんか!」
「赤ちゃんみたいなもんだもんねぇ康二くーん」
「ちゃうよ!」
少しでも、大切な彼が悲しい思いをしませんように。
「なんかあったら、いつでも言って」
「うん」
「それぐらいしか俺はしてやれないから」
「毎日助かっとるよ」
「1人で泣くな」
「ありがとう」
こくこく頷く康二の背中を摩って、前向きな言葉をかけることしか、今はできなかった。
阿部side
今日の康二は明らかにおかしい。
誰がどう見ても、だ。
「阿部ちゃん」
そう思っていると、深澤さんとのランチから帰ってきた康二に声をかけられた。
「ん?どうした?」
「今日夜暇?」
「暇だよ」
どうやら俺に話したいことがあるみたいだ。
「それなら飲みいかん?」
「いーよいこいこ!」
安心したように笑った康二の目は赤く腫れている。
「ええ!?翔太くんがお見合いする!?」
あらかた翔太くん関係のことだとは検討がついていた。
目黒くんとデートするとも言ってたけど、康二を泣かせるようなことはしないだろう。
「うん」
「だからもう康二には会わないって!?」
「うん」
「そしてそれを康二も止めなかった!?」
「うん」
「なんだそれー!!!!」
俺よりブチ切れているやつが、カウンターの向こうにいた。
「佐久間声でかいって」
「あぁ!だって!そんなのあり!?」
「翔太くんに告白されて、ほんまは嬉しかった。翔太くんとなら番になって幸せになれるんじゃないかってそう、思って」
「うん」
ぽつりぽつり話してくれるのを妨げないように、相槌を打つ。
「いや、ほんまは番になりたかった…!」
「…康二」
「ずっと翔太くんに側におってほしくて、でもそれは…できんことやから」
「できないことって、それはなんで?」
諦めきれない顔してるくせに。
「翔太くんは、ご両親の第2の性が原因で今まで苦しめられてきたから。それに翔太くんのおじいさんもオメガの俺じゃ…」
「それだけ?」
「それだけって…ちっちゃなことみたいに言わんといてや!」
ポロっと涙をこぼした康二はカウンターを拳で叩いた。
「そういう意味じゃないよ、分かってるでしょ康二だって」
「…それはっ」
「康二がオメガだから?翔太くんと番になったら子どもがオメガかもしれないから?翔太くんがアルファと結婚した方が幸せだから?」
康二は乱暴にジョッキに手を動かした。
「…めめ」
そして、静止する前に飲み干し、そう言った。
「めめ?」
「目黒蓮!」
目黒蓮と、なにかあったのか?
「内緒に、しとってな?」
「もちろん」
「運命の番なんやって、俺とめめ」
運命の番!?
「待って、なんて?」
「運命の番」
「は!?」
康二は、何度もこの反応を見てきたかのような表情を浮かべている。
「あるわけないやろって俺も思ったよ。でもそうなんやって」
「まさか…目黒くんに番になるように脅されてたりするわけ!?」
「そんなことないよ、めめはそんなことせん」
いやまあ、そうですよね。
だとしても、運命の番に出会える確率なんて無いに等しいだろうに。
「じゃあ…康二の気持ちが揺れたってこと?」
「…デートして、時間一緒に過ごすほど安心感とか多幸感は増してった。それは間違いないんやけど、やっぱり俺は…翔太くんのことが好きなんよ」
康二の周りには色んな運命が転がっているようだ。
「それなら、康二がすることは1つのはずでしょ?」
「…昨日、熱が出て俺は横になってて」
どうやら昨日の康二の様子を教えてくれるみたいだ。ほろ酔い気味なようで頬も赤く染まっている。
「その間にラウールから電話があったみたいで、でも俺は出てないんよ」
「え?どういうこと?」
「通話履歴にラウールが残ってた。でも俺は出てないから、翔太くんが出たんやと思う」
「それ村上先生に聞いた?」
康二は力なく首を左右に振った。
「今日、ラウールはおらんった。たぶん、俺やと勘違いして、喋っちゃたんじゃないかな」
「…康二と目黒くんが運命の番だってこと?」
「…想像やけどね」
つまり、翔太くんは康二に運命の番がいることを知った…ということ。
「翔太くんは俺に運命の番がいるって分かって俺のこと嫌になったんやと思う」
それは…また変な勘違いをしているような気がしますけど。
「翔太くんはな、俺から他のアルファの匂いするのすごい嫌がんねん」
「確かにアルファは嗅覚も敏感だもんね」
「他のアルファの匂いがしたら俺に近づくの嫌がるし、絶対シャワーせんと隣におってくれん」
康二から他のアルファの匂いがするのが嫌なんだろうけどね。
「それに俺、翔太くん以外のアルファの匂いでヒートになるんやで?」
「それはしょうがないことでしょ?それに今までだってそういうことあったでしょ?」
「それとこれとは話が違うんよ!」
俺がベータだからなのか?
康二が言うことの意味が上手く理解できない。
「抑制剤を飲めば、他のアルファのフェロモン嗅いでもヒートなんか起きんぐらいにコントロールできるようになったんよ、俺も」
「うん」
「せやけど、めめには無理や。めめのフェロモンだけは、ヒートを避けられん。翔太くんのフェロモンは、薬飲めば耐えられるのに!」
好きな人のフェロモンは薬で防ぐことができる。しかし、運命の番のフェロモンにだけは抗えない。
康二の気持ちを配慮し切れなくてごめん。それでも、俺は…!
「康二」
「ん」
「もう1回、ちゃんと翔太くんと話しておいで」
「無理や、もう、嫌われたんや俺は。他のアルファのフェロモン感じて都合良く体求めて、それで俺は…!」
「康二」
赤く腫れた瞼に、赤く火照った頬。
佐久間もおろおろと焦っている。
「俺は違うと思うよ」
「ちゃうって、なにが?」
「翔太くんて、康二のこと大好きで大好きで大好きな人だと思ってた」
康二はムッとした様子で頬を膨らませた。
「翔太くんとずっと一緒におったのは俺やもん!翔太くんのこと分かってるみたいなこと言わんとい…」
そこまで言ってから、恥ずかしくなったように小さくなってしまった。
「ごめん、忘れて。言いすぎた」
「その程度の話し合いで、翔太くんのこと諦めていいわけ?ずーっと側にいたのは康二なのに?」
「…でも!」
「康二がこれ以上傷つくのが嫌だから?」
「…それは」
「康二!」
康二の頬を両手でパチンっと挟んだ。
「後悔するぞ!こんな別れ方したら」
「…阿部ちゃん」
「ちゃんとみんなの想いに答えて、それでちゃんと自分の気持ちも伝えなさいな」
まるで康二のお母さんになった気持ちだ。
「大丈夫、深澤さんも目黒くんも翔太くんも、康二の気持ちをちゃんと聞いてくれる人じゃない?」
「もう…阿部ちゃんー!!!!!」
ガっと俺に抱きついた康二は、急にすぴすぴ言い始めた。
「え!?寝た?」
「ぎゃははは!昨日は寝れなかったんだろうね」
「佐久間も今の話は内緒だよー」
「分かってますー」
しょうがないなぁ。
俺ももう人肌脱いでやるか。
「康二のこと見ててくれる?」
「あれ、阿部ちゃん帰る?」
「うんん、少し電話」
店の外に出て、連絡先から渡辺翔太を探す。
別にこんなこと、俺がしなくてもいいことだ。なのに、少しでも康二の力になればいいなんて思ってしまう。
心底、康二には不思議な力があるね。
to be continued


