ナースチャ「よく、結婚式や披露宴には、涙のお話は縁起が悪いと言われるようね🤔
…でも、幸せな結婚に至るまでの過程には、誰しも、涙を流すことが一度ならずあるわ
その思い出話や、その時に列席者の方々に支えて頂いた時のお話を、結婚の時にしなくて他にいつするの?と思うのよ。こんなにして皆さんに一同に集まって頂ける時が、婚礼セレモニーの日以外に、そうそうあるとでもいうのかしら
…というわけで皆さん、私たちの結婚披露パーティでは、涙のお話を大いにして下さいな
私たちは今、幸せいっぱいで、煩わしい迷信など、一切気には致しませんから
私もラークさんも数々の涙を乗り越え、皆様に支えて頂いたお陰で、今日の晴れの日をお迎え出来たのですもの」
ラーク「そうです。僕らの涙の時、悲しみの時に、力になって下さった皆様がいなくては、今日この日、幸せな僕たちはいません。
涙の思い出を語り、お力添え頂いたことへの感謝を述べるなら、今をおいて他にいつがあるのでしょう
僕たちの結婚披露宴に、制約や、禁忌の話題は全くありませんので、皆さん、どうか堅くならずに、どんどんお話をなさって下さい」
・・・
ポムちゃん🍎🍏「ナースチャが幸せになれて、ポム、とても嬉しいよ。
君のおうち、本当に色々あったんだものね
」
ナースチャ「そうだったわね…
パパもママもそう言っていたわ。ナースチャの婚礼の晴れ姿を、どうしても、生きて見たかった。
…もう、それが見られただけで、私達は幸せで、胸が痛いほどだって」
ナースチャのモデルにした、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。
史実では、ロマノフ一家は一時生存説もあったアナスタシア含め、ロシア革命で全員惨殺されてしまいます。彼女の享年は17歳。
ですがYuniのハンドメイド劇場では、一族全員が亡命に成功し、王位は失ったが海外で幸せに暮らしている…という前提で書いています。
ナースチャ「ええ…聞いて!アリョーシャは今、ルポライターとして、世界中飛び回って大活躍してるんですって📷
…信じられて?あの子がよ」
トチーちゃん「まあっ、本当なの?
でも、アレクセイさんには確か、絶対に怪我をしてはいけない持病があったわね…😟」
ナースチャ「そうなのよ。あの子、遺伝性の病気で、うっかり怪我すると出血が止まらなくなってしまうの。それは残念ながら、今の医学でも治すことは出来ないようね
でも今は治療法も大きく進んだし、そういう人でもちゃんと外に出て働ける時代になったのよ。世の中、本当に変わったわ…
ママ、心配で心配でハラハラし通しらしいけど、アリョーシャは平気よ
…僕だって、王位継承権を棄てて、大変な思いを経て生き抜いてきたんだから、これからの人生、自分の為に自分が好きなことをして生きるんだ、じゃないと、折角ここまで僕を生かしてくれた運命の神様に、申し訳ないでしょ。…って、とてもはりきってるわ…私は、彼を応援したいわね」
アレクセイ・ニコラエヴィチ。アナスタシアの弟。享年13歳。
第一王位継承者で、いずれニコライ3世に即位するはずだった彼は、母方のハプスブルグ家の男児に呪いのように伝わる遺伝性の血友病の為、外で自由に遊ぶことすらままなりませんでした。
両親は息子の病気を隠そうとしました。神に最も近き位にある王(王位継承者)に肉体的欠陥があるなど、国民に知られてはならないことだったからです。キリスト教がベースの国々では、王は神から特別の祝福を受けている存在ゆえ「完全無欠」を求められていました。
両親は息子の病を治そうと足掻き、怪しげな僧の力を借り、それがロマノフ一家を大悲劇に追いやる遠因となりました(他にも日露戦争での敗北とか、西洋の革命大流行の時代がらとか、原因は諸々)。
今だったら、普通に病気を堂々公表して適切な治療を受け、世間の理解に支えられ、大人になれば、普通にお仕事も出来たかもしれないのに…
トチーちゃん「そうだったのね…
ナースチャの三人のお姉様たちも、とてもお綺麗になられて、お幸せそうでしたわね
オリガさん、タチアナさん、マリアさん…
元は皆さん、ナースチャと同じで、王女様と呼ばれるご身分だったのでしょうけれど…」
左から、タチアナ、アナスタシア、アレクセイ、マリア、オリガ。
愛称(日本で言う「○○ちゃん」のようなもの)がそれぞれ、ターニチカ、ナースチャ、アリョーシャ、マリョーシカ、オーレチカ。
恐らく身内同士では、親しくそう呼び合っていたことでしょう。
オリガ姉様には、可愛い赤ちゃんも授かったのよ。パパやママにとっては、初孫ね。そしてオーレチカの赤ちゃんは、本当に有難いことに、アリョーシャと同じ遺伝病は引き継がなかったの。ママは何よりもホッとしたと言ってたわ
二人とも、素晴らしい旦那様と家庭に恵まれて、今が幸せだから、パパが王位を失ったことは、全く苦になっていないし、私たち自身はかえって良かったと思ってるわと、笑顔で話し合ってたわ
意外なことに、私たち四人姉妹中で一番美人で賢くて、社交界の華だった二番目のターニチカだけが、まだ結婚していないの
でも、タチアナ姉様は大学を卒業されて、高校で教鞭をとっているのよ。…今は結婚とか恋愛とか、考える気も無いわねって」
ポムちゃん🍎🍏「うーん。でも、ターニチカなら、良い先生になれそうだものねえ」
トチーちゃん「そうね、こんなお綺麗で上品な先生がいらしたら、私なら、同じ女性でも憧れてしまうわ…」
ナースチャ「そうなのよ、賢くてお優しいタチアナ姉様は、ご自身の生徒さんたちから、とても慕われているみたい
…でもね、実は昔私は、彼女とは気が合わなかったのよ。もう一人のママのようなオーレチカや、私と歳が近くて、喧嘩やいたずらも一緒にしていたマリョーシカに比べると、ターニチカは非の打ちどころのない姉で、近づきがたい感じがしていたのそれに私、才色兼備のターニチカの傍にいると、何かにつけ周りから比較されてしまって、劣等感を感じずにいられなかったし…
でも、今は同じくお仕事を持って働いているということで、タチアナ姉様と、とてもお話が合うようになったわ
ターニチカは、海外留学についてのことや、今のファッション業界の話を、熱心に私に訊いてきたわ。…私の教え子たちの中に、ナースチャと同じ進路を目指そうとする子がいるかもしれないから、幅広く知識を得ておきたいのよって、仰ってた。
…やっぱりカッコいいわ、タチアナ姉様」
・・・
お雛様「『雨降りて 固まりし地に 根を下ろす まことの花よ 永久に幸あれ』
…ジューン・ブライドの意味が解りましたぞ。…何故、遠つ国では、天が曇り長雨続く折に殿御と結ばれる嫁御が、幸福を掴むと言わるるのか、疑問であったのじゃ🤔
お内裏様「さなり。
涙雨に打たれ、大地の緩みしことがあったのであれば、殊更、空晴れ澄み渡りし後の太陽と虹とが、そなたらの幸と繁栄を、より堅固なるものにしてくれよう🌈」
ラークさん「お内裏様、お雛様、有難うございます。
・・・
ナースチャ「ああ、可愛い紋白、私が一人ぼっちだった時からの、私の大切な大切なお友達
ナースチャ「あなたがあの時、絶望した私を引き留めてくれなかったら、ラークさんと幸せな今日を迎える私は、ここにいないわ。これからも私の親友でいてちょうだい、紋白
・・・
おばあさん「アナスタシアさん、私ね、あなたのような人が息子の奥様になって下さって、夢のような気持ちよ。
でもね、最初にあなたを一目見た時から、私、そうなる予感がしていたのよ。
おばあさん「私のことは、無理にお義母様と呼ぶ必要はないわ、アナスタシアさん
…アナスタシアさん、ラークを幸せにして下さって、本当に有難う。
父親である私の夫が死んで、P市から戻って農場を継いで以来、ずっと暗い顔で黙り込んでいたラークは、あなたに出逢ってから、みるみる明るさを取り戻していったわ
ラークは気難しくて頑固な一面もあるのだけれど、間違いなく、あなたを一生大事にするわ。
ラークに瓜二つだった私の亡き夫も、天国からあなた方二人を見て、喜んでいるでしょう。…ラークは、またとない素晴らしい女性を伴侶に選んだと
」
・・・
バミューダー「ああ、君たちが幸せになって、本当に嬉しいよ
あんたが何も知らずに『ジゼル』の衣装を着てきて、ラークにショックを与えたあの日、あんたがあれだけの真実を聞かされて、受け止めることが出来るかどうか、あたしは説明しながら心配でならなかった。
でもあんたは、嫉妬も躊躇いも全部捨てて、真っ直ぐラークを追いかけてった。ソニアのいたP市からもバレエ学校からも、逃げずに自分から向き合い、亡きソニアの縁を通じて、あのはねっかえりのバルバラの友情まで掴み取った。
愛する人の元カノとの過去を受け止めるだけだって、嫉妬で苦しい時もあったろうに、そこまで出来るって並大抵のことじゃないよ。女って、愛する人が出来るとここまで強くなれるんだって、あんたを見てて思ったわ。
バミューダー「君たち二人のことは、ソニア嬢も天国から祝福してくれてるはずだ。
ラーク「幽子先輩、バミューダーさん。
僕が苦痛のどん底にいる時にも、変わらず支えて下さり、お二人には感謝しています
ロビンちゃん「そして、僕たちを育ててくれて有難う
」
ナースチャ「そうだったわ。
あの時私、クックちゃんとロビンちゃんのことで、ラークさんに食って掛かって…
」
ラーク「そ、そんなものだったのか
…端から見た僕らの喧嘩って
」
・・・
マレットちゃん「アナスタシアお姉様、本当に素敵ですっ
私がもしあなたと同じ年齢だったら、自分があなたのような可愛い女の子だったらどんなに良いだろうと、羨ましく思ったかもしれないの
」
マレットちゃん「ええ?…アナスタシアお姉様が?
ナースチャ「嘘じゃないわ。私はあなたの気持ちが、よく解るのよ
今は解らなくても、そのうち、私が言う意味が解るはず。…どうか、自分に自信を持ってちょうだいね
」
ナースチャ「有難う、ユールニッセちゃんたち。
…あなたがた全員、サンタさんの正式なお弟子として、無事合格出来たのですって?
」
今年のクリスマスには、私たちの後輩がここへ来るわ。…どうか、その子たちをまた宜しくお願いします
」
・・・
さつき君「アナスタシア殿。ラーク殿との晴れてのご成婚、まこと、おめでたきことでござる
」
…あなたは、私にとてもよく似ているわ。トチーちゃんのことでは、辛く思うこともあるかもしれないわね。
トチーちゃんも、自分自身に素直になれない、頑ななところがあるから
」
さつき君「………」
ナースチャ「一人で悩んで、思いが抱え切れなくなった時には、いつでも相談してきてちょうだい
さつき君「かたじけのうござる
」
・・・
・・・
トチーちゃん「本当に、色んなことがあったわねえ。感無量だわ。
昨日のことのように覚えていてよ。初めてナースチャが、ここへ来た日…
」
ポムちゃん🍎🍏「最初は、お洋服のお話しかしない子でね…
」
幽子「クックちゃんとロビンちゃんがここに来たのを機に、ラークがこの家に初めてやって来たんだっけ🤔」
ラーク「…はい。
ただ、その時は初対面のナースチャと、意見対立してしまって、大喧嘩でした…
」
クックちゃん「そうだったんだってねっ。
…僕ら、ナースチャとラークさんが喧嘩してたのなんか、全然気づいてなかったよ
」
幽子「あたしもその縁で、ポムちゃんたちの家を知ったんだったな
」
ラーク「いや、あれは、幽子先輩の現れ方が悪いんですよ…
」
幽子「最近、みんなあたしを怖がらなくなっちまって、ちょっと寂しいよ
」
アナスタシアさんが助けてくれなかったら、ラークはどうなっていたか
」
ナースチャ「ソニアさんは…私がラークさんと結婚することを、許して下さったかしら…
」
幽子「うん。
…バルバラも、ソニアのご両親も、リュシエンヌ先生たちも、そう言ってくれてただろ?
」
ナースチャ「ええ、でも、未だにこれで良かったのかしらって…
バミューダー「そんな心配、要らないよ。
幽子「ソニアは、自分はラークを幸せに出来なかったと、知ってるよ。
取り返しの付かない後悔の中で、ソニアはあんたに、ラークを幸せにしてやってほしいと、言い置いてったんだよ
」
トチーちゃん「幽子さんから、ラークさんの過去を伺って、何も知らないナースチャが、バレエ衣装をサプライズで作り始めていた時の、心の重さ…
今思い出しても、胸が塞がって苦しくなりますわ
」
ナースチャ「………
」
ポムちゃん🍎🍏「ナースチャ…
」
ナースチャ「…今も、あの時のことを思う度、涙が止まらないの。
ラークさんが私に背を向けてしまった時、私、心が真っ二つに張り裂けてしまいそうだったわ
トチーちゃん「でも、ナースチャは本当に強くなったわね!
・・・・・
※ポムちゃんハンドメイド劇場、字数制限上「これまでのお話」「登場人物&設定」を載せられない記事があります。別記事からまとめをお読み下さると幸いです。