これから書くのは、今から二十年以上も昔の、それも短期労働者の話です。

読む方は、鵜呑みにはしないで、あくまで「現在」を見て、内容をご判断下さいね。

 

時は平成大不況。

新卒で就いた会社が、超絶ブラックで(あの頃「ブラック企業」なんて言葉もありませんでしたね)耐えきれずに自主退職してしまったあと、短期間で、欧州外資と日系企業を激しく行き来した時代がありました。

(その後、鬱になり、保育士資格を取って保育士になったのは、その後です)

マスコミの報道とかだと、未だに

日系企業はぁ、こんな待遇悪くって~ぇ

欧州外資様ではぁ、それに比べて、こんな良くって~ぇ 

ハァ~ チョイナチョ~イナ~♫

みたいなお決まり欧米出羽守・日本尾張守さんオンパレードな特集を、時々拝見しますけど、

 

その時代の感想を、私に言わせてもらえば、日系と欧州外資、それぞれ一長一短ありです

欧州外資がひとえに良いとは、私は思わなかった。

その時の話を、ちょっと書いとこうかなと思います。…当然、主観的な単純比較ですけど。

まず日系企業ですけど、此方は短期で働いてて、自分のすべき仕事を覚えることに集中したいのに、○○課長だの△×係長などの肩書きを覚えさせられるのは、クッソ時間と労力の無駄だと思いましたね。

呼ぶ時、肩書を間違えて、上司の逆鱗に触れないかどうかにまで、チマチマ気を使わなきゃいけないとか、ホント、バカでしかない。

(勘違いしないで頂きたいんですが、欧州外資にだって、社内での地位や肩書自体は歴然とありますよ。呼ぶ時につけないだけ)

 

特に私の場合、一日に何十部門も回らされ、それが仕事なのに、いちいち何十人もの「何とか長」の肩書きなんか覚えてられるか、ばーか。って思ってました。

「○○部長、○○の件ですが…」と、ちょっと用あって声をかけようとする度に、それが部長だったか課長だったかと焦り、言い淀んでいるうちに、数秒の遅れが出ます。下手したら、それ必死で思い出してる間に、伝えなくてはと思っていた肝心の内容を忘れてしまう。(その内容だって、研修も何も無しにインスタントで身に付けさせられた仕事のものなのにさあ)

効率を上げる事を考えてるんなら、こんなもん、今すぐ廃止した方がいい。

こういう、くだらないけどやめられない、無数の無駄が積み重なって、ヘドロかヤニみたいに日系企業のあらゆる歯車に絡みつき、回転能率を下げまくっている…ってのは、その表面を見ただけでも、容易に想像できる。

 

欧州外資はその点、全部シンプルに「○○さん」で統一。

そっちに入ったら、何で今まであんな無駄な事にエネルギー使ってたんだろうと、マジで呆れた。

ガチで何のためですかね。あれ。 

 

あと、こっちは時間給で働いてるのに、飲み会だの親睦会だの、やたら誘われることにも、辟易しました。

そういう馴れ合いは、それに参加しないと出世やボーナス支給額に差し障る正社員同志だけでやってくれよ。一回の飲み会で数千円、つまり時間給の数時間分が吹っ飛ぶんだよ。

特にそこが、後に働いた日系のどこより古い体質の会社だったこともあり、そういう席でのセクハラも多くて、正直これにはかなりヒイてました。

 

今、エロ漫画やエロアニメ(それも臍出しとか乳揺れとかミニスカの影とか、笑えるほどしょうもないもの)が「性犯罪と地続き」とか言われて、共産党や社民党やヒスフェミの格好のサンドバックになってるけど、アニオタなんかより、少しモテる系チャラ男が酔っ払って理性トんでる時の方が、遥かに具体的にヤベエや。

性犯罪者=モテないオタクって一般通念も、嘘八百。

腹が痛えっつってんのに、目薬持ってくんな。しかも、何ひとつ悪いことしてないオタクやクリエイターを殴り倒して、恩着せがましく目薬持って来られても、その薬、腹痛には微塵も効かねえし、嬉しくもねえから。

…っていう私の価値観も、その時に培われたものです。

 

更にこの時代「短期労働者でも、そういう親睦会などの行事にちゃんと参加していれば、正社員に登用されないようなこともないかもしれない」みたいな、絵に描いた餅を、ガチで生きるか死ぬかの短期労働者の眼前に平然とぶら下げる企業もあり、まさにこの時代の短期労働者は、今思えばマジで経営者に都合のいい傀儡で、奴隷でした。

…この状況は今、どうなんでしょうね。変わってるといいなと思いますけど。

 

だったらどう考えても、欧州外資の方がいいじゃないかって?

そんなことはなかったですね。はい。

 

欧州外資は、突然ある日、本社から見たことないオッサンが来て「あの新しい子、要らないよね」って感じで、ものの数秒で首になりました。

切る時は、何の躊躇もなく、それまで一面識もなかった人間が来て、…あ、この部門のここが無駄だからカットしよう、とバッサリ切り捨てます。

 

日頃の働きを見ていて使えないと判断したとか、そんなの一切なし。

社全体の動きを見て、その部分が余剰だと思ったら、野菜のように包丁で首を落とす。

「リストラ」が、欧米から経団連の奴隷商が、大経営者優位社会を作るために持ち込んできた有害外来種なんだってことが、よぉーく解りました。

 

こんな命綱なしの綱渡りみたいな環境下にいると、必然的にそうなるのか、男女とも、言動がサイコパスみたいな社員も多くいて、欧州外資は怖かったです。

これは、日系企業にはちょっと見られない人たちでした(当たり前ですけど、人間的で優しい方々も沢山いましたよ。外資系にも日系にも)。

 

日系には、小狡い人や尊大な人、脳溢血一歩手前かってほど怒鳴り散らす人、無神経(というか愚鈍)な人はいたけど、こっちの心に冷水を浴びせかけるようなサイコパスはいなかった。


スイス外資系勤めだった父が、パワハラって言葉もまだない時代、ある社で、スイス人のボスに嫌がらせでデスクを取り上げられ、半年間、草むしりのみをさせられたり、女子社員たちがセクハラを受けたりして、日本人社員全員でボスを相手取って、所謂パワハラ訴訟を起こし、勝ったことがありました。

いじめが酷かった一時期、父は鬱状態になり、自殺まで考えたが、帰宅し子供たちの寝顔を見たら出来なかったと、後に話していました。

…ああ、一歩間違えれば、確かにそういうことも起こり得る環境かもしれない、と思いました。


私のいた欧州外資では、欧州本土から来た欧州人のボスの方が、とても親切で優しかったのですが、もしかしたらこの方、異国に来て、こんな環境で、寂しいんじゃないかなぁ…と思ったくらい。

…まあ、もしかしたら、その方の報告によって、私が「要らない」と判断されたのか、今となってはよく解らないんですけど。
そんなことを疑いたくなるほど、ちょっと欧州外資の非人間的で無機質な冷酷さには、それはそれでドン引きしました。


…テレビに映ってた外資系企業ではそんなことなかったって?

仕事の合間に皆で自由にコーヒーを飲みつつ、和気藹々と知的に談笑したりしてたって?

そういうパラダイスな外資数社だけをチョイスし、パラダイス場面のみを編集して映してれば、日系企業だってパラダイスでしょうよwニヤリ

(私が見たところ、寧ろこの光景は日系企業でこそよく見かけました。部所が社長室とは別棟にある、たまたま繁忙期ではないなど、決まった条件を満たした部門に限りなのですが。

所謂出世街道からは外れた部門かもしれませんが、心に余裕があって、みんな親切で、楽しそうに茶菓をつまみ談笑しながらお仕事されてる、別世界の方々を見て、心底、羨ましかったです。

短期労働者は、激務部門に即席つっかい棒としてあてがわれる存在なので、そういうゆとりある部門からお声がかかる可能性は、まずありません。

短期労働者にとっては、暇は恐怖です。激務だった仕事に余裕が出来始めた時イコール、首の心配をすべき時なのです)

 

欧州外資では、パーティション一枚隔てて隣のブースで働いている技術者同士が、10年間働いていて「名前も知らない、一度も口きいたことがない」

多分、半径1m以内の至近距離で10年働いてた人の葬式が、明日営まれたとしても、彼らはお互い気付かないし、判っても関心を持たないでしょう。

何かそれはそれで、物凄く気持ち悪いと思いました。セクハラに汚染された日系企業の飲み会が、突然、懐かしく感じたくらい。

「ここで仕事してて、ちゃんと口きいたの、君が初めてだよ。…俺、辞めようと思ってるよ」って言ってた若い技術者さんも。

「日系は日系で、飲み会とか社員旅行とか、つまらない慣れ合いに付き合わされますよ」と言ったら「いいなあ、って言ったら君に申し訳ないけど、何処だってここよりはマシだと思うよ。…ここのモグラ穴みたいな環境よりは」と。

私が首になったと聞いた時には、彼は大いに驚き「残念だ。君が来てくれて、社風が変わってくれたらと思ったんだけどなあ」とがっかりしたように言いました。…つまりそれほど、話しかけてくる人間がないってこと。

 

「日系企業だと例えば、子供が熱を出したとか、自分が体調が悪くなって入院した、妊娠したとかいう時に休んでも、周りはブツブツ言いながらも、代わりに仕事をやっておいてくれる。

だが外資系では、気軽に休めるし、飲み会などの馴れ合いもない代わりに、休めば休んだ分だけの仕事が、手つかずにボーンとデスクに山積みになってるだけ。誰一人、手伝ってくれる者はない。

また、迂闊に休むと、そのデスクもいきなり無くなっていたりする。休みが自由に取れるとは言っても、そういう裏もあっての話」と話していた事務職の人もいました。

 

日系企業でも、口が上手くて世渡り上手な人(飲み会とかで盛り上げられる人)ばかりが出世してしまうんで、同じ部門にいたシステムに強い正社員さんは「やめようかな、ここにいても未来が見えてこない」って言ってましたっけ。

…いや、短期労働者の私にそれ言われても。私から見たら、首が繋がってるだけ、未来ですよ。

ご不満なのは痛いほど解りますが(見てたから解るんだけど、システム関連じゃない一般の日系企業で、システムに優れてる人って、不利なんですよ。機械音痴の爺さまばかりの上役に、彼らの能力を正当に評価できる人たちがいない。必然的に、たとえ馬鹿で無能でも、上司を上手く太鼓持ちできる人、酒好きで上司主催の飲み会によく参加し、カラオケやゴルフが上手い人などに、昇進の軍配が上がってしまう。

私の夫もなのですが、システムに強い人は、理系脳で自己主張が不得手で、必要以上の美辞麗句を嫌う物静かな人が多いので「頭は良いかもしれないが、人の上に立つ器じゃない」と思われがち)下手すりゃこの時代、私みたいな流れ者になりますから、辞める時は、よくよく先のことを考えてからにした方がいいですよ。

…って、そっちにはそっちで、一応言いましたけどね。


私は辛抱礼賛タイプじゃないですが、両方見比べたわけでもないのに、外資の不安定さを無視して「日本なんかもう終ワリダヨ~。パラダイスな海外に出チャイナヨ~」みたいな事を他人様に焚き付ける無責任な奴ら、大っ嫌い。

日系企業には融通の利かぬ鬱陶しい部分もありますが、同時に人情味もあり、理不尽さえ我慢すれば、安定はしているのです。欧州外資みたく、いつギロチンの刃が我が首に振り下ろされるか判らない恐怖感はない。

 

日系でも欧州外資でも、辞めたいって言ってた社員の方々、皆さん、私より年上でしたので、バブル崩壊後の枯渇した就職状況、知らないんだなぁ…とも思いました。

ただどちらも若く、実力のある人たちだったので、その後、本当に職場を変えたかもしれません。

 

…いや、でも、欧州外資も、一年に一回くらいは、社員同士で集まって、ちょっとした茶話会とか、軽い交流会かミーティングくらいは、やったら?って思いました。

…一匹狼同士、どんな会話を交わすのか、想像できませんけど。

 

短期労働した程度で、何を知ったような気になって…って仰る方々もおられるかもしれませんけど

日本の常識である「一社の勤続年数が長ければ長いほどエラい、また長くいればいるほど、その社の本質がよく見えているはず」っていうのも、ある国々から見たら非常識なので、

あくまで短期で見比べただけの経験と印象を、堂々語らせて頂きました。

 

その短期労働者として見ただけの印象を語らせてもらいますと、

欧州外資と日系企業、マジで一長一短で、こっちよりこっちがいいということは私には決められません。


これからの社会は、どっちの方がどっちより優れている劣っているではなく、互いのいいとこどりをしたらどうかと思うんですけどね。