昔々のお話です。

 

ある一組の男女が

ごく数人の身内だけを招いて

ささやかなささやかな

結婚式を挙げました。

 

小さな小さな教会で。

 

二人とも

この上ないほど不器用で

この上ないほど愚かで

この上ないほどか弱く

この上ないほど頼りなく

この上ないほど貧乏で

 

この上ないほど

オドオドとしていて

不安で一杯でした。

 

夫には、妻を支えられるほどの

収入はありませんでした。

妻には、夫についてゆけるほどの

心身の健康すら、ありませんでした。

 

…自分なんかが、本当に

幸せになんて、なれるものなのだろうか?

二人とも、お互いにそう思っていました。

 

この先
大丈夫なんだろうか、この二人は?
列席した、ごく数人の彼らの親きょうだいは、そう思いました。
彼らの友人たちは
もっと心配してたと思います。
 
その二人が
小鳥が枝に巣をかけるように
今にも切れそうな
細い細い糸を紡ぎ続けて…
 
今度のクリスマスで
20年目になります。