乱射凶器の銃、購入手続きは
数十分「書類そろっていた」
米バージニア工科大学で銃乱射事件を起こして自殺した韓国人学生
チョ・スンヒ容疑者(23)は、犯行の約1か月前に同大の隣町で、
凶器となった2丁の銃のうち1丁を1時間足らずの手続きで買っていたことが
分かった。
販売店の店主は18日、同容疑者の購入時の態度や手続きには何の
問題もなかったと語った。
バージニア工科大から車で約40分。バージニア州ロアノークの銃器店
「ロアノーク小火器」の店主ジョン・マーケルさん(58)は、チョ容疑者に
ついて、「運転免許証、小切手帳、移民帰化局のカードと、必要な書類は
そろっていた。精神面で問題があるとの申告もなかった」と振り返った。
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(4月20日付 読売新聞による)
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今回のこの事件については、世界中のメディアが大きく取り上げているようです。
各メディアともに、当初は加害者の精神異常性や事件のインパクトにフォーカスして
報道していましたが、次第に事件の背景にある「アメリカ社会の闇や矛盾」の部分が見えて
きた気がします。
ちょっとここで取り上げてみましょう。
アメリカの連邦法では、免許を持つ銃取扱業者が、販売前に顧客の経歴調査を行うことが
義務づけられています。
犯罪経歴を持つ人、麻薬中毒患者、家庭内暴力の常習者、精神病患者などは銃を購入
できません・・・とされています。
さて。
チョ容疑者は地元の精神科への通院歴があったことが明らかになりました。
ところが購入時にそれを「自己申告」しなかったため、その事実を販売側の店主が知ることは
ありませんでした。
また、現在も精神科に通っている「現在進行形の患者」ではないため、
連邦法が言うところの「精神病患者」には、表面上は引っかかりません。
店主側も必要な手続きをすべてこなしているため、表面上の落ち度は何もありませんから
店主の調査能力を争点にするのは難しそうです。
ここで注目して頂きたいのは、「銃を購入する際の個人情報が、申告制だった」ということです。
アメリカは「権利の自由」を高らかに謳う国。 個人情報も「申告制」に基づくのでしょう。
残念ですが、たとえそれが凶器になり得る「銃」を購入する場合でも、なのでしょう。
Grace自身、「プライベートなことについては『申告制』で」という考え方は嫌いではありません。
誰しも、人には言いたくないことの1つや2つは持っています。
ですが、「精神病患者への販売」を禁止することを法で謳っているのなら
「現在は『患者』ではなくても、『通院歴』の有無の確認方法や、退院した時期から
どの程度経過したら販売するのかなどのガイドラインも、ある程度は法で謳っても
良かったのでは?と思うのです。
CNNテレビでは、チョ容疑者は女子学生へのストーカー事件や自殺願望が判明した
2005年にバージニア司法機関によって危険性を伴う心理的な疾患と判断され、
地元施設で治療を受けていた、と報じています。
たったの2年前に、地元の司法機関が「危険性を伴う」種類の心の病だと
指摘していたのですよ!?
司法機関(しかも地元)が絡んでいたのなら、販売前にそれなりの調査を行うことは
難しくなかったはず。
私たちがクレジットカードに新規申請する際、誕生日から住所など、
さまざまな個人情報を提供します。 まさに「自己申告」ですよね。
カード会社はその申告内容を元に「高利貸し業者からの借り入れ履歴」「返済能力」などを調べ、
それを全てパスした人に対して、カードを渡します。
つまり、「この申請者はお金を大切に扱える人なのか、それともお金を返さない(=お金を奪う)
可能性のある人なのか」をきちんと調査したうえで、渡しているのです。
そしてこれは、法に保護された状態で行われています。
同じように、「この購入申請者は人の命を大切に扱える人なのか、それとも人の命を
奪う可能性のある人なのか」を銃販売業者が十分に調査できる権利を法の下で与えたり、
もしくは法で義務付けることなども含めて、銃販売のあり方については
今後も引き続きアメリカ政府や社会で、十分に議論して頂きたいと思います。