うぶげ幼い頃の写真は山ほどあるし、大人になってからのスナップやポートレートもある。でも、うぶげまでしっかり写っていて、髪の一本一本まつ毛や毛穴まで見分けられるような、そんなポートレートは一枚しかない。癖のある生え際の愛しさ。見慣れた鼻の形の触れたさ。安心したような寝顔。それは、最期の日の次の朝のポートレートだ。愛しいのに届かない。すぐそこにあるのに触れない。そんなあの子だ。