春に爛れてさくらも漫ろ 3 | 光と風の中の防波堤で …






花紀行


作詞: 荒井由美
作曲: 荒井由美
 歌 : 松任谷由実



見知らぬ町を ひとり歩いたら
風は空から 花びら散らす
過ぎゆく春の 投げる口づけは
髪に両手に はらはら停まる

この場所で嵐見送れば
時の流れに 埋ずもれてしまう

薄紅が なんて優しいの
拾い集める人もいないのに

見知らぬ町を ひとり歩いたら
風は空から 花びら散らす
髪に両手に はらはら停まる



Released in 1975
From The Album  『 COBALT HOUR 』








春惜月 日曜 午後の昼下がり



つめたい冬とあたたかな春の日を
行きつ戻りつしていた春の妖精も


沈丁花の甘くやさしい香りに誘われ
嬉しそうにワルツを踊っています


もう … つめたい冬へは戻らないでね



















うららかな春の日にcamera散歩な僕は


祇園さんの裏手から町へと下る坂道に向かいます



さてと どこにいこうか …



行き先をぼんやり考えていると


どこからか香ってきた
ほのかな甘い香りが
僕の唇にしっとり艶めかしくふれてきました



そうして僕は



















沈香と丁子の香を併せ持つ花という意の
沈丁花の芳香のする坂に向かって


色香を放つまだ見ぬ乙女の姿を求め


道に落ちた陽ざしの影に重なりながら
春の足音に歩調をあわせ歩いてゆきます


 











 






ツツジに似たその花は風に揺蕩い


はかなげな花びらを透かせ風に光っていました














 




オオイヌノフグリと並び
春に咲くいと小さき乙女 ホトケノザ


花を仏に、葉を座に見立てているんですよね


僕は小さなちいさな仏様に手をあわせ
どこかへと続く砂利道をとことこと …





 








 



きみがこんなに美しく咲いているということを
たぶん知っているのは僕だけなんだろうな


誰もが目を奪われる桜花の大海よりもむしろ …


人目にふれることのない野辺の片隅にひっそりと咲く


たおやかな一輪の花を僕は見つめていたい





んっ … ?

















 

きみはいつからそこに … ?


風にそよぐ枝葉の先で
春の陽ざしと戯れていた夏のぬけがら


ゆらゆら揺れてなんだかとても嬉しそう


きっときみも会えるのを楽しみにしているんだよね



だって見上げた先には …


















 

去年(こぞ)の春、逢へりし君に、恋ひにてし、桜の花は、迎へけらしも
















 

さてと


いきますか














 





もう少しかわいらしい名前ならいいのにって
いつも思ってしまうボケの花


でも学名の chaenomeles speciosa の speciosa は
“ 美しい ” “ 華やか ” って意味なんですね


僕が名前をつけるなら …








毎年見たいみたいと思ってて
なかなか見ることの叶わなかった白衣の天女


麗しき“ 蓮 ” を名に与えられしきみの名は …


















白木蓮( はくもくれん )









 










 
花言葉 “ 慈悲 ”











 


 







4日ほどで身を終やす儚い命 …


僕が見上げてるそばでも


まるで死斑のような傷んだ花びらを
ぽとりぽとりと足もとに落としていました



横たわる朽ちた花びらをそっと手に取ると
水分を多く含んだ肉厚の躰が震えているようで …


泣いているような花びらの音は
のたりのたり流るる霞みがかった春の空へ



そうして僕は


cameraのファインダーの向こうの
いまそこにある命を留めようとするかのように


幾枚も幾枚も切り撮っていくのです









camera散歩から帰宅したのは



子どもたちが午後のおやつに狂喜乱舞してるころ


庭では咲きほこる花のそばで
母がロイヤルミルクティー色の子と
日向ぼっこをしていました



いい写真は撮れた? … と母



たわわなクリスマスローズにレンズを向けながら 



晩ご飯 何か作ろうか?… と息子



何でもいいよと答える母に
それが一番困るんだけどと思いながら
あれこれとレシピを考えます


さてと 買出しにいきますか





門扉を開けながらふと庭のほうを振り返ると



















 
母の手にはやさしく手折られた
匂いスミレがありました




そうして僕は


食後に何か甘い香りのハーブティーでも


入れようかなと思うのでした








見知らぬ町を ひとり歩いたら

風は空から 花びら散らす

髪に両手に はらはら停まる










 








「 春に爛れてさくらも漫ろ 」








~ f i n