「福島原発の沖合いを全員で遠泳するってのはどうですか?」


今朝の閣僚会議で、菅官房長官はこう提案した。議題は「福島原発の汚染水問題に関するパフォーマンス」について、である。揃いも揃って眠そうな顔ばかりが並ぶ中、菅官房長官だけは真面目である。

事の発端は安倍首相の「0.3平方キロメートル以内の港湾内に完全にブロックされている」発言である。アルゼンチンくんだりまで出かけて大見得切ったのに、毎日毎日、汚染水漏れの胡散臭い報道が続く。NHKも民放も、黙ってオリンピックだけやってりゃいいのに、相変わらずまた漏れただの、海に流れただの、放射線量がハンパないだの、うるさくて仕方ない。ほとほとうんざりした安倍首相が閣僚を朝っぱらから呼び出して、何かいいパフォーマンスはないか、と訊ねたところ、出てきたアイデアがこれひとつであったというわけである。


「泳ぐって、原発の沖を?正気?」


思わず菅官房長官の顔をまじまじと見てしまった安倍首相。間近で見ると、実に平べったい。


「そうです。閣僚全員、赤フンでも締めて泳ぎましょう!」


これは明らかに女性閣僚に対するセクハラだが、まぁ、麻生久美子が辱められたわけでもないし、気にすることもないだろう。


「でも、泳いでホント、大丈夫なの?」


確認のつもりで聞いてみた安倍首相。


「?大丈夫って・・大丈夫なんでしょ??ご自分がおっしゃってましたよねえ。」


確かに、あんた、自分で大丈夫、って大見得切ったよね。


「・・・そりゃいいましたけど・・自分が泳ぐとは思わないじゃないですか・・」


ん?ほかの人が泳ぐならいいの?


「いまさらそんな・・・首相、私、フランスに文句言ったばかりですよ、変な風刺画なんか描くんじゃねえ、って。ねえ、麻生副総理。」


と、麻生副総理に同意を求めた菅官房長官。が、麻生副首相の読むマンガに政治風刺画なんかあろうはずはなく、


「?なんか新しいアニメでも出た?」


という返事である。ドン麻生が下々のことに興味を示すわけがない。


「・・・でも泳ぐにしても、そろそろ秋だし。冷たいよ、水・・・」


バリバリの右翼にしては肝っ玉が小さい男である。


「全然、平気だと思いますよ。今年は海水温が異常に高くて、漁業関係者の話では漁にもいろいろ影響が出てるらしいですから。」


こう、口を挟んだのは、林農水大臣である。デブなので水には浮きそうな体を揺らして、泳ぐ気マンマンである。


「・・・でもさ・・・心臓マヒとか起こすと、結構面倒な話になるよ・・・」


相変わらず逃げ腰の首相である。


「大丈夫です。もともと持病お持ちですから、その時はその時で、なんとでもしますよ。」


さすが、敏腕官房長官である。


「・・・じゃあさ・・・来年の夏にやります、って発表したら。泳げない人もいるわけだからさ、準備とか、いろいろあるでしょ。」


しばし、黙り込む閣僚たち。それぞれが損得勘定を始めたようだ。来年はもういないしな、という泡沫閣僚もいれば、赤フンどうやってしめんのかな、と考える者もいる。が、さすが冷静沈着な石原環境大臣は違った。おもむろに右手を上げると、


「ちょっといいですか。来年まで待って本当に大丈夫ですか。やるなら今のうちではないですか。」


この発言に、さらに黙り込む閣僚たち。安倍首相も黙って考え込む・・・


そして20分の沈黙の後、安倍首相はこう決断した。


「・・・そうですね。すぐやりましょう。来年はどうなってるかわかんないし・・・」


・・・


って、どうなるかわかんないのかよ!!


・・・


・・・


つづく