標題の訴訟について、上告理由書 及び 上告受理申立理由書 が、令和5年12月11日に受付けされているようですので、そろそろ最高裁での判決が下されるかと思います。

 

この事件ですが、もし、自分が訴えを提起するなら?...という視点で考えています。

 

 

□ 給付金を貰うまでの流れ

 

1.申請(貰う人) → しない → 不支給 

 

↓する

 

2.受理(国) → しない → 不支給

 

↓する

 

3.審査 → しない → 不支給

 

↓する

 

4.判断 → 該当しない → 不支給

 

↓該当する

 

5.支給

 

 

つまり、まず、給付金を欲しい人が、1.申請し、

国が、2.受理し、3.審査し、4.「受給要件をすべて満たしている。」と判断されて、支給となります。

 

 

今回の事件ですが、申請書の提出先は、事務局です。

この事務局は、国から委託を受けた一般企業です。

 

申請方法は、インターネットによる申請のみです。

 

この申請ですが、特定の業種によっては、すべてのチェック項目にチェックを入れることができないことから申請できないものです。

 

チェック項目:「○○の業種に該当しません。」というもの。

バッチリ該当しているので、チェックできないというものです。

 

 

そこで、原告は、申請書類を印刷し、事務局ではなく、事務局に委託した 中小企業庁 に郵送したようですが、その後、何ら対応がなかったことから、裁判所に訴えた...という流れです。

 

 

この事件、上記フロチャートの、どこに問題があったのでしょうか?

 

申請書を 事務局 に提出しなければいけないものを 中小企業庁 に提出していますので、正式に 受理された かどうかも分かりません。

 

受理されたのかどうかも分からないので、審査されたのか、どうかも分かりません。

 

不支給決定通知みたいなものも送付されてきていないことから、判断されたかどうかも分かりません。

 

このような状態で、「給付金を支給しろ!」という内容の訴えを起こしています。

 

 

 

もし、この事件、僕のお客様なら、次のような対応をします。

 

 

申請書を、中小企業庁だけでなく、事務局にも送付するとともに、申請書を受理する旨の内容証明を併せて送付します。

(中小企業庁には、同様の内容を事務局に、事務局には、同様の内容を中小企業庁に送付してある旨を伝えておきます。)

 

当然、書面には、拒否する場合には、行政手続法8条の定めにより、その理由を示すよう求めます。

 

迅速な処理を求めるなら、一定期間経過しても回答がない場合には、拒否したものとみなす旨の文言も添えます。

 

オススメは、行政側から、不該当理由が記載された不支給決定通知書みたいなものを入手することです。

 

僕なら、ここまで準備して、訴訟します。

 

 

今回の事件、「給付金を支給しろ!」という内容のもので、しかも、申請したけど認められなかったというものなので、行政事件訴訟法3条6項2号の「義務付けの訴え」に該当するのものです。

 

この行政事件訴訟法3条6項2号の「義務付けの訴え」をする場合、「不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法3条5項)」、もしくは、「処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条5項)」か「無効等確認の訴え(行政事件訴訟法3条4項)」のいずれかを併せて提起することが、法律上、求められています(行政事件訴訟法37条の3の3項)。

 

訴状を見る限りでは、義務付けの訴えをしていることは分かりますが、取消訴訟などの併合提起はされていないことが確認できます。

 

 

今回の事件における上告受理申立書には、映画『宮本から君へ』にも触れておりますが、この判例は取消訴訟で、本件とは訴えの形式が異なるものです。

 

法律で、義務付けの訴えを提起する場合には、併合提起を求められているのに、義務付け訴えの単発で、果たして、訴えが認められるのだろうか?

 

裁判所は、法律で判断されます。

 

僕が裁判官なら、訴訟に至るまでの経緯、訴えの形式を見ただけで、「全然、法律、分かってないじゃないか!」という印象を抱いてしまいます。

 

そのような先入観を抱きながら、憲法判断してしまいます。

 

 

さて、最高裁は、どのような判断を示すのでしょうか?