昨日、最高裁で、「宮本から君へ」助成金不交付決定処分取消訴訟の判決があり、逆転勝訴となったようですね。
ホント、おめでとうございます。訴状提出から、約4年、お疲れさまでした。
さて、僕自身、昨日、敗訴になると予想していたのは、請求の趣旨において、義務付け訴訟が提起されていないから、相手方が有利かな?と思ったからです。
最高裁判決(2頁目)に基づき、助成金を受給するまでの手続きを確認すると、
1.助成金の交付を受けようとする者が、助成金交付要望書を理事長に提出
2.理事長は、基金運営委員会の議を経て、助成対象活動及び助成額の内定を通知
3.交付の内定の通知を受けた者は、助成金交付申請書を理事長に提出
4.理事長は、内容を審査し、助成金を交付すべきと認めた場合、交付決定を通知
という流れになります。
今回の訴訟は、上記4の判断で 不交付決定 されたものを取消せ!とするもので、交付の決定を求めるものではありません。
よって、最高裁判決は、上記3まで完了したというところまで戻しますよ!というもので、再度、上記4の内容審査が必要となります。さすがに、再度、不交付決定することはないと思いますが、理論上、不交付決定が下されることもあるというものです。
ですので、取消訴訟に併せ、「平成31年4月1日付けの申請について、交付決定せよ!」という内容の義務付けの訴えも必要だったのでは?と思います。
とにかく、控訴審では、理事長側の請求が認められています。
いったい、控訴状及び控訴理由書は、どのような内容のものだったのだろうか?
判決に載っていない部分が、非常に興味あります。
今回の判決から、取消訴訟と義務付けを併合提起せず、取消訴訟単独という戦い方もありだな!と、僕にとっては大きな収穫です。
このほか、気になった点は、地裁判決の被告の表示です。
被告 独立行政法人日本芸術文化振興会
同代表者兼処分行政庁 河村潤子
です。
行政事件訴訟法11条4項1号において、訴状には、処分行政庁の記載が求められていますが、当該訴状に処分行政庁の記載がないにもかかわらず、判決文には、処分行政庁が記載されています。
法律上、「記載しなければならない。」とは規定せず、「記載するものとする。」に留めているから、このような取扱いになっているのかな?と分析しています。
個人的には、「同代表者兼処分行政庁 河村潤子」という表示についても違和感があります。
行政庁は、機関を指すものでは?
よって、
「被告兼処分行政庁 独立行政法人日本芸術文化振興会」
「同代表者 河村潤子」
が、適切のように思えます。
重箱の隅をつつくようで申し訳ないのですが、判決文の最終頁「(4) 以上によれば、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法というべきである。」と判決を下しています。
この点について、訴えを提起する側は、間違えたくないので、逸脱又は濫用という文言を使うことについては理解できます。
(僕も、そのようにします。)
ただ、最高裁判所が使うことに非常に違和感があります。
最高裁は、本件については、裁量権の範囲を逸脱したものか、それとも裁量権の範囲を濫用したものか、どっちの感覚なんだろ?
それとも、よくわからないけど、問題がある!という認識で、この表現を使ったのだろうか?
などなど、興味を持つと、いろいろ学べます。
参考にさせて頂こうっと。