バギオに入るルートは3つある。
マルコスハイウエイ
ケノンロード
ナギリアンロード
どのルートを使ったのかは今でもわからないが、バスは曲がりくねった山道をその大きな図体を揺らしながら上っていく。
僕は相当眠いのに揺り起こされる。
何度も目が覚めて、寝るのをあきらめたとき、バスは目的地に到着した。
僕が勉強する学校だ。
バギオはマニラから高速バスで6時間ほどの標高1600mにあるいわゆる避暑地で、フィリピンは年中暑いから日本の避暑地とは比べ物にならないくらい貴重だ。フィリピンの夏は驚くほど暑いが、バギオは扇風機で十分なくらい涼しい快適な土地で、アメリカがフィリピンを占領してから避暑地としてバギオが開発されたらしい。100年前の話だ。
僕はその快適さと街の安全性にひかれて、バギオにあるその語学学校を選んだ。
学校と宿舎は隣接していて食事も3食提供してくれる、英語を勉強するにはうってつけの場所だと思い、特に迷うこともなかった。
明け方の5時、バスを降りた僕は予想外の寒さと緊張に震えながら大量の荷物を抱え”512”と書かれた部屋の鍵を渡され部屋に向かった。
部屋は3人部屋で他の2人は韓国人らしいが、部屋でも英語を使う機会が増えると思ってあえてそうした。
ジェームスとマイケルと名乗る韓国人が僕のルームメイトで僕にベッドを選ばせてくれた。彼らは同じバスで来た新入生で、特にジェームスは偶然バスで僕の隣だった。彼らは親切そうで僕は安心したのと同時に、一気に眠くなった。
何をするにはとにかく寝ないといけない。
僕は「おやすみ」の言葉も英語で出てこないまま、窓際のベッドに寝た。
ついに、僕の語学留学が始まったのでした。