〈「新アリーナ計画の中止(契約解除等)」を掲げて市長選挙に当選した〉こと⎯⎯その公約は34箇条掲げた小項目のひとつ、しかも計画推進派分裂による“漁夫の利”当選で得票率36.4%でしかない⎯⎯を理由に解除できるとするなら、もはや長期契約の意味はない。「本当は解除はできないけれど、解除やむなしの空気になるのを待っている」疑惑を指摘する所以だ。

 

 

 

前回記事・・・

 

 

ま、解釈はどこまで行っても解釈ですし、

 

それこそ最後は「社会通念」「慣習」の出番になり、何なら、裁判官の胸先三寸。

 

というところも、あったりなかったりしますから。

 

 

そんなわけで、本当に頭ン中が膿んできたので、ここらで一度切ります。

 
以下、つづく。
 
・・・の、つづき。
 
 
 

今回も、まずは、素材とする東愛知新聞の記事を。

 

市側 議会権限超越と法令違反の懸念指摘

 

  その中で、議決事項を定めた自治法96条2項に基づき、条例で議会が議決すべき事項を例示した2012年の総務省通知から「入札や契約など財務関係の事務」が除外される点を指摘。民法の契約解除の定義にも合致するとし、議決対象ではないと主張している。

 

  また、総務省通知を踏まえ市長が担う事務に「予算の調製と執行」をうたった自治法149条2号の規定を元に、契約解除も予算執行に当たるとの解釈が可能とした。

 

  この日は議運で杉浦康夫副市長らが市議らに再議の趣旨を説明。長坂市長は取材に「市としては条例案を法令違反と結論付けた。全国の自治体に影響を及ぼす判断になるので、適法性を確認するプロセスを踏まえず条例を発効させることは、市が認めたということになる」と再議までの経緯を説明した。

 

 

 

総務省の通知については前回触れました。

 

今回は「民法の契約解除の定義にも合致する」という指摘に関してですが、これは正直「?」です。

 

 

●契約解除の定義

 

民法の契約解除の定義に合致するかどうかと、議決対象に加える加えないとは、あまり関係ないように思うのだけれども、どうなんだろう。

 

単に「契約解除」も「契約」の一部で、だから「入札や契約」に含まれると言いたいのでしょうか?

 

もし、市の主張がそうだとすれば、私としては、だったら尚更、此度の契約解除も議決事件に含まれることになるじゃないですかと返したくなりますね。当該契約自体が議決事件なんですから。

 

 

「契約解除の定義」と言えば、こんなサイトがありました。

 
 

契約解除とは? 

 

契約の解除とは、契約当事者の一方の意思表示によって、契約の効力をさかのぼって消滅させることをいいます。 解除権には、解除の発生原因が、契約と法律のいずれに定められているものであるかによって、「約定解除権」と「法定解除権」の2種類に分けることができます。

解除権の種類

約定解除権とは
契約当事者が、契約で解除の発生原因を定めておくことで、与えられる解除権

法定解除権とは
法律上、定められた発生原因によって与えられる解除権

契約が解除されると、まだ履行されていない債務は、履行する必要がなくなります。 また、既に履行された債務について、原状回復の義務(元に戻す義務)が生じます。 さらに、一方当事者が解除することによって、相手方に損害が生じた場合には、損害賠償責任が生じることもあります。

 

 

 

さて、長坂氏は、ずっと「契約解除できる」という前提での言動を繰り返しているわけですが・・・

 

 

此度の「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業特定事業契約」は、現況において(「約定」としても「法定」としても)本当に解除できるのでしょうか。

 

私が思うに・・・

 

市長の意志が(市長が替わることで)変わることは「契約当事者が、契約で解除の発生原因」として定めておいたものに含まれず、また「法律上、定められた発生原因」でもないと思うぞ。

 

・・・という話です。

 

 

●特定事業契約の経過

 

「再議書」の

 

4 ②立法の内容の合理性を基礎づける事実について

(2)条例の一般性に反すること

 イ 特定事業契約の経過

 

に、こんな記述があります。

 

 

 

 現豊橋市長は、「新アリーナ計画の中止(契約解除等)」を掲げ、令和6年11月10日に執行された豊橋市長選挙に当選し、同月17日に市長に就任し、同月18日には補助機関である豊橋市の担当職員に対して当該契約の解除に向けた手続きを指示し、同月21日に当該事業者に対し、本件特定事業契約に係る契約書第107条(市の任意による解除、市事由による解除)に基づく個別対話結果(令和6年3月29日公表)No.91を踏まえ、契約解除に向けた協議の申し入れを文書通知し、同通知にて、本件特定事業契約に関する全ての業務(契約解除に向けた協議に関する一切を除く。)を一時中止することを求めた。そのため、本件特定事業契約に係る工事は、現在も中止されたままである。

 

 

なるほど、なるほど。

 

これまで、市は何を根拠に「契約解除に向けた協議の申し入れ」をしたのか、今ひとつ明確でなかったのですが、やはり契約書の第107条によるのだと、これではっきりしました。

 

 

●契約書第107条

 

でもね、実際に第107条を読むと・・・

 

特定事業の契約締結について(PDF形式、846KB)

 
 
 市は、本施設等を他の公共の用途に供することその他の理由に基づく公益上やむを得ない必要が生じた場合又はその他市が合理的に必要と認める場合には、6ヶ月以上前に事業者に対して通知することにより、本契約の全部又は一部を解除することができる。
 
 
巷間、ちらほらと指摘されていたように、これはやはり「設計・建築」を終え「維持管理・運営」局面に入ってからの話のような気がします。
 
契約期間としても、そこは、しっかり分けていますしね。
 
仮に、その観点を脇に置き、「設計・建築」段階でも第107条を適用できるとして。
 
何度読み返してみても、今、豊橋市が「本施設等を他の公共の用途に供することその他の理由に基づく公益上やむを得ない必要が生じた場合又はその他市が合理的に必要と認める場合」に当てはまるような事態になっているかというと、そんなことは全くないわけで。
 
 

●個別対話結果

 

では、文中にある「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業 個別対話結果」なるものも、見ておきましょう。


個別対話結果(PDF形式,9169KB )

 

 

 

91 特定事業契約書 (案) 48 107条 市の任意による解除、市事由による解除

 

第107条第1項に定める「公益上やむを得ない必要が生じた場合又はその他県が合理的に必要と認める場合」とは、 市が必要不可欠な公益上の目的を達成するために事業契約を解除する必要があり、かつ、公益上の目的を達成する ために他に選びうる手段がないと認められる場合等であり、現時点で具体的に想定されるのは災害対応又はこれに 準じる非常事態の場合であるという理解でよろしいでしょうか。また、市が、第107条第1項に基づき解除権が行使 できる場合であっても、緊急やむを得ない事情がある場合を除き、事業者との間で事前に相当期間協議を行ってい ただけるという理解でよろしいでしょうか。

⎯⎯ご理解のとおりです。

 

 

特に驚くような「隠し玉」があるわけではなく、

 

「公益上やむを得ない必要が生じた場合又はその他県が合理的に必要と認める場合」

 

=「 市が必要不可欠な公益上の目的を達成するために事業契約を解除する必要があり、かつ、公益上の目的を達成する ために他に選びうる手段がないと認められる場合等」

 

≒「現時点で具体的に想定されるのは災害対応又はこれに 準じる非常事態の場合」

 

と説明されているだけです。

 

 

何か、いよいよ、

 

現状の豊橋において「解除に値する事象は存在しないよ」と示してくれているだけのような・・・

 

長坂氏が、あくまでも第107条に基づく契約解除だと言い張るのなら、それは、現市長の公約(契約解除)を実現することが、市として「必要不可欠な公益上の目的」であり、そのために契約を解除する必要がある、という、まったくもって意味不明なロジックになるわけで。

 

 

ちなみにこちら、かなり早い段階で公開されていた記事ですし、あちらこちらでシェアされていたのでご存知の方も多いでしょう。

 

4 解除は有効か

 

そうすると,市長が変わったという点は大きな変化ですが,それで直ちに住民ニーズが変化したといえるかどうか。また,新アリーナに対するスタンスが異なる候補者らとの獲得票数に大差がありません(長坂なおと氏45,491票,浅井よしたか氏41,094票,近藤ひさよし氏36,079票,くらちまさひこ氏2,326票)。しかも,市長選討論会が開催されておらず,選挙でアリーナ契約解除が投票先判断の決定的材料になっていたかどうか。そして,豊橋市議会のアリーナ建設に関する判断がどうか。これらを考慮して住民ニーズの変化が明白にあったといえるかどうか。あるいは,契約を履行した場合と解除した場合のそれぞれを検討のうえで,契約を解除した場合の方が,豊橋市にとって利益があることが明白であるかどうか。こうした点の説得的な説明が必要かと思います。

 

 

 

つまり、そういうことなんです。

 

改めてリンク記事を読み直すと、今回、自分なりにあれこれ考えたことが、あながち的はずれでないと分かって安心しました。というか、ほぼほぼ、既にこの記事で書いてありました。さすが専門家。私としては、嬉しいやら悲しいやら、です。

 

 

●“実は解除できない”疑惑

 

以上見てきたように、約定解除(要・損失補償:逸失利益2年分が上限)は、どうにもこうにも無理があると思います。

 

法定解除(要・損害賠償:損失補償だけでは済まない)ならできるのかもしれませんが、裁判沙汰を覚悟しなければなりません。

 

つまり「新アリーナ計画の中止(契約解除等)」という公約自体が無理筋・無責任なものだったということです。

 

「(普天間飛行場移転は)国外。最低でも県外」なんて「公約」を掲げていた人を思い出します。

 

 

それでも計画中止と言い張るなら、長坂氏(もしくは中止派の人々)は、現整備・運用計画にケチを付けるばかりでなく、

 

契約解除に伴う補償あるいは賠償額はもちろん、豊橋公園東側エリア全体について、30年のスパンで、アレをあーしてコレをこーして、そしたら費用は全部でカクカクシカジカになりますよ、ということを具体的に示してください。

 

維持管理・運用するだけでもタダじゃないんですから。

 

 

でも彼(彼ら)には、そういう気配、というか姿勢すら、ほとんど感じられません。

 

そうこうしている間にも、出費は嵩んでいっているのにね。

 

 

結局、工事の「中断」はできても、契約それ自体をいじることはできない。

 

長坂氏はそれを分かっていて、だからこそ宙ぶらりん状態をひたすら引き伸ばし、計画継続・推進派を萎えさせる戦術を取っているのではないか、という疑念を、私個人は抱いております。

 

すなわち「本当は解除はできないけれど、解除やむなしの空気になるのを待っている」疑惑です。

 

 

実際、「申し入れ」後も、契約解除に向けた協議は始まっていないという話で。

 

それはそうでしょう。豊橋の今が、協議に入る前提となる「場合」になっている、なんて到底言えないんですから。

 

 

ということで、またまた頭が膿んできたので、ここらで一度切ります。
 
以下、「急」につづく。