innocence | Mevrouwのブログ。。。ときどき晴れ

 

 

DNOでInnocence 観て来た。

正真正銘、満席

かなり衝撃的。

Aixの映像がネットにあがってはいるが、見ないで行って良かった。

 

Libretto  Sofi Oksanen (original Finnish) & Aleksi Barrière (dramaturgy & multilingual version)

Musical direction  Elena Schwarz
Stage direction and dramaturgy  Simon Stone
Set design  Chloe Lamford
Costume design  Mel Page
Lighting design  James Farncombe
Choreography  Arco Renz

The Waitress (Tereza)  Jenny Carlstedt
The Mother-in-Law (Patricia)  Lenneke Ruiten
The Father-in-Law (Henrik)  Thomas Oliemans
The Bride (Stela)  Lilian Farahani
The Bridegroom (Tuomas)  Markus Nykänen
The Priest  Frederik Bergman
The Teacher  Lucy Shelton
Markéta (student 1)  Vilma Jää
Lily (student 2)  My Johansson
Iris (student 3)  Julie Hega
Anton (student 4) Rowan Kievits
Jerónimo (student 5)  Camilo Delgado Díaz
Alexia (student 6)  Olga Heikkilä

Chorus of Dutch National Opera
Chorus Master  Edward Ananian-Cooper

Residentie Orkest The Hague

Composition commission and co-production  by Dutch National Opera, Festival d’Aix-en-Provence, Royal Opera House (London), Finnish National Opera and Ballet (Helsinki) and San Francisco Opera

In collaboration with The Metropolitan Opera (New York)

 

小中学生が団体バスで見に来ていたが、皆コトリとも音をさせずに見てた。

多言語で、歌というより早口のセリフ部分も多く字幕追うのも大変なのに。

しかしそれだけズシンと来るオペラなのだ。

これはできれば多くの人に見てほしいと思う。

 

サーリアホは苦手だし、サイモン・ストーンの舞台は見づらい場所が多くかつ演出が安易だという先入観があったけどどちらも打ち破られた。

生徒役の若手にも驚かされ。

不思議な歌い回しでマイク使うのも取り入れて新鮮。

 

みんな泣いてたとかリントさん(DNOの総合監督)が言ってて

ウソーって思ってたけど本当に泣けるのだった。

フィンランドで起こった学校銃撃事件から10年という設定

加害者の弟の結婚式

妻になる人はルーマニアから来た孤児院育ちの女性。

花嫁は、愛する人と出会い、温かい家族の中に入ると信じていた。

だが夫になる人の兄は学校で父親の狩猟用ライフルを乱射して10人死なせていた犯人。

彼はインターナショナルスクールに通っていたが酷いいじめに遭っていた。

いじめた生徒と人畜無害の教師を撃ち殺していた。

未成年なので最重量刑を免れると知ってやった。

彼は先ごろ刑務所から出て自由になり新しい名前で新しい人生を始めていたが家族とは縁を切っていた。

 

結婚式の会場で晩餐の給仕をしていたウエイトレスが、なんと被害者生徒の母親で、加害者家族が幸せになることを許せず、花嫁に、結婚相手は銃撃事件の加害者の弟だと知っているのかと聞いてしまう。

それでも花嫁や牧師は愛は赦しだと信じて、未来を見ようとする。

ところが弟である夫となる男は、自分はもう1人の友人と共に3人で事件を起こしたけど兄だけが1人で罪を被ったのだと告白。

さらに、兄の殺人行為を「虐められたから仕方がないこと。」と言い、

「兄は英雄であり、今でも兄を愛している」と宣言するのだった。

ここで全ては終焉する。

誰も幸せにはならない。

被害者の生徒の亡霊が母親(ウエイトレス)に対して自分の死を受け入れて、解放してほしいというセリフで終わる。

重い。

悲しい。

 

亡霊の生徒マルケータ役の歌手がかなりユニーク。

フィンランド人歌手なのだが、実はクラシックではなくフォーク畑。

サーミの民族音楽を歌うのである。

裏声で歌ったり、叫び声のように伸ばしたりと、驚きの歌唱で、

それがまた亡霊というイメージにぴったりで、聴衆は圧倒されてリアクションを忘れる。

ここはオペラと他の音楽ジャンルの壁を超えている。

かにもこのオペラでは歌ではなくセリフを語る役者(歌手)が多く登場する。

フランス語、スペイン語だけでなくスカンジナビアや東欧など。

そのセリフは音楽に合わせ、その言語特有の響きと抑揚を活かしつつ語られる。とても新鮮な試みだ。

 

私は自分の子どもをインターナショナルスクールに通わせていた。

だから、なおのこと、このドラマには衝撃を受けた。

たしかに、こんな事件は、条件さえあえばどこででも起こりうる世の中なのだ、

 

ひるがえって、2週間前に勃発したハマス・イスラエルの紛争激化の状況を見ても、こういう事件との類似性を感じてしまう。

どちらかが絶対に正しいということはない。

ありえない。

この紛争の種は英国が詐欺をした結果であるし、国連がパレスチナ人の人権を無視してイスラエル建国を許可したことに問題がある。

なぜ長年住んでいた家を追い出されて難民キャンプに住まねばならなかったのだ?

さらに、なぜその難民キャンプを追われて30キロ先に逃げろと言われねばならない?

誰が納得できるだろうか?

もちろんハマスの極悪非道な急襲と人質作戦は許しがたいことだ。

だがイスラエルの報復は過剰ではないのか?

(これまでも空爆してきたのであって、それは許しがたいと思っていた)

なぜガザを包囲する?

ハマスをやっつけるため?

もちろん、人間の盾を築いているハマスは卑怯だ。

だが、その盾にバンバン攻撃するイスラエルは正しいのか?

 

このオペラを見ながらそういうことすら考えた。

 

でも自分のなかの究極の答えはひとつだ。

人の命を奪うことは許されない。

人の命を別の命で贖うことはできないはずだ。

憎しみの連鎖はいますぐここで断ち切るべきだ。

つまり、イスラエルは報復を断念すべきである。

すぐに和平を結ぶという前提で人質奪還を優先してもらいたい。

 

Innocenceでは、「ママ、もう、私の世話をしないで。私をひとりにして。」

と、亡霊の生徒は母に告げて消えていくところで終わる。

 

そう、もう、呪われた過去はここで終わらせてくれ、ということだ。

未来のために。