オランダとしては予算をふんだんに使った大スペクタクル映画、Michiel de Ruyter(オランダではミヒール・ドゥ・ラウターと読む)を観た。
日本ではデ・ロイテルというらしいが、なんか変なので、
私もドゥ・ラウターと呼ばせてもらいます。
実在のオランダ黄金時代の海軍提督で、国家を救った英雄。
日本で言えば、東郷平八郎か。
いやもっともっと国民に愛されているだろう。
タテ・ヨコでかく、
豪胆でいながら戦略家、
根っからの船乗りで一生の大部分を海で過ごし、
最後も海で戦死。
史実はともかく、
この映画ではドゥ・ラウターの素晴らしさと
CGも使った大迫力画面と音声でエンターテイメント性が強調されている。
当時は英国(ばかりではなくいろんな国)との戦争状態であり、
(というのもオランダが交易=主に奴隷貿易で儲けすぎて
敵を作っていたからだし、海賊やら他国の軍艦から商船を保護するというのが、
オランダ海軍のそもそもの存在意義だったのだが)
しかしオランダ自体は7州連邦共和国という形で、
オラニエ公ウィレム2世夭逝後は総督もいない。
議会ではヨハン・ドゥ・ウィットが実権を握り、英国と姻戚関係にある
若君オラニエ公ウイレム3世を飼い殺しにしている。
そんななか、叩き上げ船乗りのドゥ・ラウターは
大抜擢され、提督という地位に着く。
彼自身はノンポリだったのだが、政争は渦巻き、
彼も海にでていて勝っているからといって安心してはいられないのだった。
映画のなかではオラニエ派の提督がドゥ・ラウターの作戦通りに行動せず、
大敗したりすることもあった。(史実は違うと思うが)
国内外とも政争はいかにも漫画チックで中世的。
英仏が手を組み、オランダが孤立したとき、
オランダ人の本性がでて、つまり、四の五の言ってもダメだ、
とにかく目の前の敵を倒すために一致団結、臨機応変。
ということで海軍はしゃかりきにがんばって英艦隊に打撃を与える。
しかし、国内の政争というのがまた激烈で、
陸路でフランスに攻め入られてピンチになったオランダでは
共和派のドゥ・ウィット兄弟は最後には国民の生活が悪化した責任を問われ、
暴徒に虐殺され皮をはがれて吊るされるという酷い仕打ちにあう。
これは実話でその絵も国立博物館には展示されている。
この映画には12禁バージョンと16禁バージョンがあるのだが、
おそらくこの虐殺シーンは12禁にはないだろう。
この映画ではオラニエ公ウィレム3世は一見バカ殿、
その実ずる賢くオドオドしているやつという完全に「わるもの」。
対するドゥ・ウィットは知性あふれる情熱的政治家。
映画をわかりやすくするためだろうが、
そういうキャラクターを与えられている。
当然ドゥ・ウィットを演ずるバリー・アトゥスマは男前だ。
ドゥ・ウィット虐殺後はウイレム3世が総督に。
ドゥ・ラウターはドゥ・ウィットの腹心だったからということで、
総督に邪魔者扱いされ、
もうとっくに年金生活者になっていい年なのに
少数艦隊で地中海に行って来いと追い払われ、
死ぬ覚悟で出航しシチリアで戦っているときに、
案の定大砲に当たって死ぬ。
国葬で新教会に埋葬され後世まで名を残すが、
ちょっと気の毒な晩年ではある。
海戦は大砲の攻撃がメインで、
始終なにかがぶっとんでいる。
しかし、昔ながらの殺陣もあり、
時代遅れな戦法(敵船に乗り移って剣で切りつけて乗っ取る)
というシーンもあるので、
それもまたみていて痛快、というわけである。
本当はドゥ・ラウターは3度結婚しているが、
映画ではただひとりの美人妻が家を守ってくれている。
この嫁さんがまた男まさりでなかなかよい。
オランダには17世紀の建物や佇まいはまだまだたくさんあるし、
帆船も大砲もレプリカがしっかりあるので、
映画で見ていても迫力がある。
ただ、海戦で一直線に並ぶ軍艦数十隻の映像などは、
もうありありとCGでつまらないのだが、これはどうにも仕方がない。
