2019年5月「3級FP(ファイナンシャル・プランニング)技能検定(FP3級)試験」の実技試験(資産設計提案業務)の解答速報を私見で書きました.解説をメインにして,どこが誤っているか,正解でも周辺知識や問題を深掘りした内容も書き加えています.【後編】は問13~問20(ラスト)までです。
日本FP協会から問題利用許諾を取得しました.問題を加筆しました.結果,前編と後編の2部構成となりました.
2019年5月29日初版
2019年11月13日改訂(問題加筆、2部構成に変更)
【理由】【解答への道筋】の箇所が解説に該当します。 【ちなみに】【ちょっと脇道】が周辺知識や深掘りに該当します。
FP3級を受検されるみなさんの参考の一助になれば幸いです。
最新記事(2019.9.4)
2019年9月実施
3級FP技能検定
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解答と解説
【第6問】相 続
問13
《民法上の相続人と法定相続分の正しい組み合わせを選択》
2019年5月2日に相続が開始された五十嵐和人さん(被相続人)の<親族関係図>が下記のとおりである場合、民法上の相続人および法定相続分の組み合わせとして、正しいものはどれか。なお、記載のない条件については一切考慮しないこととする。
<親族関係図>
1.優子1/2奈津子1/4圭吾1/4
2.優子3/4奈津子1/8圭吾1/8
3.優子3/4奈津子1/12圭吾1/12明夫1/12
答え 2
与 件:
被相続人の妻、被相続人の子は故人、被相続人の父母も故人、被相続人の姉兄、その兄の妻
【解答への道筋】
被相続人の配偶者は常に相続人です。第一順位の相続人は子ですが、すでに故人で代襲相続する子あるいは養子も存在しませんので、相続人は第二順位に移ります。
第二順位の相続人は父母、祖父母ですがこちらも故人ですので、第三順位に移ります。
第三順位は兄弟姉妹で、兄と姉が存命していますので相続人となります。その兄の妻は被相続人と血縁関係にないので、当然、相続人になる資格はありません。
従って、相続人は被相続人の配偶者である妻、被相続人の兄と姉の合計3名となります。
次に法定相続分は、被相続人の配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者は3/4を得て、兄弟姉妹は残りの1/4をその人数で分けることになります。従って、配偶者3/4、兄1/8、姉1/8となります。
【ちなみに】
仮に被相続人の子が存命していれば、その子は第一順位の相続人ですので、残りの第二、第三順位の者たちは相続人となることはできません。
この場合の法定相続分は被相続人の配偶者である妻が1/2、被相続人の子が1/2となります。
また仮に被相続人の父母が存命していれば、子が故人であるので第二順位として相続人となり、残りの第三順位の兄弟姉妹は相続人となることはできません。
この場合の法定相続分は被相続人の配偶者である妻が2/3、被相続人の父母が残りの1/3を2人で分けることになります(被相続人の父1/6、母1/6)。
問14
《贈与税の配偶者控除について空欄の正しい数値の組み合わせを選択》
FPで税理士でもある桑原さんは、羽田健一さんと妻の恭子さんから贈与税の配偶者控除に関する相談を受けた。羽田さん夫婦からの相談内容に関する記録は下記<資料>のとおりである。この相談に対する桑原さんの回答の空欄(ア)、(イ)にあてはまる数値の組み合わせとして、正しいものはどれか。
〈資 料〉
[相談記録]
相談日:2019年5月3日相談者:羽田健一様(55歳)羽田恭子様(50歳)
相談内容:贈与税の配偶者控除を活用して、健一様所有の居住用不動産を恭子様に贈与したいと考えている。贈与税の配偶者控除の適用要件や控除額について知りたい。
[桑原さんの回答]
「贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、贈与があった日において、配偶者との婚姻期間が(ア)年以上であること等の所定の要件を満たす必要があります。また、贈与税の配偶者控除の額は、最高(イ)万円です。」
1.(ア)10(イ)2,000
2.(ア)20(イ)2,000
3.(ア)20(イ)2,500
答え 2
【解 説】
これは「贈与税の配偶者控除の特例」についての問題です。
この特例は夫婦間で、国内にある居住用不動産やその敷地、または居住用不動産の購入資金の贈与があった場合、最高2000万円を課税価格から控除できるというものです。
ただし、この特例を受けるには次の適用要件をすべて満たす必要があります。
適用要件:
➊婚姻期間が20年以上あること
❷過去に同一配偶者からこの特例による贈与を受けていないこと
❸贈与を受けた翌年の3月15日までに当該居住用不動産に居住、以後も居住する見込みがあること
【ちなみに】
これは贈与税の特例であり、この特例とは別に基礎控除として110万円があります。従って、贈与税額を計算する際には、110万円が加算され、合計2110万円が控除されることになります。
贈与税の配偶者控除の計算式:
贈与税額=(課税価格-110万(基礎控除)-2000万(特例控除))×税率-控除額
【第7問】ライフプランニング
<設例>
山岸康太さんは株式会社KNに勤務する会社員である。康太さんは定年を2年後に控え、今後の生活設計について考えようと思い、FPで税理士でもある露木さんに相談をした。なお、下記のデータはいずれも2019年4月1日現在のものである。
[負債残高]
住宅ローン(自宅マンション):280万円(債務者は康太さん、団体信用生命保険付き)
[その他]
上記以外については、各設問において特に指定のない限り一切考慮しないこととする。
問15
《某家のバランスシートの空欄に当てはまる金額として正しいものを選択》
FPの露木さんは、山岸家の2019年4月1日現在のバランスシートを作成した。下表の空欄(ア)にあてはまる金額として、正しいものはどれか。なお、<設例>に記載のあるデータに基づいて解答することとする。
1.5,440(万円)
2.5,560(万円)
3.5,930(万円)
答え 3
【解答への道筋】
バランスシートの空欄は[純資産]です。純資産は、[資産]から[負債]を差し引くことで求めます。
➊設例にある[保有財産]の合計を算出:6210万円、これが[資産]です。
❷設例にある[負債残高]:280万円、これが[負債]です。
❸[純資産]=[資産]-[負債]
5930万円=6210万-280万
問16
《退職一時金について、所得税にかかる退職所得の金額として正しいものを選択》
康太さんには、定年退職時に勤務先から退職一時金2,400万円が支給される見込みである。この場合における所得税に係る退職所得の金額として、正しいものはどれか。なお、康太さんの勤続年数は38年とし、退職は障害者になったことに基因するものではない。また、康太さんは役員であったことはなく、前年以前に受け取った退職金はないものとする。
康太さんには、定年退職時に勤務先から退職一時金2,400万円が支給される見込みである。この場合における所得税に係る退職所得の金額として、正しいものはどれか。なお、康太さんの勤続年数は38年とし、退職は障害者になったことに基因するものではない。また、康太さんは役員であったことはなく、前年以前に受け取った退職金はないものとする。
<参考:退職所得控除額の求め方>
勤続年数 │ 退職所得控除額
20年以下│40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 │800万円+70万円×(勤続年数-20年)
1.(2,400万円-2,060万円)×1/2=170万円
2.2,400万円-2,060万円-50万円=290万円
3.2,400万円-2,060万円=340万円
答え 1
【解答への道筋】
ここでのポイントは「退職所得の金額」です。退職所得控除額ではありません。退職所得の計算式で忘れてはならないのが、最後に1/2をかけることです。これを覚えていれば、すぐに答えが「1」であることがわかります。
退職所得の計算式:
退職所得
=((退職金(退職一時金)-退職控除額))×1/2
【ちなみに】
選択肢2は「一時所得」の計算式です。
一時所得=
総収入額-収入を得るために支出した金額-特別控除(最高50万円)
養老保険の満期保険金などで、保険料負担者と満期保険金の受取人が同一のとき、一時所得として、この計算式が使用されます。
この計算問題が出題されたときに注意する点は、「一時所得の金額がいくらか」「一時所得が総所得金額に算入される金額はいくらか」の2パターンがあることで、前者の場合は上記の計算式で求めた金額で正解となりますが、後者の場合は一時所得の金額に1/2をかける必要があります。計算式は下記のとおりです。
一時所得の総所得金額に算入される金額
=(総収入額-収入を得るために支出した金額-特別控除(最高50万円))×1/2
問17
《キャッシュフロー表で使用される係数について与件から正しいものを選択》
康太さんは、60歳で定年を迎えた後、退職一時金の一部を老後の生活資金に充てることを考えている。仮に退職一時金のうち1,900万円を年利2.0%で複利運用しながら20年間で均等に取り崩すこととした場合、年間で取り崩すことができる最大金額として、正しいものはどれか。なお、下記<資料>の3つの係数の中から最も適切な係数を選択して計算し、円単位で解答すること。また、税金や記載のない事項については一切考慮しないこととする。
1.639,350円
2.782,800円
3.1,162,800円
答え 3
与 件:
「x円(元金)を年利率y%で運用しながら、z年間で均等に取り崩す場合、年間で取り崩せる最大金額はいくらか?」
x=1900万、y=2、z=20
【解答への近道】
文中に「取り崩す」とでたら、「資本回収係数」です。1900万円×資本回収係数0.0612=1162800円
【ちなみに】
「現価係数」の出題例、「年利率y%で運用し、z年後にA円を受け取るのに現在いくら(元金x円)必要か?」
「年金現価係数」の出題例、「年利率y%で運用しながら、毎年A円の年金をz年間受け取るには、現在いくら(元金x円)必要か?」
「終値係数」の出題例、「x円(元金)を年利率y%でz年間運用したときの元利合計はいくら(A円)になるか?」
「年金終値係数」の出題例、「毎年x円(元金)を年利率y%でz年間積み立てたとき、z年後の元利合計は(A円)になるか?」
「減債基金係数」の出題例、「年利率y%で運用し、z年後にA円を貯めるには、毎年いくら(元金x円)積み立てればよいか?」
問18
《老齢基礎年金の繰上げ受給について最も適切なものを選択》
康太さんは、通常65歳から支給される老齢基礎年金を繰り上げて受給できることを知り、FPの露木さんに質問をした。老齢基礎年金の繰上げ受給に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金の受給要件は満たしているものとする。
1.老齢基礎年金を繰上げ受給した場合、65歳になるまでであれば、繰上げ受給を取りやめて通常受給に切り替えることができる。
2.老齢基礎年金を繰上げ受給した場合の年金額は、65歳になるまでは減額されるが、65歳以降は減額されない通常額が一生涯支給される。
3.老齢基礎年金を繰上げ受給した場合の年金額は、繰上げ月数1月当たり0.5%の割合で減額される。
答え 3
【理 由】
1.老齢基礎年金の繰上げ受給を一度選択したら、取り消すことや変更することはできません。
2.老齢基礎年金の繰上げ受給した場合の減額率は、一生涯に変わりません。
【ちなみに】
➊老齢基礎年金の繰上げ受給を選択した場合、60歳から64歳の間、繰り上げた月当たり0.5%減額されます。最大で「5年間×12ヶ月×0.5%=30%」減額となります。
❷老齢基礎年金の繰下げ受給を選択した場合、66歳から70歳の間、繰り下げた月当たり0.7%増額されます。最大で「5年間×12ヶ月×0.7%=42%」増額となります。
問19
《公的年金の遺族給付について最も最適なものを選択》
康太さんの公的年金加入歴は下記のとおりである。仮に康太さんが現時点(58歳)で死亡した場合、康太さんの死亡時点において妻の由香里さんに支給される公的年金の遺族給付に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、康太さんは、入社時(22歳)から死亡時まで厚生年金保険に加入しているものとし、遺族給付における生計維持要件は満たされているものとする。
1.遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給される。
2.遺族厚生年金と寡婦年金が支給される。
3.遺族厚生年金が支給され、中高齢寡婦加算額が加算される。
答え 3
【理 由】
1.「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の双方が支給されるには、18歳の3月末日までの子がいることが要件になります。設例では長女は27歳ですので、子には該当しないため、遺族基礎年金を受給することはできません。
2.「寡婦年金」は死亡者が第1号保険者として保険料納付期間が10年必要ですが、設例では死亡者が第1号保険者であった期間がないので「寡婦年金」を受給することはできません。
3.「遺族厚生年金」が支給され、「中高年寡婦加算額」が加算されるには、「遺族厚生年金」については死亡者が老齢厚生年金の受給資格期間25年を満たしていることが要件となり、「中高年寡婦加算額」については妻に18歳の3月末日までの子がいないことと、妻の年齢が40歳から65歳未満であることが要件になります。
問題のP14にある〈設例〉では、死亡した夫は老齢厚生年金の受給資格を満たしており、妻は58歳なので、遺族厚生年金が支給され、中高年寡婦加算額が加算されます。
【ちなみに】
「中高年寡婦加算額」は65歳になると打ち切られます。昭和31年(1956年)4月1日以前に生まれた妻の場合は、65歳以後、経過的寡婦加算額が加算されますが、設例の妻は1961年生まれであるため加算されることはありません。
問20
《生命保険の保険金や給付金が支給された際の課税について誤っているものを選択》
康太さんと由香里さんが加入している生命保険は下表のとおりである。下表の契約A~Cについて、保険金・給付金等が支払われた場合の課税関係に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1.契約Aについて、康太さんが受け取った解約返戻金は、所得税の課税対象となる。
2.契約Bについて、由香里さんが受け取った入院給付金は、所得税の課税対象となる。
3.契約Cについて、康太さんが受け取った満期保険金は、所得税の課税対象となる。
答え 2
【理 由】
1.事例の「解約返戻金」の受け取りは、一時所得となり所得税の課税対象となります。
2.事例の「入院給付金」の受け取りは、所得税の非課税対象です。
3.事例の「満期保険金」の受け取りは、一時所得となり所得税の課税対象となります。
【ちなみに】
➊解約返戻金の課税について、解約返戻金の額が支払い済みの保険料より少ない場合、所得税は課税されません。
❷満期保険金の課税について:
契約者 受取人 課税の種類
A A 「所得税(一時所得)」
A B 「贈与税」
❸死亡保険金の課税について:
契約者 被保険者 受取人 課税の種類
A A 法定相続人 「相続税」
(保険金の非課税適用あり)
A A 法定相続人以外 「相続税」
(保険金の非課税適用なし)
A B A 「所得税」(一時所得)
A B C 「贈与税」
※死亡保険金の非課税額=500万円×法定相続人の数
※法定相続人の数の数え方:
➊相続放棄者も法定相続人の数に加算する
❷養子は実子がいない場合、養子2人までを法定相続人とする
❸養子は実子がいる場合、養子1人までを法定相続人とする
以 上
あとがき
この試験については、いつか受験しようと思いながら、タイミングが悪く、なかなか受験できませんでした。ついに「フィナンシャル・プランニング技能検定3級」、いわゆるFP3級を受験することができました。
わたしがいつも試験後に行っている「感想戦」を、すかさず行い、その第一弾として、解答速報を書き上げました。今回は午後の実技試験の解答と解説を先に出しました。
この試験の受験をつうじて、改めて感じたことは、点と点の繋がりです。FPの相続については行政書士試験で、民法にこだわっていたので、とてもそのときの学習が役に立ちました。不動産に関するところでは、販売士試験で用途地域、建ぺい率、容積率の学習をしていたところが役立ちました。加えて、金融資産の運用についても、販売士試験での経験が役に立ちました。
FPの試験では計算問題がかなりありましたが、この点は簿記検定試験のころから始めて、販売士試験で完成させた計算式の記号化がとても活躍しました。
FP試験は、今回とても興味深いものであり、しかしながら、疑問も山積しているというのが現実です。とりわけ、数式とその意味を理解できていない点が多々あり、テクニックとしては乗り切れても、実務面では疑問です。この点が今後の課題となって浮き彫りになったことが、一番の収穫でした。
今回は基本ということで、その点を意識して学習を進めてきました。3級からステップ・バイ・ステップしていけるので、今後の展開がわたしにとって、とても楽しみです。
学習の進め方などの体験記は、もっと先になりそうです。
ところで、今回の試験の一番の失敗は腕時計を忘れて家を出てしまい。試験会場で腕時計を机に置いている人の姿を見て、あっ、忘れたと気づく呑気なありさまでした。
ところが、演習で時間間隔を体で覚え込んでいた直後だったので、身体で時間をとらえることができたというのが、これもまた点と点の繋がりとなりました。
スティーブ・ジョブズ伝説のスピーチの記事を書いてからというもの、面白いように点と点があちらこちらに繋がりだしてきています。さて、次は何と繋がるのかな?
本日も長文をお読みくださり、 ありがとうございます。
FP技能検定3級(2019年5月) 実技試験「資産設計提案業務」の解答・解説-前編
Success is going from failure to failure without a loss of enthusiasm.