3月12日
8時出発。今日はNamcheに降りられると思うと足取りも軽い。
昨日はYakステーキを食べていくらかあったかい場所でゆっくり寝たからわりと快調である。
Panbocheまで1時間半、結構いいペースである。
PanbocheからTanbocheに渡る吊り橋・・・
ついに見つけたのである。バックにはきれいにアマダブラムが入る吊り橋を。
しかし、下は滝のようになっていて、
撮影ポイントは急ながけ崩れの後の中腹である。
どうしようか散々迷った挙げ句、橋の麓を少し登り、
トラバースしながら橋下に降りる道を探す。
「あかん・・・かなりの断崖絶壁や。」
どうしても撮りたかったけれど、
諦めてNamcheに降りることにする。
後ろ髪引きずられるような感覚になりながらもTanbocheに向かって15分ほど歩くとロッジが一軒。ここに泊まれば・・。
「もう、ここから降りたらここの写真は一生撮れないかも知れないよ?」
そんな気持ちに後押しされて泊まることにする。
明日の朝にじいちゃん連れてもう一度トライしよう。
ロッジはわりといいロッジなのだけれど、
ダイニングに流れる音楽にだんだんいらいらしてくる。
ネパールの民族舞踊の音楽らしい。
2回くらいなら我慢できたけれど、
テープが5回リターンしたところでダイニングにいた外国人全員がキレた。
「Stop it!」
その後は静かで、ナチュラルなサウンドだけが流れていた。
3800mまで降りてくるとあったかくて、ご飯もおいしくて、
かなり幸せなところに戻ってきたような感じがする。
夜、寝る時に、ベニヤの薄い壁の向こう側で体格のよいカナダ人の兄ちゃんが寝ているらしい。
しかし、ものすごい勢いの屁をコクのである。
それも、どうもベニア一枚隔てた俺の耳元で。
それが夜中中止まらないのである。
「あのクソッタレなダルバートのせいだぜ!」
そんな話し声が聞こえる。
やっぱり・・ダルバートで屁が良く出るのは俺だけじゃなかったんだ。
しかし、屁の音でなかなか寝れなかったのは後にも先にもこの日だけである。
3月13日
朝起きると・・曇ってやがる。
せっかく写真撮るためにわざわざ一泊したのに・・9時になっても晴れない。
そういえば空見上げて雲の流れを見ながら晴れるかどうか毎日考えていたな。
前の仕事の時は。
あの仕事に戻ろうか?帰ったら連絡してみよう。
元いた会社に。
雲が切れそうだ。
荷物を預けてじいちゃんとカメラだけ持ってあの吊り橋に戻る。
吊り橋の裏のがけをよじ登る。
クライマーじゃないんだぞ・・・正直言って怖い。
何のため、誰のためにこんな事してるんだろう?
ずーっと思っていたことが頭をふとよぎる。
土砂崩れの後のかなり危ない斜面をこわごわ降りる。
撮影ポイント。思い描いていた絵になる場所だ。
Yakが渡る吊り橋の光景をフィルムに収めてロッジで荷物を拾い、
Namcheに向けて出発。
今からだとかなり急がないと・・。
Tangbocheに登り、急坂を駆け下りてさらにまた登り、
山の中腹をどこまでも歩く。
雪が振り出す頃Namcheに到着。
ダワじいちゃんとビールで乾杯。
飯を食ったらあっという間に睡魔に襲われる。
暖かい。