3月6日
室内の気温―8度。寒くて酸素が薄くてあまり眠れない。
凍らないように寝袋の中に入れておいた水筒がいつのまにか外に落ちていて凍っている。
Machermoで洗濯した靴下は乾く間もなく凍結してそのままザックに入っている。
いつまでたっても乾かない。
おかげでここ3日くらいは同じ靴下だよ。
雪はやんだようだ。
朝、早めに食事をしてGokyoPeakの再挑戦。
快晴だ。
サングラスをしていないとまともに見られないくらいの銀世界。
相変わらず息は苦しいけれど天気が良くて暖かいせいか、調子がいい。
右足の次に左足を出す。視線は3歩先しか見えていない。20歩歩いて1分休憩のペース。
いったい何時間かかるんだろう?
今日登れなかったら諦めるしかない。
それはしたくない。
遥か彼方にPeakに立っている人が見える。
少しも大きく、近くならない。
こんな時間が無限に続くような気がしていた。
途中からエベレストが見え始める。
「なにやってんだ?ちっぽけな奴」
そんな声が聞こえてくる。
Peakのすぐ下、直線であと100mもない。
一気に気持ちだけ行ってるけれど足が動かない。
最後の最後でまた血糖値が下がってきた。
倒れこむようにスニッカーズ♪をかじる・・・・
硬い・・凍っていて、まるで氷をかじっているようである。
もうほんとうにPeak目の前で10分休憩した後、何とか登る。
エベレストがローツェ、ヌプツェの後ろで黒く輝いている。
手前にはンゴズンバ氷河が広がり、氷河湖ドゥードゥーポカリが白く輝いている。
蒼い空
希薄な空気
空気が薄いくせに風は強い
どうなってるんだ?
風はこんなちっぽけな存在を小さな頂上から吹き飛ばそうとしてる
空はもう青とは呼べない色をしている
この色が見たかった
成層圏を飛ぶ窓から見える色
2枚のアクリルを通して暖かいところから見た極寒の世界
外には空気すらほとんど無い
今、この希薄な場所に温かい体で立っている
自分の足で歩いてくることができた
かろうじて呼吸できるだけの空気はある
地球上で一番高い場所は目の高さに存在している
キミの名前にこの空の色をつけたこと
心から誇りに思う
登りに3時間かかったPeakを50分で駆け下り、Machermoまで下山。