限界? | ”Stratoblue”  航空写真家 野口克也 Blog

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空から蒼を切り取る航空写真家 野口克也のオフィシャルブログ

3月3日
Machermoへ向けて出発。
Gokyoから流れ降りてくる川が作り出した深い谷の中腹をどこまでも川を上ってゆく道。
山は対岸のチョラツェくらいしか見えない。
登りもきつくなく、ただだらだら坂を登ってゆくだけの道。
なんか酸素が薄くなってハイになってるのか、

「マッチェルモで待っちぇるも!」とか、「ドーレはどーれ?」

なんてサブいギャグが頭を浮かんでくる・・・
どうしちゃったんだろう?
今日はらくらく12時過ぎにはマッチェルモ着。
標高4470m。もうこれから上は未体験ゾーンである。
さすがに酸素が薄い。
ちょっとした階段を上るだけで息が切れる。
ここから上ではもう洗濯もできないであろうと思って川で洗濯。
ついでに陽があたっていて暖かかったので川で頭を洗う。

んんんんん!

寒い!冷たい!頭が割れそうに痛い!すっきりしたけれど・・・・
洗濯物を干していて気がついた。
寒いのである。陽はあたっているものの、
気温は0度近い。洗濯物が見る見る凍ってゆく・・・・。

夜、着るものを着込んで寝袋にもぐりこむ。
寒い!酸素が薄いのも手伝ってなかなか寝付けない。

外はきれいな月夜の晩。Kyokoさんとガイドが夜の散歩をしていた。ふーん・・・。



3月4日


いよいよGokyoへ。
Pangからキツイ登りで沢を横切ったら行く手を阻むように風が強くなる。
一番奥に8153mのチョー・オユが西陽を浴びて輝いている。
氷河湖の3つ目のほとりにGokyoのロッジ群がある。
そこの一番気持ちよさそうなゴーキョリゾートへ泊まることにする。
荷物を置いたらすぐ仕度をしてヘッドランプを持って夕陽の写真を撮りにGokyoPeakへ。
氷河湖の対岸の見えるピークをただひたすら登ってゆく。

さすがにこの時間から登る人はいない。

足がまったく動かない。

カメラ以外は入っていないザックが異常に重く感じる。
出る時間も遅かったのだけれど、限界。
もう一歩も動けないって言うところでへたり込み、ねっころがり、呼吸を整えてさらに歩く、
もう何度繰り返しただろうか?
さっきから高度がぜんぜん上がっていない。
腕時計の高度計は5000m。
限界なのか?さすがに真っ暗になってからは登れない。
ザックを背負ったまま一歩も動けなくなっている俺に問い掛ける。

「雲が多くてエベレストは見えない。写真を撮りに来たんだ、山を登りに来たんじゃない。」

と、自分で俺に言い聞かせながら夕暮れの写真を撮る。
さすがに今日、下から上がってきていきなりは無理か?
高度順応もできてない、おまけにもう体力が残っていない。
かなり寒くなってきやがった。
悔しいけれど限界を感じつつ真っ暗な今来た道ををヘッドランプひとつで一人で降りる。

ロッジに戻っていくらか寝ることにする。夜は寒くてあまり寝られない。
いくらか眠れたけれど外は明るいけれど寒い。

外に出ると・・・・吹雪である。

もうとにかくすることも無く、Kyokoさんに借りた「羊たちの沈黙」を読むことにする。
もう2回目だけれど・・。
「ハンニバル」のいい予習になる。
ロッジにいる人たちみんながただボーっと薪ストーブの前にいるだけである。


少し前なら無茶をした自分で断とうとした命
やりたいことをして無くなることに躊躇は無かった
でも今は無理をしても無茶をしなくなってきた
生きる方を選ぶようになってきた
旅の目的は達成できたかな?



3月5日
朝4時起きで再度挑戦。
今度は朝焼けの山を撮る。
星が出てる。
今度はザックをじいちゃんに持ってもらいまだ真っ暗な中を登り始める。
さすがシェルパ。
ナムチェあたりとまったく変わらないペースで歩きつづける。・・・って、

ちょっと俺のペースに合わせてくれよ・・・。

気温はー10度くらい。
フリースのジャンバーにノースフェイスの偽物ノースフェイクのマウンテンジャケットを来て汗をかきながら登っていたけれど、途中で異常に寒くなる。
ダウンジャケットに着替えようとして途中で脱ぐと、
フリースとジャケットの間で汗が凍っている。
寒いはずだ・・。やっぱり本物のゴアテックスじゃないとだめなんだなあ。
こういう困難な環境に来れば来るほど一流のもの、本物の威力が出てくるんだなあ。
専門学校のときに写真屋でバイトして買ったNikonのF-4は頑丈さが気に入って買って、
何度となく落としたりぶつけたり、雪の中でも使ってきたけれど、
トラブルひとつ起こさないで動いている。さすがだよ。
高かっただけは働いてくれている。
20歩歩いて1分休憩。
息を整えないとまったく上がっていかない。
昨日の晩と同じ状態だ。

いくらか明るくなってくると、自分が雲底のすぐ下にいることに気がつく。
朝焼けの360度のランドスケープを期待していたのに・・。
この状態ではGokyoPeakは雲の中、根性も体力もくじけかけてる。
天候も急激に悪くなって来る方向なのは今までの航空写真のカメラマンの経験が教えてくれている。

5分迷った。

Gokyoまで降りることを決意する。昨日よりは高いところにいけたのに・・




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