序章:夜のはじまりに
部屋の灯りを落とすと、
世界の輪郭がやわらかくなる。
静寂の中で、本を開くように、
私はひとつの問いをめくる。
存在とは、何なのだろう。
原子の中は、99%が空っぽだという。
その残る1%の中性子や陽子、さらには、クォークと呼ばれるものはどこから来たのか。
触れるものは確かにここにある。
だが、それですらも触れているように感じるだけで、
実際には静電気の反発によるものなのだ。
その矛盾の中に、私たちは立っている。
第Ⅰ章:強い力の囁き
陽子と中性子を結ぶ“強い力”は、
目には見えないが、
それなしでは何ひとつ形を保てない。
しかし、その強い力こそが、質量の99%を占めるという。
音のない部屋で、
互いを見つめ合うように結びつく。
その緊張が、世界の輪郭を描いている。
静けさとは、力が均衡したときの音なのかもしれない。
第Ⅱ章:空っぽの中心
空虚は沈黙ではない。
そこには、数えきれない波が
ひそやかに重なりあっている。
私たちが「ある」と感じるのは、
その波が偶然、
ひととき静止した瞬間にすぎない。
だから、存在とは、
つかの間の静止、
それは一瞬の呼吸のようなものだ。
終章:二つの99%
99%の空っぽ
99%の結びつき
空虚と力
沈黙と囁き
無と関係
夜のページを閉じるとき、
私たちはそのどちらでもあることに気づく。
人間とは、見る目線を変えたら、まるで原子の霧ではないか。
我々は、原子と比べたらあまりにも巨大な存在である。
だが、宇宙から見たら砂粒よりも小さいのである。
存在とは、どこをどう切り取って見るかで、見方がまるで変わってくる。
崩れそうで、まだ壊れない。
その均衡のなかに、
「生きる」という音が微かに響いている。