駐在は永遠ではありません。

任期があります。

でも一般的には杓子定規にというのではなくある幅を持っています。

 

そのため自分のキャリアプランの中で駐在をどう位置づけるのか

というのは意外と大切な視点になってきます。

 

最近安倍首相の辞意表明で官邸官僚の悲哀というようなテーマ

のマスコミの記事が多くなりました。

これは駐在でも同じで、本社しか見ない人、ローカルしかみない(⁉)

人、他社しかみない人(⁇)など対応が分かれます。

 

まず本社しか見ない人。

これはどこにでもいる分かりやすい例ですね。

先進国ほど、そして長い歴史がある企業ほど駐在員がいなくても

仕事が回る仕組みになっています。

また本社の評価として現地スタッフからどれほど信頼され愛される

かという視点は無いので、一定数発生します。

会社とサービスアパートの往復、食事は全部日本食レストラン、

帰任日を指折り数えて待ち、本社の報告資料は異常にこだわる

みたいな。

まあ現地スタッフもこの手の日本人の扱いには慣れているので

問題ないです。

 

問題は逆のパターン。

本社に居場所がないので、逆に土着して戻れなくしてやろうと

するパターン。

Cさんもそうでした。

おおらかで優しいCさんは、本社ではやる気がない、覇気がない

と散々な評価で左遷に近い形で東南アジアへ。

でも予期せぬ形ではまってしまいました。

赴任した瞬間にCさんはその国が気に入り。。。

まずは本社主催の会議は全部シカトww。

本社への報告資料は現地スタッフの作成でノーチェックww。

その代わり現地スタッフとの飲み会は部署関係なく出まくり、

担当者の誕生日プレゼントや子供の出産祝いなど欠かさず、

現地スタッフの評判はNo.1。

日本人の社長は知らないけどCさんは知ってるという現地スタッフ

が続出ww。

 

頭の良いCさんはカラオケで知り合った20歳年下の女性と結婚。。

そう、赴任国で現地の方と結婚すると駐在期間が長くなるという

ジンクスがあるんです。

やれることは全部やる。

こうなると社長も頼らざるを得ず。。

本社がブチギレする中、Cさんは社長の右腕として大活躍。

結果11年という至上最長の駐在期間に。

最後は一旦退職して現地採用という形で再雇用してくれないか

とまで申し出ましたが、かなわず。。

 

赴任する前の部署には戻れず社長の配慮で帰任先を得ました。

でもやはり半年でした。

本社の雰囲気に合わず退職。

また赴任していた国に戻って日系企業に再就職。

奥様と3人のお子さんで幸せに暮らしています。

 

やはり土着化戦略は難しいですね。

 

僕の勤める会社の場合、海外駐在の任期は3年から5年が標準です。

もちろん人によって異なり、縁があって10年以上の方もいますし、反対に短期で

帰任させられる方もいらっしゃいます。

 

中でも「こんなはずじゃなかった」という例について今回紹介したいと思います。

 

Bさんは20代後半。

初めての海外駐在でやる気満々でした。

でも7か月で帰任されました。

最短です。

 

実は奥様が原因でした。

は?そんなことありえるの?

と思いますが、あるんです。

 

奥様も同じ20代後半でしたが、子供が小さい事もあり、Bさんは是非とも

家族で駐在生活をしたいということで家族帯同で赴任されました。

Bさんも順調に仕事に慣れ、仲間との飲み会や駐在員同士のソフト

ボールなども楽しまれていました。

 

そんな矢先、というか他人から見れば矢先なのですが、ご家庭では

奥様が海外生活になじめず苦労されていたようです。

帰宅すれば奥様の日本に帰りたいの話を延々と聞く生活だったと。

 

せっかくの駐在の機会ということでBさんもすごく悩まれていました。

僕は駐在妻という存在は好きではありませんが、Bさんの場合は

重要でした。

仕事は家族を養うための手段でしかないですからね。

最終的には周りも会社も納得し円満帰任となりました。

 

おそらくBさんにはなかなか再度駐在の機会はまわってこないでしょう。

でも家族は何より大切。

特に小さな子供さんと一緒に過ごせる機会は今しかないですから

Bさんもそこは迷わなかったと思います。

もちろん仕事に未練はあるでしょうが。

 

Bさんは帰任後も本社で楽しく真面目に働いています。

奥様もすっかり元気になられ、たまにラインで家族写真を送ってくれます。

駐在も、そもそも仕事も所詮は生活の手段。

愛する家族は目的そのものです。

 

僕が駐在員に大切なのは思いやりだと感じるようになった理由にAさんの

事があります。

Aさんは非常に優秀な方でした。

頭の回転が速いのに加え、新しい仕事の説明があった際にはいつまでに

誰と何をするべきなのかすぐに工程表が頭に浮かぶような方です。

 

一方でAさんは悪気は無いのかもしれませんがすぐ議論のマウントを

取りたがるというか取ってしまうというか。

ほんのささいなことでも完璧な論理で相手のメンツをつぶしてしまう感じ。

組織で動く以上はお互いの仕事に対する最低限の敬意は必須。

相手にも立場があり、舐めていると思っても敵は外の発想で事実を

慇懃無礼に述べるなどやり方はありますよね。

 

そんなAさんは優秀なのに周りが距離を置くようになり、時には利用され

ほどなく帰任となりました。

 

本社の元々いた部署に戻るのかと思いきや、希望なのか別の部門

でした。その後2か月ほどして転職というかそのために退職されました。

僕は仲の良い方だったので、一時帰国した際に飲む機会がありました。

退職理由は周りの連中がとろ過ぎて嫌気がさしたとのこと。

Aさんらしいです。

駐在員が帰任すると程度の差はあれど根回しばかりで全然議論が

進まない本社に嫌気がさすものです。

 

Aさんはいわゆる投資家をしながらランドリー経営や車の部品の輸出

などのビジネスを始めました。

購買部門での経験や知識が活かせるとのことでした。

聞いた時は「なんだかよくある脱サラ失敗談になるのでは?」と心配

しましたが、そこは優秀なAさん。

精神的にも楽になり手広く仕事の幅を拡げたり畳んだりしながら

前向きです。

本人曰く会社員として向いていなかったとのこと。

たしかに「とろい周り」がいなく全部自分で決めて進む方が良かった

ようです。

 

ただ小市民の僕はやはり思うのです。

悪気はない発言は流しても良いのではないかと。

悪い言い方ですが僕らの仕事は所詮地球防衛軍のような命がけの

仕事ではありません。

仕事を離れれば異国で働く仲間同士。

マウントを取れても気分が良いだけでその裏で手を差し伸べる方は

減ってしまうのです。

肩の力を抜いても良いのではとAさんを見て感じます。

 

8月も終わりますね。

今月も帰任の方を2人空港で見送りました。

寂しいものです。

 

空港もがらがらですが、成田行きの便はけっこう乗るみたいです。

どこの企業も駐在員の数を減らすようです。

もちろん駐在員の交代で帰任という場合もありますが。

 

僕も3年弱の駐在生活ですが、20人近くの帰任者を見送ってきました。

いつもさみしいですね。

 

さて帰任される方々も「帰りたくないよー」という方から「次の仕事

わくわくする」という方まで様々です。

 

帰任後の仕事は駐在に来る時の原籍に復帰される方もいれば

全く別の部署の方もいらっしゃいます。

昨今は駐在帰りの方が本社に幻滅して転職してしまうという例が

多いので、人事からの調整依頼も多いですね。

 

今はコロナがという感じですが、駐在に出ると自分に自信がつく

んですよね。

良くも悪くも。

なので若い人もそうではない方もみんな別の道があるのでは

ないかと模索しますね。

そういう意味で自分に自信が持てない方ほど海外でチャレンジ

する価値はあります。

 

何回かに分けて駐在帰任後の進路について書いていきたい

と思います。

 

 

つくづく感じるんですが、駐在で一番大切なものは「思いやり」ですね。

「思いやり」というと相手の立場や気持ちを察しながら自身の行動を律すること

なのですが、海外の場合には異なる常識への対応力、適応力が含まれてくる

のが特徴です。

 

日本でマナーの悪い方に出会うと、「普通におかしいだろ」とか「常識がない

のかな」と言いたくなりますよね。

海外の場合はそもそも「常識」が異なるんです。

親日や反日なんてものは関係ないんです。

なぜなら日本以外の国の人々は政治と経済は別ということを心で理解して

いますから、トラブルの原因と考えてはいけません。

 

日本人同士の場合には大体生理的に合わないなと分かるものですが海外

では本当に分かりません。

こいつは僕を嫌ってるなと感じるスタッフや僕の話を頬杖ついてあくびしながら

聞いているスタッフが良き理解者として普通に助けてくれるなんて日常茶飯事。

 

最初のうちは周りが敵ばかりに感じるものですが、だんだん一部味方がいる

事に気づき、少しづつ視野が広がってきます。

なので敵は作らない方が良い(笑)。

人間関係なんて所詮狐とタヌキの化かし合いと割り切って期待しすぎず

落胆しすぎず、怒らず、妬まず、肩の力を抜いて行ければ勝ちです。

 

同じ海外に駐在するのに赴任先によって序列はあるのか。

こういう問題は海外を目指す方々なら多かれ少なかれ考える事だと

思います。

 

好き嫌いで言えばバンコクみたいな天国とパキスタンのような地獄

みたいな独断と偏見の世界になりますが、それとは別に赴任先に

よる人事評価上の優劣はあるのか。。

 

これ色々な方と話しましたが、やはり程度の差はあれどあるという

のが90%以上でした。

例えばある日系自動車メーカーの駐在員は「うちは伝統的に北米

経験者であるアメリカスクールが出世頭だったけど最近中国経験者

であるチャイナスクールで固まった」と仰ってました。

そうあのメーカーです。

 

これは業界や社風など様々な変数が絡みますし、上記の自動車

メーカーのように社長のカラーで一気に変わったりもします。

なのでこうと決めつけが一番良くないです。

 

日系と外資系でも違います。

ご存知の通り外資系は市場の有望さという分かりやすい尺度が

多く、インドや中国などにエース級を投入してきます。

一方日本は仕事のレベル感や日本企業がどれだけいるかなどで

やはり先進国にエース級を入れて東南アジアなど新興国が次、

中国やインドは躊躇するところが多い印象です。

 

だからだめなんだという見方もありますが、これを踏まえてどう行動

するのか考える方が生産的です。

 

例えば僕の会社の場合にはインドに10年以上駐在している方が

います。彼は逆張り戦略で先進国など入れ替わりの激しいところ

ではなく、希望者の少ない国をあえて選んで且つ代わりの見つけ

にくさを利用して今では第一人者です。

 

好き嫌いだけではなく序列もきちんと把握した上で自分の立ち位置

をどう確保していくのか。

そこがポイントになります。

海外駐在に向き不向きはあるのでしょうか?

この質問は東南アジアの駐在員として働く僕も良くされます。

 

個人的な答えは「ありません」。

良く言われるように社交的で現地人との人脈を気付ける人、海外生活

でもストレスを感じにくい人などありますが、本質的には関係ありません。

多少慣れたり、自分なりに働きやすく感じるまでにかかる時間が短い

かなという程度。

 

メンタル面では日本で働くよりずっと楽なのはほとんどの方に共通です。

忖度はしませんし、働く目的は金を稼ぐことだけ。

分かりやすく単純です。

 

また、定時になったらさっさと帰るのが常識ですので、退勤後の

時間は完全にプライベートです。

 

仕事に関して良い意味で緩いスタンスですので会社でけんかしても

仕事が終われば関係ありません。

すぐ仲良くなれます。

 

もちろん会社への忠誠心なんてコンセプトはありませんので、

転職の相談なんかもしょっちゅうされますね。

 

昔とは違って駐在員も歯車の一員ですから仕事も多岐にわたります。

日本と違うのは駐在員は一人何役もこなすこと。

駐在員であれば日本の本社がいかに精巧に役割分担されているか

思い知らされます。

 

でもそれは自分の良さを出しやすいという事でもあるんです。

営業、経理、商品企画、事業企画、原価企画、購買、開発など色々

なところに駐在員は垣根を越えてアクセスできます。

支社長は普通駐在員には自分と同じ立場で考えて行動すること

を求めますので、越権行為やセクショナリズムというものがありません。

 

寡黙な人、社交的な人、繊細な人、おおざっぱな人、コミュニケーション

が得意な人、集計が得意な人、それぞれの人がそれぞれの持ち味

を活かして業務に取り組めるし、それを求められているというのは

日本本社とは違うカルチャーショックを受けるはず。

 

そういう意味で向き不向きはないです。

逆に英語苦手、コミュ力自信がないなど自分で枠を作って駐在員として

海外で働くのを諦めるというのは間違った考え方だと思います。

 

駐在員になったら自分の気付いていなかった自分に会えるものです。

是非枠を作らず挑戦してほしいと思います。

 

僕の様に東南アジアで駐在員として働く以外にも海外で働く方法の

代表例として現地採用というのがあります。

一部駐在員の待遇と違うからだめだという意見がありますが、全然

そんな事は無いと思います。

 

最大の利点は実は引く手あまたということです。

これは駐在員というのは色々経費負担が大きく、実際にもらっている

のは1000万円程度でも会社としては税金や保険含め2000万円以上の

負担が普通です。

要は負担が大きい。

それに住居など雇用していない駐在妻という単なる足手まとい(失礼)

の分やその子の教育負担も担う場合が多く、どこの企業も駐在員は

削減の方向です。

 

一昔前のように海外生活が珍しい時代と異なり、たくさん日本人が

海外に出ている時代。

現地採用で雇って駐在員業務をさせる傾向はどんどん加速しています。

もともとアメリカの企業が始めたものですね。

 

実は僕の会社でも他の日系企業で働く現地採用の日本人の方は

ヘッドハンターに頼んでリスト化してもらっています。

駐在員は相手にしません。

他社も同様で私も相手にされません(笑)。

 

現地採用の方は駐在員のように3年や5年で帰任ということはない

ので会社としても安心ですし、何よりガッツが違います。

それでいて給料は現地スタッフと同じだし、住居なども現地スタッフ

同様自己負担ですから会社としては最高。

 

日本人のサークルやパーティなどではまず現地採用の方を各社チェック

します。不思議なもので雰囲気で分かるんです。名刺交換に個別接待と

進むのは、駐妻さん達が主人より下だわと見下す方々だったりするんですね。

 

駐妻さんたちは日本人同士で奥様会というアホな集まりをしては金を

浪費しますが、現地採用の方の奥様は現地スタッフの奥様とつながって情報

を取るようなたくましい方が多いのでめちゃくちゃ役に立ちます。

 

僕の会社にも3人現地採用の方がいらっしゃいますが、ハングリー精神

が旺盛で良い意味で惹かれますね。

昇給UPも大きいです。

奪い合いですからね。

僕も現地スタッフは部長クラスまで人事評定を担当しますが、現地採用の

方は特別で担当だろが課長だろうが支社長の担当。

大体支社長が折れます。(笑)

 

なので日本でネットの情報をうのみにするのではなく、視野を広く海外を

目指してほしいと思います。

世の中どんどん進みます。

昔みたいに背広来てビジネスクラスで飛んできて専用車で移動するなんて

いう人間は真っ先に切り捨てられますから。

 

海外で駐在員として働いて日々忙しさを実感しています。

これは文化の違いでもあるのですが、日本の場合には、誰の仕事

でもないけれど誰かがやればうまく仕事が回るというものは、気付いた

人が率先してやってくれるようになってます。

 

でも海外ではそうではありません。

だれが何をするのかという職務定義がしっかりしていて、それ以外

は基本やりません。

これは仕事の責任と権限を明確にするのには良いのですが、隙間

にある作業は駐在員がやることが多いです。

日系の特徴ですね。

 

そういう忙殺される中では、長期的に自分はどうありたいのか、

という想いは非常に大切です。

 

仕事ができる人は仕事が集中するので取り合いになります。

ここで敵が外にいるのを忘れて内部でいらぬけんかを管理職同士で

したり、自分の頼んだ仕事はまだかと追い詰めてしまったりすれば

大きな失敗になります。

 

僕は過去の反省で、今は部下の能力を引き出すことだけに集中

するようになりました。

雑用や他部門の仕事であっても、その人がやりたいと前向きだった

り、長期的に見てその人のためになるなら自分の想いは二の次。

 

部下の方が優秀という視点で押さえつけないように自分を戒めて

います。

駐在員の任期は長くないので、自分の成果を出そうと部下を疲弊

させる方も多いですが、現地スタッフは駐在員が変わっても会社

の戦力になってくれますから。

海外駐在になって僕は自分の良い面や嫌な面に気づくことが多いです。

分かっているつもりでも分かっていなかった自分に気づくのはやはり

大切な事だと日々実感しています。

 

最近自分は嫉妬深いというか束縛したい気持ちが強い事に気づき、

嫌だなと思う反面気を付けようと思っています。

 

日本でも管理職だった僕ですが、東南アジアで仕事をするようになり、

自分の一面に気づくことができました。

これは日本にいる時は、部下の方々が僕を観察して空気を読んでくれ

ていたんだなと思い知らされます。

 

こちらの現地スタッフは素直ですから、僕の上司と勝手に話して知らない

間に別の仕事をしたりします。また別の部門の依頼を管理職の僕を通さずに

勝手に引き受けて、挙句僕の指示に時間がないと言います。(笑)

 

そういう時にいらいらしてしまうんですよね。

何で僕を差し置いて。。

僕は何なんだ?みたいな。。(笑)

 

日本で管理職をしていた頃は全くそんな事は無く、自分はさっぱり

した性格だと思ってました。

 

実際は日本にいる時は部下の方々が僕の性格を観察して、嫌な思いを

しないように、メンツをたててくださっていたんですね。

部長から指示されても課長の僕にきちんと報告・相談をしてくれ、

僕をたててくれていたことに気づかされました。

 

上司として部下に気を遣わせてしまっていたんだなと反省。

なかなか自分では気づけませんでしたが、海外で働くと容赦なく

自己認識を新たにさせられますね。