【K-Pop】K-popアメリカ進出の隠れた動機 | アカデミアからのぞくJ-POP, K-POP, HIP-HOP

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このブログではアカデミックな立場から(主にアメリカで)どのようにJPOP, KPOP, HIP-HOPが認識・議論されているかを文献なども紹介しながらお話ししていきます。のんびり書いています♪

こんにちは!

 

本日は、

 

 

K-popアメリカ進出の隠れた動機

について。

 

K-popのKというのはブランド戦略のKであり、

韓国の伝統や文化へのこだわりではないことは

明らかで、これは英語論文でも言われています。

 

What Is the K in K-pop?
South Korean Popular Music, the Culture Industry, and National Identity (John Lie, 2012)

 

このような論文は2012年の時点ですでに

発表されていました。

が、やっぱり「韓国産」だから韓国文化であることには

違いない。

そういう議論はいつもされていて、一つの論文で

言われていることが絶対的に正しいというわけでも

ありません。鵜呑みにしないことが大事。

 

ですが、論文の価値はそれぞれの研究者が

かなり細かく調べて分析した結果なので

それなりに評価されるべきものだと思っています。

一つの意見として参考にできると思います。

 

さて、ここ最近のK-popアーティストたちの

グローバル規模での活躍がとても目立ってきて

いますね。

 

Jennie かっこいい。

 

Blackpinkを見ていると特に

感じます。

この人たちはすごいですね。

もう、K-popじゃなくてPopですね。

 

ですが、矛盾もあって、欧米に

行っても、コーチェラで

堂々とステージに立って喝采を

浴びても、やっぱり欧米から見ると

K-popの枠に入れられる。

K-pop勢は欧米になりたい(あえて、「なりたい」と

言っておきます)のに、全然なれません。

むしろ、活躍すればするほどK-popすごいね、となる。

Blackpinkの方々の真意はわかりませんが、

アメリカで活躍すること=成功

それは理解できます。

アメリカ市場は大きいですから。

 

韓国の場合、欧米というか「アメリカ」です。

Korean Warからの駐米軍の影響もあり、

やはりアメリカ志向は強いことは確かです。

純粋にアメリカに守ってもらっている

救世主だという集団的意識が強い。

日本に米軍が駐在しているのとは

また違う。

日本もアメリカへの憧れはありましたが、

歴史を調べると韓国が「なぜ」日本よりも

強烈なアメリカ志向となったのか。

なぜ自国の文化をほぼ捨ててまで捨て身で

アメリカ崇拝してしまうのか?

歴史、そして近代史をしっかり見ると

わかると思います。

日本と同じではないです。

こういうところからも

J-popとK-popは違うもの、という結論が

出ます。

が、K-popの場合よくも悪くもJの影響を

受けています。しかも複雑。

 

Korean popular music

in-between: Identity

strategies between Japanese

style and American standards

in the 1960s (Sungmin Kim, 2022)

 

こちらの論文では面白い

考察がされています。

 

色々理由はあるのですが、

まずはK-popは「アルゴリズムの

誤作動」と私も言っていましたが誤作動

する意味がこれを読んでわかりました。

そもそもが矛盾だらけで発展した

ものだったからです。

 

60年代というと韓国は日本の植民地から

解放され徐々に自国のアイデンティティーを

築いていく過程にありました。

日本のポップカルチャーが厳しく取締られ、

禁止され、センサーシップもかなり厳しかった頃。

(センサーシップは今も多少ありますね)

とにかく日本のものは排除していた時代。

韓国のアイデンティティーを築くのに

日本色は必要ない!という時代。

それでも、日本の演歌・歌謡曲を隠れて

聞いている人たちがいて、なぜか根強い人気が

あり、日本の演歌の強い影響を受けたTrotという

ジャンルが生まれました。

しかし、Trotも日本の色が付いている!と批判されたりも

しましたね。

ところが、韓国でも坂本九さんのSukiyakiは受け入れる。

滝汗え?坂本九さんは日本人だよ・・・

でも、Sukiyakiはアメリカのビルボードチャートインしたから

和色(日本色)ではなくグローバルミュージックだ、という。

すごい解釈。こういう矛盾。

 

Korean War以降はアメリカ軍の影響もあり、

どんどんアメリカ大好き文化に発展していく

わけですが、これも、日本色アレルギー反応から

起こったものだと・・・この論文には書かれていて、

(すみません、この表現は私なりに

解釈をしやすくするために使っていますが、

論文はちゃんと分析されていて冗談のようには

書かれていません。念の為。)

まさに、K-popの発祥、発展、欧米化につながるな、

と感じたわけです。

 

つまり、強いアメリカ志向は「日本への抵抗」

から来るものだった、ということ。

歴史において「真実」という言葉が

出されますが、真実を事象とだけ捉えるのか、

「記憶」と捉えるのかによって解釈は

違います。「誰の」記憶なのか。国・人によって

違うから歴史的解釈も違う。

 

いくら取っても取りきれない日本の

影響。反抗してもなぜか影響を受けた

日本の音楽を聞いてしまう。

恋人と喧嘩して「別れる別れる」と

騒いでいるのに、やっぱり好き・・・

 

いや、それは自分たちのものではない。

そこから離れるためにアメリカだ。

アメリカこそ私たちの救いだ。

この苦しい葛藤。

アメリカ崇拝は日本から離れるための手段。

それは日本への憎しみから来るものだったのか!

という一つの解釈はできると思います。

 

怨念です・・・滝汗

元々、根っこの部分では日本から離れたい

というのが原動力となっています。

若い方々は知っておいた方が

いいかもしれない。

近代史をしっかりと学びましょう。

なぜK-popがこのような形になっているのか。

なぜ、『アメリカ』で成功することに

ことさら価値を見出すのか。

深い深い根の部分で日本への抵抗が

あるということが言えるかもしれません。

無我夢中で日本色を韓国から排除

していたエネルギーと同じだった。

意識の中にそれがプログラムとして

組み込まれてしまっているのです。

それで私たちが嫌いだ!と騒ぐんでは

だめですよ。それでは発展がない。

「知っておく」というのは「知らない」より

いい、という提案です。

そこからはそれぞれが考えていかなければ

ならない問題です。解釈に振り回されてしまわ

ないように気をつけたいところですが。

 

別にそんなことJennieは考えないで

一生懸命パフォーマンスをしているし、

アーティストには何も問題はないんですけどね。

アメリカ、アメリカ!となるK-pop勢の

原動力が実は歴史から刻み込まれてしまった

抵抗から来るものだった。そこに

日本が絡んでいるかもしれないと

思うと考えさせられますね。

 

それではまた。