K-POPを考察する上での注意点
J-POP側(J-POPをすでに研究していた人)
からK-POPを考察するのと、
K-POPだけを見てK-POPを考察するのとでは
視点も論点もやっぱり違ってくるな、という
印象があります。
K-POP熱に動かされて、K-POPだけを
追って、発表された論文をみると、
例えば、
いきなり「少女時代」の
アメリカデビューの話からスタート
するものもあったりします。
「少女時代」はアメリカの人気トークショーに
初めて出演したK-POPグループだとされます。
アメリカで発表された英語論文だと、
K-POP目線だけではなく、アメリカ目線
もかぶさっているので、アメリカデビューし、
人気が出たグループの話から始まります。
そして、「カンナムスタイル」が出てきて、
一気にBTSまで飛んでしまいます。
しかし、J-POPの研究は歴史が割と長い
ので、そちらに触れてみると
これまでの研究と合わせて議論されている
方の意見に出会えます。
ですので、ここでジャニーズのトレーニングシステムが
K-POPのテンプレートとなっていることが
わかります。
「アメリカ」とのハイブリッド文化も
日系二世というジャニー喜多川さんの
背景を知ればわかることも多々あります。
ジャニーズを理解することで、
なぜK-POP(グループ)が今の
形態をとっているのかも理解できるわけです。
しかし、K-POP関連の英語論文に
ジャニーズがなかなか出てこない・・・。
いろいろ調査をしてみると、
100ページ以上もK-POPとJ-POPの歴史を
考察している大学の卒業論文にも、全く
ジャニーズに触れられていないことも
あり、さすがに驚いてしまいます。
すでに1960年代に、
ダンスボーカルグループをプロデュースしていた
ジャニーズの影響というのは大きいです。
歌を歌い、ダンスしながらポジション移動も
行われていました。
そして、ダンスと歌を組み合わせたグループは、
ジャニー喜多川さんのオリジナルなアイデア
なわけです。そのようなグループは当時
どこにもなかったのです。
その引用がない論文が割と多い。
ギャップを感じます。
とにかく、アメリカでのBTSの成功が
いかにすごかったかということを
思い知らされます。
そして、議論として危ういのは、BTSの
人気に基づいて現在のK-POPを結論づけて
しまうことです。
2019年の時点ではそうでも、
たった3年でも変化をしています。
なかなか変化のスピードが
遅いJ-POPと違って、変化の
スピードが速いのがK-POPだと思います。
(そのスピードも今後変化するかもしれない)
例えば、2019年の時点で、ジョージメイソン大学の
Gyu Tag Lee教授はこのようにおっしゃっています。
Lee教授がおっしゃっていることをまとめると、
「BTSは『韓国人』アーティストとしての
韓国のアイデンティティを
強調しながらも、世界を目指しています。
グループメンバーには一人も、韓国系アメリカ人や
韓国人でないメンバーはいないのです。
全員が韓国生まれの韓国人です。
そして、彼らは、2017年のバンプロデューサーの
インタビューにもあるように、
意図的に外国人の作品で
パフォーマンスするのを
避けているし、
韓国人以外の消費者を満足させるような
英語歌詞使用を避けているのです。」
Lee教授は間違っていません。その時はそうでした。
2017年のプロデューサー、バン・シヒョクさんの
インタビューをもとに発言されているだけです。
確かに、2017年までのBTSはそうでした。
(ただ・・・日本マーケット用に
日本語バージョンは出てましたが・・・
韓国人以外の消費者とは、日本人もそうだと思うんですが。
英語の方が規模が大きい、という区別でしょうか?)
しかし、2017年以降、それが変わります。
まず、Steve Aokiとコラボ。(→外国人とコラボ)
(その後も楽曲で外国人とのコラボが続く)
2020年、2021年にリリースされた
Dynamite, Butter, Permission to Danceは
全英語歌詞。
BTSの各メンバーの真意はどうであれ、
韓国人であるというアイデンティティーを
強調しすぎないようにする方向(最初の主張と
真逆の方向)に
完全にスイッチが切り替わりました。
つまり、このような変化によれば
「BTSが韓国人であるという
アイデンティティーを強調しながら
英語歌詞を避けて
アメリカで人気がでた」と、
言い切れなくなります。
今後はBTSのメンバーも兵役に入り、
以前と同じ活動はできなくなります。
BTSの活動状態が変わったことで、また
K-POPの動きが変わってくる可能性も
あると思います。
また、韓国人メンバーにこだわる
という主張も、たまたまBTSはそうだった
と思うのですが、韓国系アメリカ人や
外国人がメンバーになり、人気が出ている
グループも出てきています。
K-POPテンプレートを使う日本人グループも
出始めました。
「韓国人メンバーにこだわらない方が
売れる」となるかもしれない。
そうではなく、
K-POPが、また韓国人メンバーにこだわる
方向に戻るかもしれない。
結局、BTSが特別だったのかもしれない。
この3年間の変化を目の当たりにすると
パンデミックの影響もあったのかもしれないですが、
現時点ではっきり結論づけてしまえない
部分があると思います。
今後の動きに注目しながら
論文も慎重に精査していきたいと
思います。
ではまた次回!
〜Your Advisor Mimi