民法では、夫婦の財産につき規定をもうけています(夫婦財産制:民法755条)。

 夫婦財産制には、
(1)夫婦財産契約による契約財産制
(2)法定財産制
の2つがあり、婚姻届を出す前に(1)の契約がなされなかったときは、自動的に(2)法定財産制が適用されることになります。

 婚姻後は、原則的に夫婦財産契約の内容を変更することはできませんが、契約取消権(民法754条に「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」とあります)を行使することは可能です。ただし、第三者の権利を侵す場合は、取り消すことができません。

 また、離婚届は出していなくても婚姻が実質的に破綻している場合は、取り消すことができません。

 ご参考まで。

 4年前に夫の不貞が発覚した。
 本人もその事実を認めている。

 すったもんだしたが、いろいろな事情もあり、離婚せずにいままで結婚生活を続けている。夫が白状した後は、うまく隠れて浮気をし続けているのか、女と別れたかどうかは定かではない。なんか、気持ちがすっきりしない…この際、女に対して損害賠償請求をしてやろうか。

 こんな場合、慰謝料を請求できるでしょうか。

 夫婦には貞操の義務があり、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害した不法行為責任を負うことになります。(最判昭54.3.30より)

 しかし、不法行為による損害賠償の請求権は、被害者がその損害及び加害者を知ったときから3年間行使しないときは、時効により消滅します。(民法724条より)

 したがって、上記の場合は、請求できません。正確にいえば、相手が時効を主張すれば、請求権を失うことになります。

 時効の起算点は、不貞行為があった時点ではなく、あくまでも「知った」ときになります。あなたが被害者なら、その事実をいつ知ったか、よく確認しておきましょう。
ひどい男もいたものです。

A女とB男は昭和37年に結婚し、二女をもうけました。

B男の学歴詐称と無資格教師の事実が発覚してから夫婦の間に不和が生じ、昭和44年A女は離婚を決意し実家に帰りました。その後、A女はB男に対して離婚と財産分与及び慰謝料を求めました。

A女は裁判を提起。
昭和53年には東京高裁で「破綻の主な原因は、B男の不誠実で無責任な言動にある」として、A女の請求のうち、慰謝料300万円、財産分与1000万円を認容しました。

この財産分与の中には、別居以来のA女と二女の生活費、養育費の生産相当額として400万円が含まれています。

その後、B男から最高裁に上告したのですが、棄却されました。

この判決は、夫婦の一方が過度に負担した婚姻費用の清算のための給付をも財産分与に含めることができることを明示しました。


なんともひどい男ですね。妻の失意も相当なものだったでしょう。B男はきっちり慰謝料300万円と財産分与の1000万円を支払ったのか気になるところですが、知る由もありません。


婚姻費用とは

離婚に至るまでに別居生活に入ることが多くあります。別居中の生活費はどのように負担すればよいかは、難しい問題です。

民法には次のような規定があります。
 第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
 第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

つまり、夫婦は同居してお互いに助け合って生きていかなければならないと定められているのです。

しかし、なんらかの理由で夫婦が別居するようになってしまった場合の生活費の分担はどうすればよいでしょう。

夫婦と子の共同生活で、その財産・収入・社会的地位に応じた程度で社会生活を維持できるための生計費のことを「婚姻費用」といいます。

つまりこの問題は、夫婦間の相互扶助(民法752条)と親の子に対する扶養(民法877条1項)という二つの問題に関わるものです。
「慰謝料」とは、相手が浮気をした、愛人を作った等により受けた精神的苦痛を償ってもらう意味で要求するものです。いわば、こちらが受けた怒りや悲しみに対しての弁償金ですね。

 慰謝料の算定には様々なことが考慮されます。
 重要な要素としては、
 (1)離婚の原因と責任
 (2)婚姻期間
 (3)社会的地位
 (4)支払能力
 (5)自活能力の程度
   等が挙げられます。

 不貞行為といっても、反復継続性があるか、その期間はどれだけか、あるいは「遊び」程度だったか、離婚を覚悟のことだったかによって違ってくるでしょう。

 ここにひとつのジレンマがあります。相手の不貞行為がもとで結婚生活を破綻に追いやられたのですから、離婚することで、こちらが貧乏にあえぐようになるのは、理不尽です。
 かといって、年収500万円の相手に慰謝料5,000万円を要求できるはずもありません。調停・審判・裁判に至らないまでも、現実的にはどのくらいの額で話し合うかという「線」が重要です。ジレンマの解決のためには、過去の統計、判例の研究も必要になってきます。
 離婚における重要な問題、財産分与につき触れておきます。一般的に考えられる例として、夫から妻へ財産を分与することとして考えてみます。

1・妻が専業主婦の場合
 家事も重労働であるにもかかわらず、以前は、家事労働、主婦労働は「内助の孝」程度の評価しかありませんでした。そのため、財産形成に対する寄与度は3割程度でした。しかし現在では概ね半分程度の寄与度が認められることが増えてきました。

2.共働きの場合
 妻が夫同様に正社員でフルタイム労働している場合、共有財産形成に対する基本的には寄与度は2分の1ですが、妻は家事労働も加わるため、妻の寄与割合を6割以上認定されるケースもあります。

 概ね上記のような傾向がありますが、協議離婚する場合は、話し合いの中でせめぎあいや譲歩の中で決めていくことになります。
 「財産分与」は、離婚に当って重要なファクターの一つであり、話し合いの中でもお互いが神経をピリピリさせる部分といえます。なにしろ、その後の経済生活に大きな影響を与えることなのですから。

 夫婦の財産は以下の通り、大きく3つに分けられます。
(1)特有財産
(2)共有財産
(3)実質的共有財産

 ひとつずつ、見ていきましょう。

(1)特有財産
・婚姻前から各自が所有していた物
・婚姻中に一方が相続したり、贈与を受けた物
・各自の装身具等、社会通念上各自の専用品とみられる物

 結婚前から持っていた預貯金やクルマは、特有財産です。独身時代にコツコツ貯めて買ったBMWや預金の300万円は、自分の物です。

嫁入り道具は、妻の特有財産になります。

(2)共有財産
・夫婦が合意で共有とし、または共有名義で取得した財産。婚姻中に取得した共同生活に必要な家財・家具等

(3)実質的共有財産
・名義は夫婦一方に属するが、実質的には双方の共有に属する財産。

 婚姻中に夫婦が協力して取得した住宅その他の不動産、共同生活の基金とされる預貯金や株券等で夫婦の一方の名義になっているものがその典型です。


 テレビを見ていると「あの○○が離婚慰謝料3億円を支払った」といった話を聞くことがあります。

 それならば、自分の場合も多大な精神的苦痛を受けたことに対して慰謝料5,000万円くらい請求してもバチは当たらないだろうと考えたくなりますが、多くの場合それは無理な話です。 そういったニュースでは、多くの場合、「財産分与」分もひっくるめて「慰謝料」とよんでいるようです。

 財産分与とは、
  ・結婚生活で夫婦二人で築き上げてきた財産を公平な基準で精算すること
  ・離婚後生活の基盤が弱い側への扶養
 という二つの意味合いを持っています。

 また、場合によれば過去の婚姻費用分担額の清算もされることがあります。
結婚(婚姻)とは、役所に届を出すことで法的に成立します。離婚も役所に届を出すことで成立します。

そこで気になるのが、「内縁」と「同棲」です。両者とも法的な届出とは無関係です。

まずは、「内縁」。
内縁は、何らかの事情で婚姻届を出していないだけであり、実態上の夫婦関係にある状態のことを指します。二人で町内会の役員を務めたり、結婚式や葬式に出席したりして、普通夫婦単位で行動することを日常的に二人でしているならば、これは内縁の夫婦と呼んでも差し支えありません。

一方、「同棲」とは何でしょうか。
「同棲」とは、一時的に男女が共同生活を送ることであり、「内縁」とは異なり、社会生活上の行為を二人共同で行うことはありません。男性が会社に出勤し、女性が家事をしながら帰りを待つというだけでは、「内縁」ではないのです。

それら以外でも「内縁」と「同棲」は大きく違う点があります。

それは、別れることになったときに、慰謝料を請求できるかという点です。

「内縁」は、事実上の婚姻(これを「事実婚」と呼びます)なので、同居を解消すれば、慰謝料や財産分与が認められます。子どもがいれば、養育費を請求できます。
 
一方、「同棲」は一時的に男女が同居していたことに過ぎないため、慰謝料や財産分与は発生しないのです。たとえ一方が生活費の大部分を負担していたとしても、それは単に共同生活を維持するためだけのことであり、解消したときに清算されるという類のものではありません。

相当昔になりますが、私は、歌謡曲で「同棲時代」(確か歌手は「おおしだれいこ」)という曲がヒットして、初めて「同棲」という言葉を知りました。昭和の匂いがプンプンする時代のことです。そういえば、「神田川」も同棲生活を描いた映画だったような…余談でした(笑)。
公正証書

こちらの要求は実現させたいが、裁判所に行くのは気が重い。

そんな方は、離婚協議書を「公正証書」にしておけば安心です。公正証書は、「契約の内容や一定の事実を公証人が聞き、それに基づいて作成される書類」です。

金銭の給付を求めるばあい、公正証書に「執行認諾文言」をつけます。そうすることで、確定判決と同じ効力をもち、強制執行をかけることができます。給料の差し押さえもでき、心丈夫です。
 相手から一方的に離婚を求めてきたら、どうすればよいでしょう。離婚届は、提出の際、身分を証する書面、たとえば運転免許証を添付することも必要なく、どちらか一方だけが申請しても受け付けてもらえます。もしかしたら、相手が勝手にこちらの名前も署名・捺印し、離婚届を偽造して提出するかもしれません。こちらとしては離婚する意思がありませんし、またかりに結果的に離婚することになるにしても、相手が別れたい理由、原因そして責任を明確にしておきたいものです。

<不受理申出制度>
 離婚届の無効を争うような面倒なことが起こらないよう、事前に手を打つべきです。そこで、相手から離婚の申出があったら即、自分の本籍地の市区村町に不受理申出をしておきましょう。不受理の取り扱い効力は6ヶ月間です。6ヶ月を過ぎると再申出することになります。
話し合いがダメになり、調停あるいは審判で結論が出ない場合に残された方法が裁判です。

調停や審判とは違って裁判を進めるには、きっちりとした法定の離婚原因が必要です。

法定の離婚原因は5つあります。

(1)不貞行為
(2)悪意の遺棄
(3)3年以上の生死不明
(4)回復の見込みのない強度な精神病
(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由
                     (以上、民法第770条より)
です。

その中で気になる言葉があります。(2)の悪意の遺棄とは何でしょう。なかなかピンと来ないかも知れませんね。

「悪意の遺棄」とは、
例えば…
・健康に問題のない夫が働かず生活費を稼ごうとしない
・配偶者を虐待して同居ができない状態にしている
といった状態を指します。

離婚原因が(1)~(4)に当てはまらないが、どうしても一緒に生活を続けることが耐え難い場合は(5)を理由にすることになります。
例えば…
・夫が定職を持たない
・妻が家事を疎かにして得体の知れないサークルの活動ばかりしている
というような場合が考えられます。

裁判離婚はあくまでも「裁判」なので、そのためには周到な準備が必要です。可能な限り証拠を集めましょう。夫(妻)と愛人の間で交わされたmailの記録だとか、夫(妻)が綴った日記等も証拠になります。