医療施設で使用されるほとんどの医療および手術器具は、耐熱性の材料え作られているので、主に蒸気により加熱滅菌されます。(現在CDCで示されている滅菌法は前回書きました)しかし1950年以来、低温滅菌が必要な材料(例えばプラスティック)で作られた医療器材と器具が増加してきた。

エチレンオキサイド・ガス滅菌は1950年代から熱と湿気に弱い医療器具に使われてきました。過去15年以内に、相当数の新しい低温滅菌システム(例えば、過酸化水素ガス・プラズマ、過酢酸浸漬、オゾン)が開発され、医療器具滅菌に使われてきました。

前回は過酸化水素・プラズマ滅菌について書きました。
今回はホルムアルデヒド滅菌について書きたいと思います。

メモ低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌器

LTSF
Low Temperature Steam and Formaldehyde sterilizer

メモホルムアルデヒドでの低温蒸気は低温滅菌法として、多くの国、特にスカンジナビア、ドイツ、イギリスなどれ使われています。処理には滅菌チェンバーに蒸発させられガスとして入れられるホルマリンの使用も含まれる。

濃度8~16mg/Lが70~75℃の運用温度で生成。

メモ滅菌工程
チェンバーからの空気を除去する初期真空

空気をチェンバーから一層するために真空ポンプを動かしてチェンバーに蒸気を投与する充填

充填物の加熱

ホルムアルデヒドガスの一連の振動と蒸気に続くステージ
ホルムアルデヒドは滅菌器と積載物から蒸気と空気により繰り返される交互の排除とフラッシングによって取り除かれる。

メモ利点
サイクル時間はエチレンオキサイドガス滅菌よりも速く、コストが安価である。

メモ欠点
エチレンオキサイドガス滅菌の方が浸透性でより低い温度で作動する。

低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌は生育する細菌、抗酸菌、バチルス、アトロフェウスとG.stearothermophilus 芽胞とカンジダ・アスビカンスに効果がある事がわかっている。

メモ注意
ホルムアルデヒドは発がん性があるとの研究があり、OSHAが以下のように規制しています。
作業域でのホムルアルデヒドの作業暴露限界は、8時間時間加重平均で0.75ppm
15分間の最大許容暴露は2ppm(短時間暴露限界)

ホルムアルデヒド蒸気滅菌システムは医療施設での使用についてFDAの認可はおりていません

(ここまでの内容はCDC2008年ガイドラインより)

メモまた最近では残留するホルムアルデヒドガス(HCHO)を触媒にて反応させ水蒸気(H2O)と炭酸ガス(CO2)に分解し、外部に排出せず庫内を循環し分解するシステム(循環式消毒ガス分解無毒化装置)も開発されています。

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循環式浄化方法の採用によりエアレーションを行わずホルムアルデヒドガスを外部に排出しない。また、外気を取り入れないことにより、それに含まれる水分によってパラホルムアルデヒド(刺激臭のある白色結晶)の重合反応を抑制する事が可能となった。
株式会社メデイエート様HPより抜粋させて頂きました)

メモまたゲティンゲジャパン株式会社様からもホルムアルデヒド低温滅菌法に対する安全性に関する報告がされています。参照:第34回日本手術医学会報告(2012年)低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌装置の有用性 鈴木ら 手術医学 2013 34(1)37-41(原著論文を確認中)

・・・今回検討をおこなったLTSEは、酸化エチレンオキサイドガス滅菌に替わる安全な低温滅菌法としての可能性が高い。滅菌直後の残留FA濃度が0ppmであることは、滅菌工程後の頻回の蒸気による洗浄に起因するものと考えられ、過酸化水素ガス滅菌に比較しても安全な方法であると結論する・・・
蒸気によるホルムアルデヒドを洗い流す、これが低温蒸気滅菌法の要であるとしている。

目ホルムアルデヒドを使用する滅菌法においては、残留の問題が課題となっている。

メモ厚生労働省騒動基準局安全衛生部における勧告

2002年3月15日職域における屋内空気中のホルムアルデヒド濃度低減のためのガイドラインではホルムアルデヒドの濃度を0.08ppm以下にするために対策を講じる事を求めている。
気中濃度が許されるのは0.08ppmが基準。
シックハウス症候群向けにこの基準が設けられた。

メモ特別化学物質障害予防規則

低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌においては平成20年3月26日厚生労働省事務連絡
「密閉方式のホルムアルデヒドガス滅菌器などに関する特定化学物質障害予防規則(特化則)の適応について」より特化則の適用から除外されている。
・局所排気装置及びプッシュプル型換気装置の設置は要しない
・作業主任者の専任を要しない
・作業環境測定の実施を要しない
・特性業務事業者の健康診断を要しない

メモ歯科におけるホルムアルデヒドの扱い等に関して

厚生労働省労働基準局安全衛生局

労働安全衛生士法施行令の一部を改訂する政令および特別化学障害予防規則などの一部を改訂する省令の施行に係る留意点について
ホルムアルデヒドの取扱いについて、周知徹底を図るとともに、作業環境測定の対象、作業主任者の選任および取扱いに係る発散抑制措置について具体的に示しています。これにより、ホルムアルデヒドを取り扱う医療関連の職場で働く労働者の健康も守られてきている。

メモホルムアルデヒドのメリットとデメリット(講習会発表よりまとめ)

デメリット
・刺激臭
・浸透力が強い

メリット
・安価
・殺菌効果が高い
・構造が単純であり簡単に無毒化

メモ低温上記ホルムアルデヒド滅菌に適さない器具材料

1.リネン
2.ガーゼ類
3.木製品
4.空気を含むスポンジ類

目ホルムアルデヒドを使った滅菌はエチレンオキサイドガス滅菌の代替えとして欠点を補う形で進化しているようである。時間の短縮や薬剤の無毒化など。

ホルムアルデヒドは毒性が大きな問題となっていたが、技術の進化により毒性も低減でき、環境や作業する医療従事者の安全も守られるようになってきている。一口にホルムアルデヒド滅菌と言っても、各メーカーの違いや同じメーカーでも機種によりその原理や特性、付随するデーターが違ってくる。使用する際にはそれらをきちんと理解した上で使用するべきである。

いずれにしてもエチレンオキサイトガス滅菌にしても、ホルムアルデヒド滅菌にしても薬剤そのものには毒性があるので厳重な管理と使用法を理解しなければならない。

まだまだまとめが不十分であるが、次回総括しながらまとめたいと思う。