モモ (岩波少年文庫(127))

岩波書店()
¥ 840
[5]大人になると別の形で心にしみるかもね。(2009-02-01)
ある本を探して本屋さんをブラブラしていた際、
たまたまカートに置かれていたこの本を見つけました。
小学生のころに、面白い本と有名だったな。
そんなふうに思いながら、
目的の本も買わずに思わず衝動買いしてしまいました。

有名だっただけに話の内容はネタばれで、
小学生のころはスルーして読まなかったのもこの本です。
たまたま手に取って読みましたが、
うわさ通りの内容ですね。大満足です。

子供でも十分に内容理解できると思いますが、
大人になってから読むと、また違うものを感じられるのでは。
個人的には、「時間は心で感じるもの」という考え方に
一番グッときました。

読み終わって間もないうちに再び開き、
何度も読み返しています。
何回読みなおしても飽きないのが不思議で、嬉しいですね。
読むたびに心休まる一冊です。

[4]児童文学ということで…(2009-01-26)
子どもでも楽しめると思いますが、
忙しい大人の方に読んでいただきたい物語です。

「忙しいのに本なんか読んでられるか!」
と思う人の方が考えさせられる事が多いのではないでしょうか。

残念なのは、
「児童文学」ということもあり、
平仮名が普通の本よりも多く、
少し読みにくいということです。

読んでいて、
テンポが出にくかったです。

「テンポが出にくい」と感じている、
自分自身の感覚自体を変える必要があるのかも知れませんが。

「時間」というものについて考えさせられる物語でした。

評価は、星4つです。
[5]レヴューというより、雑感ですが、(2009-01-24)
 柄にもなく、美しい描写から紹介したい。
 魔法の鏡はね、ひとりでのぞきこんだ人間から永遠のいのちをうばうだけなんだ。ふたりしてのぞけば、また死なないようになるんだよ。(中略)モモとジジはしずかにならんで、長いあいだじっと月を見つめました。こうして月を見ているかぎり、ふたりは永遠に死ぬことはないと、つよく感じていたのです。
 寺山修司は書いた。とりはとりでも飛べないとりは、なぁんだ?――それは、ひとり、というとりだ、と。人は一人では飛べない、けれど、二人なら飛べる、寺山はそう考えていたのだろうか? 
 この本の巻末に、佐々木田鶴子という人が、エンデとの思い出を回想している。これによると、「エンデ自身は書物を通じて東洋に関心があった」らしい。とすれば、やはり、可能性はあるかもしれない、と私は考えた。
 というのは、こういうことだ。私が注目したのは、エンデを異世界に連れていく役目を果たすのが、一匹のカメである、という点である。そして、その異世界は、〈時間〉と深く関わっている。異世界とカメと〈時間〉。三つを結びつけて浮かび上がってくるのは、日本の昔話、「浦島太郎」だ。つまり私は、エンデは、「浦島太郎」を意識しながら「モモ」を書いたのではないか、と考えたのである。
 〈モモ〉という名前も気になる。ひょっとしたらエンデは、日本の昔話「桃太郎」から、〈モモ〉という名を思いついたのではないか。〈モモ〉が〈時間どろぼう〉たちをやっつける話として、物語「モモ」が読めるとすれば。――そんなわけ、ないか。
 行き場を失った子供たちは、〈子供の家〉で、大人の言う〈役に立つ〉遊びをやらされる。子どもたちは、大人が教えなくても、空き箱の二つ三つがあれば、いつでも、冒険の航海に出ることができる。子供たちが自由に空想の翼をはばたかせるができる環境づくりこそが、子供たちにとっては、本当の意味で、〈役に立つ〉ことになるはずだ。どこを見渡しても同じ道路、同じ建物、同じ服、同じ考え、同じしゃべり方、同じ歩き方、なんだか、顔までそっくりに見えてくる。そんなの、いやじゃありませんか。エンデに、そう言われているような気がした。
 引用はしないが、ラストの描写が、とても、美しい。ぜひ、手にとってご確認のほどを。
 附記。この本の冒頭に、アイルランドに伝わる歌が載っている。私の勝手なイメージでは、アイルランドと言えば、ケルト信仰が思い浮かぶ。あるいは、エンデは、ケルト信仰も意識していたかもしれない。
[5]「残業依存症」から立ち直った、今の読後感(2008-11-18)
何人かの方が書いているのと同じように
子どもの頃は、誤解からずっと敬遠してました。
優等生の読書感想文御用達っぽかったし、
その感想からは、スローライフ的説教臭さも感じたし…

体調悪化と、我が子の出産に先立って、残業まみれの生活から足を洗い
(このご時世、かなりの勇気が必要でしたが)
ちょっぴりできた心のゆとりに、好きだった読書を再開した矢先、
文庫化にともない訳が新しくなったと知って読みました…

…本当に良いタイミングで出会いました。
子ども向けのファンタジーではありますが
私にとってはファンタジーとは思えないリアルさを感じました。
エンデすごいです。

もちろん、現実の社会にはモモのような
自分の代わりに、灰色の男たちから時間を取り返してくれる人はいません。
そこで、自分にとっての「人生の価値」を決め、せまり来る「時間どろぼう」と
実際に戦うのは自分自身なわけですが。

自分に科せられた仕事が1日に100だとしたら
「1日に120済ませれば、あとがラクになる」などと、誰もが一度は考えるはず。
でも現実には、翌日にもやっぱり仕事は100あって
永遠にラクにはならずに一生を終えてしまうんじゃないでしょうか…?

100の仕事を一生懸命やって、早めにその日の仕事を終える。
残りの時間は自分や家族のためにつかう。

それが実践できれば、この本の本当の面白さが味わえると思います。
大人こそ、ぜひ。
[5]小学生ではじめて読み(2008-11-04)

モモをはじめて読んだ小学5年生の時、これ以上無いほどのスリルを味わいました。まだ難しい本は読めない年頃でしたが、特に行き詰まることなくすらすらと読め、話の内容も掴みやすいものでした。

細い糸がはったような緊迫感を強く感じ手に汗が浮かぶほど胸が高鳴ったのをよく覚えています。

中学生になってからまた読んだときにはまた違った見方が出来ました。風刺された現代の流れや畳み掛けるような文、こまやかで美しい独特の世界観、無色でさびしい町の描写……どれも他とは違う素晴らしさに新たな発見など。

いくつになっても楽しめる作品ではないでしょうか。
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- はてしない物語 (下) (岩波少年文庫 (502))
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- 「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として (朝日文庫)

青い花 1巻 (F×COMICS)

太田出版()
¥ 1,000
[5]まさかの「ガール・ミーツ・ガール」がアニメ化だってさ!(2009-05-03)
「放浪息子」で性不同一性障害を扱った作品を描いていることで知られる
志村貴子氏の女子高を舞台にした作品。

なんとまさかの初アニメ化が決定したんですよ。ホント。
松岡女子高等学校に入学した「万城目ふみ」ちゃんと、
藤ヶ谷女学院高等部に入学した「奥平あきら」ちゃんは幼馴染。
小学生の頃はしっかり者のあきらが大人しくて泣き虫のふみを守っていた。
でも、ふみちゃん家の引っ越しで離ればなれに。やがて忘れていった。

が、2人が高校生になってすぐに運命的な再会が待っていた。
通う高校は別々だが「共に女子高」も何かの縁か?
ふみちゃんはひとつショックな出来事があった・・・・。
従姉妹の千津ちゃんが結婚してしまう。
実はふみちゃんは千津ちゃんと一線を越えた関係が・・・・・。
身体を許した相手の裏切りともいえる行為にふみちゃんは泣き崩れるしかなかった。

傷心のふみちゃんが高校で文芸部と間違えてバスケ部に入部してしまう切っ掛けとなった
先輩との出会いがあった。
同性愛の女の子と同性愛ではない女の子。
冒険の始まりが「ボーイ・ミーツ・ガール」であることは
宮崎アニメの名作「天空の城ラピュタ」を観れば明白であるが、
では「ガール・ミーツ・ガール」は何のスタートなのか?

付き合うことになった先輩との関係は親友となったあきらにも言うことを躊躇ってしまうような「秘め事」のようなもの。
実は先輩にも秘密があった。先輩は以前はあきらの通っている藤ヶ谷女学院高等部に通っていた。
でも、好きになった演劇部の顧問の先生に受け入れてもらえず退学した。
で、その頃の後輩の女の子に先輩を想い続けている子がいて、あきらの友人。

進むのは茨の道か?はたまたけもの道か?
「女の子」って男の子よりも同性愛に陥りやすいのかもしれないな・・なんて思った。
心細いとき優しくされたら・・・可愛い子を可愛がることも抵抗はないだろうし・・・。
そして「少女性」は陽炎の如き青春のごく一瞬の煌きにも似たものなのかもしれない。
人は「同じ場所に一瞬たりとも留まってはいられない生き物」なのだ。
だからこそこの作品ではそのせつなさが「一層映える」のである。

漂うのは「危うさ」である。嵌りやすく、惑いやすいのだ。



[5]小さく可憐な花達(2006-10-09)
内気で泣き虫なふみと、明るくしっかり者のあーちゃん。
幼い頃大の仲良しだった二人は、一時交流が途絶えたものの高校生になって再会。
別々の女子高に通いながら、再び親交を深めていきます。

女の子同士の恋愛と友情を描いたこの作品。
思春期の少女達の揺れ動く心情を実にシンプルに叙情的に描いています。
現代モノですが、何となくレトロな雰囲気も漂ってます。
鎌倉の町並みやカフェ、あーちゃんが通うお嬢様学校などクラシカルで素敵です。
あーちゃんがとても可愛いです。
ふみの道ならぬ恋を理解し、時に叱咤激励する。要所々々で懐の深さを感じさせます。
ふみにとってあーちゃんは恋愛対象じゃないけど、多分誰よりも特別な存在。
ふみの心の中に咲く、小さくて愛おしい青い花―。
あーちゃんがこの先どう恋愛に絡んでくるのか楽しみです。

ところで第一話のタイトル『花物語』は、吉屋信子先生の少女小説のタイトルですね。
(あとがきで志村先生が記念館を訪れる場面があるが休館だった)
吉屋文学はまだ読んだ事ないのですが、これを期に彼女が描く「Sの世界」も読んでみたくなりました。
[5]とってもさわやか!(2006-05-22)
んーっ、なんともさわやかな恋のはなしです。

ラブコメとちがって、(自分は全体的に笑いが強いものを、ラブコメかなぁと思うので)大げさかも知れませんが、上品でオシャレかと。

それに背景(特に木陰が)キレイだなぁって感じます。
で、最後に、読んで損はないですよ!
[5]おすすめ(2006-05-13)
――わたしの好きな人が、女の子だったらどうする?――
活発な女の子と控えめな女の子、彼女らを中心に物語は進んでいく。
泣いたり、怒ったり、元気になったり、そしたらまた泣いちゃったり。
喜怒哀楽の激しい女の子の、もやもやだけど美しいお話し。

[5]たとえば、りんどうのような(2006-03-06)
 淡々とした展開と、シンプルな線でいきいきとした性格を持った人物を効果的に表現することで人気を集める志村貴子さんの最新作です。
 前作『どうにかなる日々』とはガラリと雰囲気の変わった漫画で、高校一年生となって数年ぶりに再開した二人の幼なじみ、「万城目ふみ」と「奥平あきら」を主人公として物語は進行します(どちらかと言えば、よりふみの方が主人公らしいですが)。志村さんが『放浪息子』や『敷居の住人』などの漫画で培った「まだ大人になりきれない、時に性に戸惑わされる少年と少女」や、学校などでの「なんてことない風景」への洞察心と、その独特の描き方を存分に生かしており、本作はどこまでも綺麗で、けれどもたまにズキッと心の痛みを感じさせるものとなっています。
 思春期というのは楽しいばかりではけっしてけっしてないけれど、やはり何物にも変えがたい日々なのです。ヘッセの『春の嵐』の中で、こういった意味の言葉がありました。志村さんが彼の『春の嵐』『青春は美わし』といった題を引用しているのも偶然ではないのでしょう。他のものに関しても元ネタを調べて、読んでみるのもひとつの愉しみだと思います。
 主要キャラはみな女の子なのですが、安易な萌え漫画でも百合でもなく、安心して人に薦められます。通う学校の違う二人の生活風景、心境を、うまく交錯させ、「この気持ちわかるわ~」と読者に言わせつつもすぐ次の展開を淡々と用意する。こういう漫画を描く上で、志村さんの右に出るものはいないでしょう。それぞれの学校での美しい生活風景、ふみとあきらの二人の過去の情景、これまでに何があったのかを考えさせずにはいられない『深い』登場人物、味わえるものはたくさんあります。
 有名な少年誌の漫画などしか読まない人にはちょっと読みにくいかもしれませんが、いったん慣れた人や漫画を愛好する人には、志村さんがあとがきで言う「なんとなくステキ」といった感覚がわかると思います。バラのような派手な美しさはありませんが、野原にひっそりと青く咲く、りんどうのような作品です。
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- 青い花 4巻 (F×COMICS)
- どうにかなる日々 (1) (Fx COMICS)
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論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

角川学芸出版()
¥ 740
[5]基盤を持つ大切さ(2009-01-27)
本屋にも、このアマゾンにも、「金持ちになるための本」が一生かけても読みきれないほど置いてあります。
しかし昨今の不景気、この本の山を見るにつけ「この本は今の不景気に適応できるものなのか?著者はたまたまバブルで儲けただけで、今日現在は困窮しているのではあるまいか?」と疑わずにはいられません。
渋沢栄一は明治の偉大な実業家です。彼は常に論語を携え、迷ったときは論語を開き、その教えに背くかどうかで決断したと書いています。商業と道徳は相反するもの、汚いことをしなけりゃ儲かるわけがないという考えは渋沢栄一の時代以前からも普通にあったようですが、彼はそういう考えは江戸時代に武士が商人を低く扱った弊害で、文明開化の時代には商人も武士道精神と清廉な考えを持たなければいけないと考えていたようです。
私も商業と道徳は相反すると思っていましたが、少なくともこの本を読んで、その清廉潔白な考えには圧倒されました。この、100年前には確かに存在し、今でもその名を汚していない偉大な実業家の著作を読まずして、10年後には忘れ去られているような詐欺師(かもしれない人)の皮相的な金持ち本に小遣いを費やすのはいかにも残念に思われます。
いかなる荒波の中においても、バイブル(ここでは論語)を堅持し、それに従うこと。不安な現在の人間にも時代を超えて語りかけてくる渋沢栄一に、学ぶことは多いのではないでしょうか。
[5]渋沢栄一の待望の書(2008-11-08)
渋沢栄一の本は「論語講義」をわかりやすく訳した、竹内均さんの「論語の読み方」を何度も読んだことがありました。渋沢さんは、「論語」を実学として生かして大成された方だけあって、その読み方はとても新鮮でした。

道徳の本という、堅苦しいイメージを払拭してくれ、なおかつ本当に「論語」を学ぶというか、身につけることの大切さを教えてくれます。

渋沢さんが、「論語と算盤」という書物を著されていることは、以前から知っていましたが、いまだに読んだことがありませんでした。今回、文庫本として出版されたことは望外の喜びでした。読み進むうちに、日常の仕事や生活を送る中で、どのような考え方をもって身を処していけばよいかが、沁み込むように心に響いてきます。逆に道徳教育をおろそかにした、昨今の日本の状況と照らし合わせて考えるとき、もったいないことをしてしまったなあと思わされます。

日本人の美徳とされた、道徳性はいかに培われたのかを知るきっかけとして、最良の本であると思います。儒教に偏見を持っておられる方にこそ読んでほしい。
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ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

新潮社()
¥ 740
[5]兄の歪んだ欲動に魅入られた妹とその夫の愛と孤独な闘いと救済の物語(2009-04-06)
この3部作に出会えたことで、現在or未来の夫婦が例え一握りでも、離婚という形を取らず、また形骸化した夫婦関係でなく、お互いを支え愛し合える夫婦でいられたなら、小説とは何と大きな力を持ち得るのでしょう。

ある種の人間が持ち得てしまう歪んだ欲動、それは本書の第2次大戦中のソ連の将校・皮剥ぎボリスの欲動であり、自らの妹(主人公の妻の姉)を少女期に死に追い込み、更にその妹(主人公の妻)をそのsurrealな力で性的な方向感覚を狂わせて心身を破壊する兄(ワタヤノボル)が持つ欲動。そしてその歪んだ欲動に魅入られ絶望的な状況に追い込まれる夫婦。

そんな中、弁護士事務所で便利屋として働いていた負け組足る夫(=主人公=オカダトオル)が、エリート一家にあって孤独感を抱えながら育った妻(クミコ)への果てなき愛、何が起こっても何を言われても信じて疑おうとしない自らへの妻の愛、そして自らの力、それらを信じ、底知れぬ遠い暗闇の世界から妻を救い出す物語。

私は本書を読み初めて自らの罪の本当の深さと意味を、そしてそれが取り返しのつかないことを悟りました。もっと早く本書に出会っていれば主人公が妻を救い得たように私のそれもまた違っていたのかも知れません。この救済の物語に出会い、一組でも多くの現在or未来の夫婦が救済されることを願ってやみません。それはまた村上さんの意思でもあるように思えるのです。

[3]構成力の弱さ(2008-08-14)
日常の中に潜む些細な出来事が実は深い意味を持っている。その意味に気づくことは幸せなのだろうか?運命付けられているかのように受け入れるしかないいくつかの出来事。 透明な悪意に満ちた世界にパステル調の色彩のヴェールで紗をかける。そして人の心の奥底にそっとメスを入れる。独自の世界観を大上段に構えるわけではなく、静かに語りかけるように説き続ける筆者。
今、村上春樹を語る時に使われている此れらの修辞は、良きに付け悪しきに付けこの作品にこそ相応しいと思う。
しかし、いかんせん構成、展開ともに凡庸で最後まで読み通した充実感が無い。部分的には印象的なエピソードが多いだけに、はっきり言って途中で読むのを止めても読後感は大差無いかもしれない。
蛇足になるが、主人公がひたすらカタカナフードを飲み食いしているだけといった印象が残る。
[5]現代日本文学の至宝(2008-08-09)
期待感のない小説だ。ノーベル賞をとっても驚きはしないからだ。また読みおえた人を不幸にする小説だ。これよりよいものにめぐりあうことは今後そうないと思えるからだ。それ以外けなしようがないほどの大傑作。これ一冊で村上春樹の偉大さが十分わかる。

奇妙な鳥の声に気づくと間もなく愛猫が姿を消す。主人公岡田トオルの平凡な日常は徐々に変貌し、ついに妻クミコまで謎の失踪をとげる。何かが狂ってしまったなら、もとに戻すしかない。ねじまき鳥の声が止まると、岡田トオルの静かな戦いが始まった。行く手を阻むは綿谷ノボルほかに象徴される悪。時空をこえ世界を支配する強大な敵だ。普通人、岡田トオルは、はたして勝てるか。だが魂の彷徨を続けるなか、彼は多くの人にめぐりあい、学び、力をつけていく。登場人物、エピソードはそれぞれが深い洞察に満ちたメタファーだ。複雑なこの世のすべてが記されているといっていい。さまざまに読みとけるだろうし、それ自体また楽しい。この本の魅力を語るだけで分厚い本が書けるだろうし、事実、出版されている。

一見シュールで難解だが、愛するものを奪還すべく悪と戦うシンプルさが核。古典的で普遍的なテーマを追求した清々しい物語だ。多くの読者をひきつけてやまないゆえんだろう。意味不明だがとにかくこの話が好きという人が多いのは、頭ではなく魂で読む優れた読者をそれだけとりこにしているあかしだ。

物語同様、簡潔な文章は、澄明で流麗。だから読みやすい。これからもより多くの人に愛されることを願う。

[4]初村上春樹(2008-07-30)
とても壮大で複雑怪奇で取り留めのないような作品ですが実は色々なことが絡み合いリンクしているんだなと思いました。よく読んでいけばヒントが隠されていたりしますし。でもそのヒントも読み手によって違うし感じ方も違うんじゃないかと思います。でもそういう作品なんだと思いました。多くの謎を謎(一般的にみれば)のまま終わらせているのもそのためじゃないかと思いました。一回読んだくらいじゃまだほんの一部を触ったくらいなのかなとも思いました。
日常はえてして非日常にすぐ飲み込まれるんだなってすごく感じましたしとりあえず登場人物が味のあるキャラばかりで作風も好きでした。
[2]皮を剥ぐ男  壁にかかった人皮(2008-04-11)
本屋で立ち読みしたときに読み出しがとてもいい感じ
っだたので、一気に3部買ってしまいました。

買ってしまった手前読まなくては勿体ないと思い読破しましたが、
感想としては、正直しんどかった。

読んでいても頭にイメージがわかず、読んでいる目の前の文字がそのまま頭に浮かんでくる
感じ(アマゾンのレビューで改行もせずに横もいっぱいまで使って
書いてある長文を読まされているような??)でぜんぜん入り込めませんでした。

独特の世界観や、読者に結末を委ね色々深読みさせるというスタイルが
好きな人ははまるのでしょうか?

村上春樹の小説は題名のセンスのよさに惹かれ手に取るのですが
やっぱり僕には合わないようです。


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- 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

学問

新潮社()
¥ 1,575
[4]懐かしく切ない物語(2009-07-18)
 ざっと読んだ印象では、『ぼくは勉強ができない』に似ている(個人的には本書より、こちらのほうが好き)。タイトルはいかめしいが、内容は人生のお勉強だからだ。それも生と性の。各章は登場人物の死亡公告から始まる。生まれ年からその亡くなった年齢を考えると、かなり未来のものもある。主要登場人物プラス1人の計5人が登場し、小学校から高校までが描かれる。彼らの生まれ年は1962年だ。なので、かれらを取り巻く文化的なものは、山口百恵、ジュリー、ジャズ喫茶、ビートルズ、柴田錬三郎といったものが並ぶ。

 仁美(フトミ)、心太(テンちゃん)、無量(ムリョ)、千穂という4人組、そして素子(モコちゃん)という登場人物が、お互いの家の環境や経済状況を背景に、子どもの頃は4人が無邪気に社宅の裏山にある「秘密の集会所」に集い、遊んでいた。しかし、思春期になると、体が変化し、性に目覚め、自慰を覚え、人を好きになり(両思いでも結ばれるわけではない「二人の関係をしまい込んだ玉手箱は、この先、当分の間、開けられることはないでしょう」)、引っ越しをして別れ、また再び4人が一緒になり、そして・・・という先は死亡公告から予想するしかないのだが、静岡の架空の市を舞台に、子どもから大人になる様(「美流間で四人組として過ごした、忘れられない沢山の記憶」)が細やかに描かれていく。

 「いくら学んでも、心太が手にしたのと同じような「いいもん」を身に付けることなんか出来ない」し、それに「男の子の中にある木偶坊の要素が自分を引き付けて止まない」と、ある少女は男の子(心太)に憧れを抱くのだが、確かに心太は、普通ならその家庭環境では素直になれないかもしれないところ、人を惹きつける性質で英語塾にも特別に通え、また勉強できる環境も手に入れられる。でもガリ勉ではなく、しっかり人生の勉強もして、とバランスが非常に取れている。取れているのだが、死亡公告から、大学やその後の人生を類推すると何だか切ない。普通の人生だったろうな、と思わせられるのは上記の登場人物5人のうち、2人だけのように思える。どこか懐かしく切々とした物語だった。

[5]むかしの詠美さん(2009-07-15)
山田詠美さんのファンです。詠美さんの小説の系統では、外国人の方との濃厚で官能的な恋愛を描いているものよりも、私は学生ものや短編が好きでよく読んでいました。『放課後の音符』や『風葬の教室』や『晩年の子供』など、好きな作品は挙げればたくさんありますが、最近はしばらくこういう系統を描かれていなかったように思います。

しかし、この『学問』は、私の好きな系統の作品でした。語り手の口調も女の子の独白で、ですます体のところや、舞台の着想を詠美さんが幼い頃過ごされた静岡に得ていたりするところも、『風葬の教室』などとリンクしているなあと思いました。作風は少し違っているようにも思いますが。
登場人物は最初は幼く、章を追って中学生、高校生と成長していくのですが、そんなに幼い世界で起こっていることなのに、こちらがはにかんでしまうくらい、官能的でした。直接的でわかりやすい官能ではなくて、この小説で描かれている官能は、周到に隠されているというか、抑えられているというか、そこが余計にエロティックで惹かれます。ページをめくる手が止まりませんでした。
でも少し残念なのは、語り手である主人公にしても周りの人間にしても、『ぼくは勉強ができない』の秀美くんのような、カリスマ的な「魅力」が感じられないことです。かっこい人物はあまり出てきません。この作品でスポットライトが当てられているのは、そういう個人の人間性じゃなくて、男と女の不思議な関係性だからだと思いますが。

でもそれを差し置いても、本当におもしろかったです。はにかむエロさがあって、分かりやすいエンターテイメント的な恋愛小説より、ずっと、心に残る作品です。さすがです。



[5]学問(2009-07-08)
山田詠美さんをはじめ、女流作家が活躍されるようになってきました。今まで、隠蔽されてきた女性の営みなどを表現する作家さんが出てきて少々、受け入れ難かったのですが、山田詠美さんが書かれるときわめて優れた文学になってしまう。やっと、文学の一つの役割に気がつかせて頂きました。『蝶々の纏足』『風葬の教室』が好きで、親や他のまわりの人たちも知らない、あるいは話さないような事をこの二作品から教えられ、安心したものですが、(具体的には秘密ですが)今回も学ばせていただきました。
[5]学んで、失われて。(2009-07-03)
意味深なタイトルに加え、帯には「私ねぇ、欲望の愛弟子なの。」という刺激的なフレーズ、そして本を開けばそこには一昔前の片田舎における少年少女たちの日常と、どうもにかみ合わなそうな要素に面食らいつつ読み進めていった。読み終えた後の感想は、素晴らしい、の一言につきる。「山田詠美の新たなる代表作」という看板に、嘘偽りは無い。
幼き者たちは、日々の濃密な暮らしのなかで恋を知り、性を知る。自意識を知り、羞恥心を知る。友愛とともに嫉妬の感情を知り、信頼とともに支配の感覚を知る。ときに体が熱くなり身のふるえるような経験を通じて、ときに大人や「おませな」同輩たちからの唐突な情報提供を通じて、色々と学んでいく。この「学問」のプロセスを、もうこれ以上のものはありえないだろうというような巧みな言葉づかいにより表現していくことが、本書の骨子であるように思われた。特に圧巻なのは、「自慰」の学習の過程だろう。本能的に始められたその「儀式」が、やがて技術の習熟とイメージの精密化により当人の思いもよらないような意味を帯びてくるあたりの描写は、息を呑むような見事さである。
「学校では学べないこと」を丁寧にしかし軽やかに教えてくれるのが、山田詠美さんの真骨頂だというのが私見だが、本書ではその「特技」がこれまで以上に高いレベルで披露されている。とりわけ各章の冒頭にある、物語の主人公たちの「死亡記事」の存在意義が大きい。このお話の中で語られている「青春」は、あくまでもやがて過ぎ去り死にゆく者たちの青春であることが強く印象づけられるというわけだ。生きて何かを学んでいく事は、同時に何かを失いやがて死んでいくことだという真理を、それとなく感じさせてくれて、かつてないほどにしんみりとした読後感があった。





[5]An Instant Classic !(2009-07-03)
外国の評に An instant classic(発売と同時に古典)と
書いてあるのをときどき見ます。この小説がそれ。
新刊だけれど、すでに古典の風格があります。
たぶん現代最高レベルの日本語で書かれていて、
ことばがじつに精確なので、読んでいてかゆいところに
手が届くというのか、何とも気持ちいい。
青春小説であり恋愛小説ですが、だらだらしていたり、
ことばに酔っているような表現は一切ありません。

読みやすく、自分にもこういうの書けるんじゃないかと思わせる小説は多い。
読みにくくて、自分にはこんなふうには書けないと思わせる小説も多い。
しかし読みやすいと同時に自分はとてもこんなふうには書けない
と舌を巻く小説はそうそうない。これはそういう小説です。

一人の少女の性の目覚めが大きな軸になっていて、
踏み込んだ描写もあります。が、暗さはなく、全体的にすこやか。
タイトルにはさまざまな意味がこめられていると思いますが、
「性」について身体で正しく学んでいくことも大切な学問なのだ、
とこの小説は言っているように思います。
そして読んだあと、一度しかない人生をそれがどんなものであろうと
肯定する作者の姿勢に、胸が熱くなります。
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集英社()
¥ 1,575
[5]登場人物の潔さが桐野作品の魅力(2009-06-11)
桐野夏生さんの本は全て買っていますし、OUTは何十回と読んだ作品だったのですぐさまINを本屋に飛んで買いに行きました! 読んでみて、OUTとは全く違う作品ですが私は大好きな作品になりました。INもきっとまた何十回も読み返すでしょう。桐野夏生さんはとても美人なので不倫経験者ですよね?きっと結婚後何回も素敵な恋愛をされてるんだと思いました。桐野夏生さん最高です!
[5]残された言葉が人を狂わせるのか(2009-06-06)
「淫」という小説を書こうとしている小説家タマキと、既に発表された『無垢人』という小説が、作家の本性である冷たい視線と、破滅と分かっていても突き進まずにはいられない激しい恋愛を交差しながら物語が進む。
果たせなかった恋愛は、魂の死骸を作ったに違いないと考えるタマキ。
そのタマキが調査するのは、現実を切り崩すほどの虚構である『無垢人』のモデルとなった人であり、タマキの抹殺している過去の恋愛もが蘇っていく。
恥ずかしいなど思いもしない、他人の存在自体が意識に入ってこない恋愛。
時間の経過とともに腐敗していく恋愛。
消えて無くなる恋愛が、小説家の手にかかることで残されてしまう。
魂を奪う恋愛と小説が交差しながら、内面を深くえぐってゆくこの作品。
一度だけでなく、何度も読み噛み砕きたい読み応えがある。

[4]著者らしいダークさ!(2009-05-28)
小説家鈴木タマキは『淫』という小説を書こうとしている。そのテーマは、恋愛における「抹殺」である。ここうでいう抹殺とは、死を意味するのではない。自分の都合で相手と関係を断ち相手の心を殺すことである。その小説の主人公は、緑川未来男が書いた『無垢人』の中に登場して著者の愛人と噂されている◯子である。タマキは、◯子に関する情報を集める中で以前付き合っていた阿部青司との関係を鑑みる。

☆なんとも言えずにダークな世界。桐野さんらしいドロドロした毒がある。☆戸籍上の正式な夫婦と不倫関係のカップルが、対比するかのように描かれている。☆でも…、それは正式に認められているかいないかにすぎない…。男女の関係は、そんな物では割切れない。愛し合う事に表も裏の関係もない。愛していた人が居なくなっても愛していた事や悲しかったことそして憎しみが消えることはまずないのだと思った。
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[3]そこそこ。(2009-07-21)
怪異を扱った話ですが複雑怪奇なものではなく、むしろいい意味で「ありがち」な話なので、
ラノベを読み慣れている人もそうでない人も等しく楽しめる作品だと思います。
でも、内容は結構薄いです。
マニアックなネタに走ろうとするあまり、登場人物がそのキャラにそぐわない様な台詞を
言う事もあり、細部にちょこちょこと違和感があります。
作者が小説を書き慣れている感じがして、文章としてはとても読みやすいです。
[5]面白い(2009-07-20)
アニメ版が気に入ったので購入しました。
値段的に買うのを躊躇していましたが買って正解でした。
会話の掛け合いがアニメ版以上に面白いです。
キャラクターの会話中の心情等も多く書かれていますので、本作をより深く理解できるでしょう。
また、アニメ版は省略されている部分が非常に多いので、アニメを見た方も原作を読んでみる事をお薦めします。
私は真宵まいまいの話が好きで、久々にホロリときてしまいました。
[5](2009-07-18)
小説が好きな貴方!決して航海はさせませんよ!
すみません噛みました。

[2]アニメの方が面白いと思う(2009-07-18)
アニメの方を見て驚いたので、原作を読んで見ました。
ある種のポストモダン小説かと思ったのですが、
ウーム、違いました。
この小説は極度に記号的ではあるが、解体的ではなく、
根っこにあるものは極めて保守的なものなのです。
おそらく漫画やテレビやゲーム的思考から生まれた小説だと思われます。
それらを高密度に圧縮していく作家の技量には感服しますが、
悲しいかなそれらのメディア作品の表面的な暴力性を削いでしまうと
保守の世界、現状肯定の世界が現れるだけなのです。
まだ1話・2話しか放映されていませんが、原作よりアニメの方が
表現としては面白いと思われます。

[3]面白いが…(2009-07-13)
面白いことは保証できます。
なんといっても主人公と数々のヒロインとの漫才。ここまで思いつくかと感嘆しますし。
でも良くも悪くもそれだけ。

私がそういう風に感じたなは初西尾維新で、話のテンションに慣れなかったこともあります。
ただ私は話にもう少し厚みが欲しかったです。
面白いし、映画みたいにシーンはめまぐるしく変わっていく。掛け合いも抜群、ベタな押さえどころは押さえる。
でも心に残ったり、考えさせられたりするシーンはない。
忍との関係が唯一それにあたりそうですが、あまり語られなかったし…

ということで評価を下げさせていただきました。


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