当事者同士が直接話し合う対話を促進して、
トラブルを解決していく、対話促進型調停。
その話合いを進める技法に、IPN分析というものがあります。
IPNとは、以下の頭文字です。
I=イシュー
P=ポジション
N=ニーズ
イシューとは、
話し合うテーマ、のようなものです。
トラブルになっているお題とも言えますし、
これから当事者が「何を話し合うのか」を示す表現になります。
とはいえ、ただ単に、お題を提示すれば良いのではなく、
どんな表現によって提示するか、がとても重要になります。
例えば、自転車同士が衝突した事故の場合、
片方の当事者であるAさんが「Bさんにぶつけられた」と表現したとして、
調停人が
「AさんがBさんに自転車でぶつけられた件について話し合いましょう」
などと言ってしまったら、Bさんはどんな気持ちになるでしょうか?
Bさんは、まるで自分が責められているように感じるかもしれませんし
調停人が、Aさんに肩入れしているように思ってしまうかもしれません。
つまり、なるべくフラットで、かつ、
この先の話合いが発展的になるよう、ポジティブなお題の提示ができるかどうかが
とても重要なのです。
また、イシューがたったひとつ、ということはむしろ少なく、
例えば離婚の話合いであったとしても、
子どもの親権をどうするか、
もう一方の親は子どもとどれくらいの頻度で会うのか、
資産をどう分けるのか、
家にはどちらが住み続けるのか、
養育費はいくら払うのか、
離婚の原因となった浮気の問題はどうするか、
…などなど、複数のイシューが考えられると思います。
そのため、イシューの表現も重要ですし、
またそれらのイシューを、どのような順番で話し合うのか、
も非常に大きなポイントとなります。
さてお次は、ポジションです。
ポジションとは、当事者が主張している「表向きの要求」です。
多くは、ゼロサムゲームの状態になっており、
例えば、1個のケーキを巡って、
ふたりが取り合っている、そんなイメージです。
両者の主張が相容れないために、
対立構造になってしまい、
トラブルになったり、
状況が悪化する原因となります。
一方で、ニーズとは、
ポジションの裏に潜む、
「本当の要求」です。
トラブルの本当の原因、
ということもできます。
そのため、ニーズは基本的には変わりませんが、
ポジションは、ほかにニーズを満たす選択肢が出てくることで、
変わる可能性があります。
例えば、こんなこんな事例があるとします。
アパートの大家さんと住人のトラブルで、
大家さんは、その住人に早く出て行って欲しいと思っていて、
住人は出て行きたくない、と思っているとします。
ポジションは、完全にゼロサム状態で、対立しています。
けれどもよくよく話を聞いてみると、こんな話が出てくるかもしれません。
大家さんは、その住人が、ペット禁止であるにも関わらず
部屋で犬をこっそり飼っているのを知っており、当初は黙認していたのだが、
他の住人から鳴き声などについての苦情が増えてしまって、
対処をせざるを得なくなってきている。
一方で、その住人の方は、
年老いた親が犬を飼っていたが、親が亡くなったことで、
犬を面倒見る必要が出てきて、仕方なく飼い始めた。
ペット禁止は分かっていたけれど、
現在のアパートが職場からも近くて便利な上、
現在の給料では、新たな敷金・礼金を捻出する余裕がなく、
新しい場所へ引っ越したくない、と思っている。
つまり大家さんとしても本当に出て行って欲しいわけではなく、
他の住人の手前、何かしら対処を求められているわけで、
大家さんの本当のニーズは、
他の住人たちからこれ以上クレームを言われたくない、かもしれません。
一方で、当事者の住人の本当のニーズは、
職場から近い場所に住みたく、引っ越し費用を出したくない、
かもしれません。
ですので、例えば住人が出て行かなくても、
他の住人からクレームが入らないような工夫をすることができれば、
問題は解決するかもしれません。
あるいは、その住人も、
近所で、敷金や礼金がかからない、ペットOKの物件が見つかれば、
喜んで引っ越していくかもしれません。
となれば、他の住人と、ペットの問題をどうするか、
話し合う機会を設ける、といったことも解決策になり得ますし、
条件に合う引っ越し先を、一緒に探しても良いかもしれません。
そのような感じで、ニーズがきちんと見えてくれば、
解決策の可能性もうんと広がっていくのです。
そのため調停人は、
適切なイシューを提示して、
ポジションの裏にあるニーズをなるべく早く汲み取って
話合いを上手にリードできるように、
日々、ファシリテーションスキルを磨いていく必要がありますね。
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