<場面>加藤さんのお葬式
時任 「橘くん、あまり気を落とさないで。こういうのって、何度経験しても慣れるものじゃないけれど、でも。」
橘 「僕は大丈夫です。身内でも祖母が去年亡くなったばかりなので全く初めてというわけでもないですし。
時任 「そうだったの。」
「でも加藤さんとても良い顔されてるわね。」
橘 「そうですね。」
看護師B 「時任さん、ちょっと」
(時任が橘のそばから離れる、すると見知らぬ男の子が横にやってくる)
男の子 「橘さん、ですよね。」
(橘はその男の子が加藤さんの身内か何かかと察して答える)
橘 「はい、私が生前加藤さんの担当をしていた橘です。えっと君は加藤さんのお孫さんか何かかな?」
男の子 「僕は天使だよ。」
橘 「天使?」
(橘は驚きを隠せず、横にいる男の子をまじまじとみる)
天使 「そう、僕は6番目の天使。君も彼女が生前に花嫁姿でいるのを見たんでしょ?」
橘 「えっ・・・(言葉を失う)」
天使 「彼女は主なる神の花嫁候補の一人だったんだ。」
橘 「花嫁、、候補?主なる、、神?」
天使 「まあ君にはよく分からないだろうけど、でもそういうことさ。」
(葬式が終わり、出棺に移る)
<場面>加藤さんの出棺シーン
(橘が一人で立っているとまた天使と自称する男の子がやってくる)
天使 「彼女は生涯独身を貫いたんだ。本当は花嫁候補としての役目がなくなった時点でいつでも結婚して良かったんだけどね。」
橘 「加藤さんは他に身内の方はいないんですか?」
天使 「そうだね、施設に時々面会に来ていたのは赤の他人だよ。でも、ある意味で「家族」のようなものではあったけど」
橘 「そうなんですか」
天使 「ところで君は聖書を読んだことある?」
(橘は聖書と聞いて、中学生の担任だった若い女の先生がキリスト教の教会で結婚式をした際に目にしたのを思い出す)
橘 「聖書って、キリスト教の教会で読んだりするやつのこと?」
天使 「そうだね。」
橘 「読んだことはない、です。」
天使 「そうか、でも君の家族の信じている宗教ではあまり縁もないだろうからそれも仕方がないね。」
「今度ぜひ一度開いてみてよ」
「そうしたらまた僕に会えるから」
(天使は出棺のために外に出てきた人の間に消える、橘はその時初めて天使が自分にしか見えていなかったことに気付く)
<場面>加藤さんの棺と共に霊柩車が会場を去っていく