出張2日目の朝、

カーテンを開けると昨夜、左端でひときわ輝きを放って見えた東京タワーは意外と貧相で、

目を下にやれば、そこにはこれから建てる予定のビルの工事現場が広がっていた。

夜の闇は多くのアラを隠してくれるものだなぁ…とつくづく思う。

都会の夜景とは一夜の幻想と同じだ。

美しく思えるのは人工的に作られ操作された《灯》によるものなのだ…と。


この頃はすっかり田舎生活に慣れてしまったライフスタイルに満足する自分がいる。

一時は便利な都会の生活にも憧れた時期があったが、

日々、土に触れて生活することで如何に精神的安定を得られるかを実感する事も多い。
ペットと暮らしていると特にそうだ。

出張帰り、
新幹線の中でHalの事を考えていた。

考えてみれば、
Halとの暮らしは私が思い描いていたスローライフそのものだ。

こんなに緩やかで笑顔に満ちた毎日を送ることができるなんて…。

コロナ禍で仕事がキャンセルや延期になった時だって、
Halとの暮らしがあったから乗り越えられた。

それは夫も同じだと思う。

Halのいる生活が当たり前になってしまった今、
いなくなった時の生活が想像できない。
改めてHalの存在の大きさに驚かされる。


帰宅すると、

ほんの数ヶ月前までは、玄関前のガラスドアまで来て覗いて待っていてくれたHalの姿がない。

(Halは、もう自力では動けないのだ)

現実を思い知らされる。

キッチンに夫が立つと必ずシッポを振りながら追いかけて行くのが日課だったが、

そんな元気もなく、
Halは自分のベッドで寝ていた。

「Halちゃん、ただいま!」

声をかけると、うっすら目を開けた。

「何も食べないんだよ」
と夫が言う。

栄養ドリンクだけが、命綱になっているようだ。

深夜0時、
自分で起きあがろうとするHalをサポートして散歩に庭に出た。

尿意も便意もあると言う事は、
意識もしっかりしている証拠だ。

だけれども、
先住犬のウォーリーの場合は、直前まで歩き回っていたし、

二代目のロメオの場合は、寝込んで1週間だった…。

獣医の言ったように《月単位》なら、
この冬が越えられるかどうか…だ。

Halは、今どんな気持ちでいるのだろう。